どう考える? がん治療や療養中の嗜好品

がんと診断されて治療や療養を行うなかで、お酒やたばこ、コーヒーなどの嗜好品について悩むことはありませんか? 「嗜好品の継続は多様ながんの原因となる」「がんのリスクが高まる」「絶つのが一番!」と理解していても、長年親しんできたがゆえ、たばこなどがなかなかやめられずに悩む人も多いのではないでしょうか。今回は、がんの治療中や療養中の嗜好品についての考え方についてご紹介します。

がん治療中や療養中の嗜好品の関係

放射線治療中、治療後の喫煙について

放射線治療を受けている場合の喫煙にはどのような影響があるのでしょうか?

喫煙がさまざまな健康障害をもたらすことはよく知られています。放射線治療中、治療後でとくに問題となるのが、喫煙による粘膜への刺激によって放射線治療を計画通りに進めることができない場合や、治療効果を低下させたり、合併症の発生率を高めたりしてしまうことです。とくに、放射線治療を受けている場合、酸素分圧が低いとその効果を下げてしまいます。喫煙は、一酸化炭素を体に取り込みますので、酸素分圧を下げ、せっかくの治療効果を低下させてしまうことにつながります。また、肺がんや頭頸部腫瘍の治療をされている患者さんで放射線治療終了後も禁煙することができなかった場合は、再発率が高いことも知られています。

そのため、がんの治療効果を最大限に得るためにも、治療と一緒に禁煙に取り組むことが大切です。禁煙が必要とわかっていてもなかなか実践できずに悩んでいる人は、きちんと主治医に相談しましょう。禁煙できない理由は人それぞれですので、主治医ときちんと話し合うことで、禁煙外来の受診紹介など必要なサポートを提案してもらうことができます。

抗がん剤治療中、治療後の喫煙について

抗がん剤の治療中や療養中の喫煙は、抗がん剤の治療効果を低下させるだけでなく、がんの種類によっては喫煙を続けていると重篤な肺感染症につながる危険性があるものもあります。さらに、抗がん剤の種類によっては、心肺毒性を高め、肺線維症、拘束性肺疾患、心筋症などの危険性を高めることがあります。

また、飲酒同様に喫煙も口腔粘膜への刺激となり、口内炎の危険性を高めることにつながりますので、副作用を避けるためにも、禁煙が大切です。

抗がん剤治療中、治療後の飲酒について

抗がん剤の治療中や治療後の飲酒はどう考えるべきでしょうか?

とくに注意したい点は、薬の種類によってはアルコールを体の中で分解する機能に影響を与えるものがあるということです。薬の効果が得られる量と副作用を生じる量との間には、ごくわずかな量の違いしかないため、抗がん剤は患者さん個人の状態にあわせて厳密に計算した量が処方されています。そのため、抗がん剤治療中や治療後に飲酒してしまうと、薬の効果を過剰に強めてしまったり、逆に弱めてしまったりすることがあり、強すぎる副作用の発生や期待する治療効果を得ることが難しくなる可能性があります。治療後や薬休中であっても、薬の成分が体に残っている場合がありますので、飲酒を希望する場合には、主治医にきちんと相談してから摂取するようにしましょう。

また、抗がん剤治療の副作用として口内炎を生じる可能性が高いと説明を受けている場合には、口内炎を予防するためにもアルコール飲料の摂取は控えたほうがよいでしょう。

コーヒーの摂取について

コーヒーの適量な摂取によるがんの発症予防効果や再発予防効果などについて、最近メディアなどで注目されていますが、がんの治療中はどのように考えるのがよいのでしょうか?

抗がん剤治療中や療養中で、とくに吐き気、おう吐、食欲不振、上腹部の不快感などの副作用がある場合には、コーヒーは胃液の分泌を促す作用をもつため、より一層にそれらの症状を強めてしまいますので摂取を避けましょう。

放射線治療中や療養中の場合には、照射を受ける部位や粘膜の状態によっても異なります。どうしてもコーヒーを楽しみたい場合は、担当医や看護師などに口腔内や消化器管などの粘膜への刺激の影響などを確認してから摂取するようにしましょう。

がん治療中や療養中の嗜好品との上手なつきあい方

がんの治療中や療養中において、嗜好品と上手につきあっていくためには、まずは担当医師に相談することが重要です。担当医から「嗜好品を楽しんでいる場合ではありません」などと否定されることを心配する人もありますが、自己判断では病状や治療効果に思いがけない悪影響を及ぼしてしまうことがありますので、隠れて嗜好品をたしなむのは避けましょう。治療の効果を台無しにしないために、後ろめたい気持ちはあえて抑えて相談してください。医師と一緒にどんな嗜好品がどのくらい大丈夫なのかなど、楽しむ場合の注意点などについてきちんと話しあうようにしましょう。たとえ制限や条件などがあったとしても、主治医の指導のもとならば、余計な心配をすることなしに心置きなく楽しむことができますよ。

たかが「嗜好品」との考え方もありますが、治療で十分な効果を得られても、療養中や治療後に生活の楽しみを失ってしまっては、闘病への意欲が低下してしまったり、新たなストレスを感じてしまったりということもあります。治療は大切ですが、その人らしい生活やQOL(生活の質)の維持も同様に大切です。担当医をはじめとする医療スタッフは、患者さんの嗜好品の悩みであっても、みなさんのつらさを少しでも楽にするために、いろいろな方法でサポートしてくれるはずですので、思い切って相談してみましょう。

参考: