知っておきたいがん手術後に発生する合併症

手術や検査がもとになって起こる病気のことを「合併症」と言います。合併症は時に、医療ミスや医療事故だと誤解されることがあります。

合併症は、どんなに注意深く手術を行っても、一定の確率で起こる可能性があります。しかし、リスクの理解不足や説明不足などが原因で誤解が生じ、訴訟などにつながる場合があるのです。

高齢者は要注意!合併症には再手術や致命的リスクも

合併症を起こすと、入院期間が長くなったり、場合によっては再手術が必要になったりすることもあります。また、一つの合併症から、その他の合併症が引き起こされることもあり、場合によっては致命的となることがあります。

また、高齢者、糖尿病患者、慢性肺疾患患者、血栓症患者、肥満の患者は、リスクがより高く、合併症を起こしやすい状態にあります。該当する方は、手術ができなかったり、持病の状態が改善するまで手術を延期しなければならなかったりすることもあります。

特に、75歳以上の合併症発症率は、28%と高い傾向があるとの報告もあります。予備能力の低下している高齢者では、一旦合併症を起こした場合、治療が困難で致命的になる可能性が高いのです。

手術に伴ういろいろな合併症

それでは、がんの手術を行った際に、起こりうる合併症の種類をみていきましょう。

1.胃や腸の手術後の合併症

吻合部縫合不全(ふんごうぶほうごうふぜん):手術でつなぎ合わせた縫い目の治りが遅く、消化液などがおなかの中に漏れて出てくること。まれに、手術そのものの手技が不十分のこともありますが、ほとんどは、つなぎ合わせた部位の血流がよくないことや、つなぎ目に強い圧力がかかったことなどが原因です。

絶飲や天敵で経過を見ているうちに、なおることが多いのですが、腹膜炎をおこして致命的になったり、再手術が必要になったりすることもあります。

腸閉塞症:手術の麻酔などで麻痺した腸の回復が遅かったり、手術による炎症で、 腸同士がねじれてくっついたりしたことが原因で、腸内が塞がって腸管内容物の通りが悪くなること。

通常は保存的な治療によって改善しますが、再手術が必要となることもあります。

2.乳がん手術後の合併症

脇の下にリンパ液がたまることがあります。また、肩や腕の運動障害が起こることもありますが、外来通院やリハビリテーションを根気よく続けることで徐々に改善します。

3.肝臓の手術後の合併症

胆汁漏:切除した肝臓断面から胆汁が漏れてくること。

胸水や腹水:手術後におなかや胸の中に水がたまることがあります。治療として、針を刺して水を抜くことがあります。

4.手術全体に起こりえるもの

術後出血:細心の注意を払って手術していても、偶発的に術後に再度出血すること。輸血や、止血手術が必要となることがあります。

創感染:手術した傷が、化膿してしまうこと。傷口がはれたり、痛んだり、膿が出てくることです。手術した傷を再度、開いて傷口を洗う再手術が必要となることがあります。

せん妄:手術をきっかけにしておこる精神障害のこと。錯乱、幻覚、妄想状態をおこします。時間の経過とともに収まってきますが、高齢の方に起こりやすく、治療の妨げとなることがあります。

医療ミスと合併症の誤解を防ぐために

手術をすれば合併症のリスクはどうしても避けられません。合併症を防ぐために麻酔科、外科、内科等の医療チームで十分に術前評価をし、予防には全力を尽くしています。

医療ミスとは異なるこの合併症を十分理解するために、手術前には、医療スタッフと患者やその家族のあいだで、病気と手術リスクについて十分話しあって、病気や合併症について理解することが大切です。

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