肥満とがんの関係を探る、その影響は?

「肥満」という言葉をふだんよく耳にしますが、改めて考えるとどういう意味でしょうか?
国語辞典によると、「体が普通以上にふとること」という解説などが見られますが、医学的には、「脂肪が一定以上に多くなった状態」のことをいいます。

この医学的な意味での「肥満」、つまり「脂肪過多」はがんを誘発するとされています。
今回は、この脂肪過多と関係の深いがんの種類やがん誘発の原因をみていきましょう。

脂肪過多と関係の深いがん

米国がん研究協会(AICR)では、脂肪過多と関係の深い7種類のがんについて、何%が「脂肪過多」による発症であるかを調べてきました。

2009年にAICRが行った調査結果によると、子宮内膜がんの49%、食道がんの35%、膵臓がんの28%、腎臓がんの24%、胆嚢がんの21%、乳がんの17%、結腸直腸がんの9%が、それぞれ脂肪過多が原因とみられています。

このとき肥満によってがんが引き起こされた症例数を概算したところ、年間10万件以上に上ることが分かりました。

「肥満」は、がんの原因としての認知度が低い

この調査が行われたアメリカは肥満が多い国として知られていますが、肥満をがんの原因として認知している人は、意外に多くないようです。

このときのAICRの調査によると、がんの原因として市民に認知が高かったのは喫煙(91%)、紫外線(87%)などでした。これらに比べると肥満の認知は51%と低い結果となっています。

2001年の調査では、肥満とがんの関連についての認知は35%だったので、年々認知度は上昇しています。しかし、まだ十分とは言えないでしょう。肥満ががんを誘発することをもっと知ってもらい、肥満にならないような生活習慣を身につければ、がんを予防できることになるからです。

がん予防のためには「認知度51%」では十分とは言えないのです。研究者は、喫煙とがん発症の関係と同じくらい「肥満」も、がんの原因として認知されることを目標としています。

がん誘発の原因は何か

さて、それでは一体なぜ肥満によってがんが誘発されるのでしょうか?そのメカニズムについてはまだ完全に解明されてはいないのですが、少しずつ分かってきたことがあります。

現在行われている研究の中には、「脂肪組織は新陳代謝が非常に活発である」という事実をがん発症に結びつけているものもあります。

脂肪組織は、多くのホルモン、成長因子、シグナル因子など、体内の他の細胞へ影響を与える物質を生むのですが、そのような物質が、がんの成長と増殖を促進するのではないかと考えられているのです。

たとえば、多くの乳がんや子宮体がんを促進するホルモンである「エストロゲン」は、脂肪組織においても産出されます。そして、脂肪過多の女性の場合、脂肪によって過剰なエストロゲンが産出され、がんを促進する原因となっているのではないかと考えられています。

また、肥満とがんの関連性については、ホルモン以外の研究も進んでいます。たとえば、最近のがん研究所のリサーチでは、肥満の人の肝がん発症は腸内細菌の変化によって促進されていることが突き止められました。肥満になると体内で増加する腸内細菌があり、その細菌が肝細胞の発がんに影響を与えているということが明らかになったのです。

予防できるがんであることを知ってもらう

肥満ががんを誘発するメカニズムについては、今後の研究などにも注目して、情報を集めていきたいですね。

まだ解明されていない部分も多い「脂肪過多」と「がん」の関係ですが、いずれにせよ、食生活の見直しなどにより、予防が可能であるということをもっと多くの人に知ってもらい、発症数を少なくしたいものです。

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