がんの転移抑制に一歩前進!prhって?

がん細胞は分裂や増殖を繰り返し、発生場所(原発巣)から血液やリンパの流れに乗り、遠隔部で新たに腫瘍を形成することがあります。これを転移と呼びますが、がんの悪化や再発を防ぐためには、この転移のメカニズムを解明することが重要となってきます。

近年、乳がんと前立腺がんのがん細胞の研究をしている英国のブリストル大学とバーミンガム大学の研究者らが、PRHというタンパク質が、がんの転移の抑制に大きく関与する可能性があることを発見しました。

果たして、このタンパク質はいったいどんなものなのでしょう。

PRHはどんなタンパク質?

PRH(プロリンリッチホメオドメインタンパク質)と呼ばれるたんぱく質は、遺伝子の発現を調節する役目があると認識されています。健康な胎児の成長に必須のものとしてみられておりますが、このPRHががん細胞の動きに影響するということは、今までわかっていませんでした。

この研究結果では、がん細胞内のPRHのレベルを上昇させることによって、がん細胞が血管に入りこむことを防ぎ、転移を抑制する可能性が示唆されました。

これは、乳がんや前立腺がんだけではなく、その他、多種のがんの転移と闘う新しい方法につながっていくと見られています。

PRHがどうやって転移を阻止するのか?

両大学の研究者らは、乳がんと前立腺がんのがん細胞を増やし、遺伝子的技術でがん細胞内のPRHのレベルを上昇させたり減少させたりする実験を行いました。その結果、PRHを含まない細胞のほうが、多孔質ゲルを効率的に通りぬけて、より速く移動することがわかりました。

さらに、細胞の移動に重要な働きをするエンドグリンと呼ばれるタンパク質の活性化にPRHが関係していることがわかりました。がん細胞内のPRHレベルが低いとエンドグリンのレベルも低くなります。また、PRHがまったく含まれていなくとも、がん細胞内にエンドグリンを加えるとがん細胞の移動が抑えられる結果も得られました。

これらの実験結果により、エンドグリンがん細胞の転移に大きく関与し、PRHはエンドグリンの活性化の鍵を握っていることが示唆されたのです。

今回の研究結果から・・・

良性の腫瘍であれば摘出手術をすれば安心と言えますが、悪性の腫瘍を発症すれば、たとえ切除をしても転移や再発の心配が残ります。しかし、今回の研究結果は、がん細胞の転移メカニズムの解明に一歩近づいたようです。研究関係者も明るい未来に意気を高らかにしています。

この研究の代表であるガストン博士は、「がんが再発するというだけではなく、多くの部位に転移するということが何よりもがんを恐いものにしている。PRH転写因子は、乳がんや前立腺がんの細胞の移動を抑制し、これは、多発性がんにおいて重要な新規機序を示している可能性がある」と語っています。

さらに、乳がんキャンペーンのリサーチ情報のマネージャーを務めるウッズ女史は、「この研究によって私たちは、乳がん細胞の転移メカニズムの理解を深め、転移の抑制に一歩近づいたと言えます。もっと重要なことは、これは乳がん細胞に限らず、他のがん細胞にもあてはまるでしょう」と語っています。

多くの研究者から期待が寄せられた今後の研究の進展が待ち望まれます。