がん治療と口腔内トラブルについて

がん治療中の影響や副作用として多くの人に見られるのが口腔内(こうくうない)のトラブルです。味覚障害、口腔粘膜炎(口内炎)など症状はさまざまですが、口腔内に違和感があると食事がおいしくとれない、痛みや不快感で気持ちが沈むなど、生活の質をも左右することになります。

口腔内トラブルの症例やその対処法を知り、できるだけ自然な形で口から栄養をとれる状態を維持しましょう。今回は、そのためのヒントをご紹介します。

発症しやすい3つの症状と対処法

がん治療による口腔内トラブルにはさまざまな症状がありますが、もっともよく知られている3つの症状について見てみましょう。

口腔粘膜炎(口内炎)

がん治療による口腔粘膜炎(口内炎)は、口の粘膜に放射線や抗がん剤が健康な細胞にまで影響をおよぼした結果、発症するものです。

最初は、ほほの粘膜や舌に炎症が起こります。症状がすすむと潰瘍ができることもあります。この段階になるとかなり痛みが強くなるので、食事はおろか、ジュースなどの刺激のある飲料も飲みづらい状態です。

抗がん剤による影響の場合は、投与をはじめて4、5日目ごろから口腔内の粘膜に違和感を覚えるという人が多いようです。その後、10日ほどで粘膜に赤い炎症が見られ、痛みの強い潰瘍へと症状が進みます。

潰瘍ができているころがもっともつらく、その後、1週間ほどで粘膜が再生すると、口腔内粘膜炎(口内炎)の症状はおさまっていきます。

放射線治療の影響の場合は、治療開始から2週間ごろから発症することが多いようです。抗がん剤のみで治療をしている場合にくらべ症状が強く、長引く傾向があります。治療が終了すると約2週間程度で症状はおさまります。

こうした経過が抗がん剤治療、放射線治療を行うたびに繰り返されるので、精神的なストレスを訴える人も多いようです。

対処法

痛みを緩和することが先決です。炎症が現れ、口腔内に違和感を感じたら、すぐに担当医に相談しましょう。

多くの場合は、うがい薬や痛み止めによって炎症や痛みに対処することになります。痛みがかなり強く、食事がとれないような状態になると、医療用の麻薬が処方されることもあります。

食事は熱いものは避け、人肌に冷ましてから食べると刺激が少ないようです。また塩分、酸味なども刺激になりますから薄味を心がけます。とろみをつけると、食べやすくなります。アイスクリームやゼリーも食べやすいでしょう。

強い痛みを伴う状態になるとスムーズに飲み込むことができず、気管に食物が入ったり、肺炎を起こしたりする危険性が出てきます。こうした場合には、無理に口から食事をとろうとせず、点滴などを利用しましょう。「口腔粘膜炎(口内炎)が治まったときに食事を再開すればいいさ」という大らかな気持ちで対応することも大切です。

口腔内の乾き

抗がん剤や放射線が唾液を分泌する細胞に影響をおよぼすと、口の中が乾きやすくなり、唾液の分泌が少なくなると、口腔内で細菌が繁殖しやすくなります。そのため、虫歯や歯槽膿漏など既存の症状が悪化する可能性も高くなります。そのほか、食事が飲み込みにくい、会話がしにくい、義歯の装着がしづらい、口の中にヒリヒリとした痛みを感じるといった症状も見られます。

口腔内の乾きは、早い場合は治療中からも症状が現れます。

対処法

口腔内を清潔に保つためにも、さらに、うるおいを失わないためにも、うがいをこまめに行いましょう。また、食事ではスープなど水分の多いメニューを考えましょう。果物やシャーベットなどを間食として利用するのもおすすめです。

吐き気などによって水分がとりにくい場合は、冷ましたお茶や水をこまめに補給するように心がけましょう。

室内の乾燥が口腔内の乾きを加速させることもありますので、室温にも注意を払い、加湿器を置くなどの工夫をしましょう。

味覚障害

味覚障害は舌にある味覚細胞が抗がん剤や放射線の影響を受けたことによって起こります。とくに、放射線治療は味覚細胞への影響が強いため「まったく味がしなくなった」「砂を噛んでいるようだ」と訴える人も多いようです。

治療中から症状が現れ、治療が終了し、4カ月から1年ほど経過すると徐々に味覚が戻ってくるようです。

対処法

味覚障害を発症すると、おいしく食事がとれないことで生活の質を下げる大きな原因になることがあります。そのような場合には、味付けなどを工夫してみましょう。

味覚の変化では、塩味やしょうゆ味などが苦く感じられたり、金属味を感じたりする人が多いようです。どのように変化したのかを考え、おいしく感じられる調味料や味付けを探しましょう。たとえば酢やゴマなど、香ばしさやさっぱりした味を加えると食べやすくなるようです。

「味をまったく感じない」「砂を噛んでいるようだ」という場合には、味を濃い目にしたり、汁物、果物を活用したりして、少量を複数回に分けて摂取するようにしましょう。

場合によっては、主治医と相談して点滴やほかの栄養摂取方法を検討することも必要です。

まとめ

がん治療をはじめると体力低下の防止のためにに食事をとることは大切です。そのため、食事がとりにくくなる口腔内トラブルは、痛みや不快感を緩和することを第一に考えましょう。

また、口腔内を清潔に保つことは、感染症を防ぐ意味からも重要です。効果的なケア方法はうがいなどをこまめにすることです。炎症も抑えられますし、乾きの対処にもなります。

自分ひとりで悩まず、早めに主治医に伝えることを心がけましょう。

 

参考: