入院の短縮は良いこと?短縮の背景から見える医療制度の問題点

がんを始めとした病気治療の入院日数が短くなっていることを、ご存知でしょうか?医療の進歩のおかげで、病院にいる日数が短くなることは、とてもありがたいことのように思います。しかし、入院日数の短縮のウラには、医療費の削減を掲げる国と、それに対する医療機関との攻防戦があるようです。

医療の進歩は、心と体の負担を軽くする

医療の進歩により、体に負担の少ない治療法が開発されています。負担が少なければ、手術後の体の回復が早くなりますので、入院日数も短くなります。例えば、抗がん剤治療や放射線治療は、通院での治療が可能ですし、最近では乳がんの日帰り手術を行う医療機関も登場しています。

体に負担が少なければ、治療をしながら、仕事を続けたり家族と共に過ごしたりできます。病気にもよりますが、入院日数の短縮は患者の心理的にも良い傾向を与えるようです。

長期入院者では、病院の利益が出ない

入院日数の短縮は、患者側のメリットはありそうですが、病院側のメリットはあるのでしょうか?

日本の医療費は、検査や診療・手術など、行った医療行為を積み上げて計算されています。単純に考えれば、病院は長く入院する人が多いほど診療報酬も増えて利益が出るはずです。しかし、国は医療費の削減を目的に、早く病気を治して患者を退院させる方が、病院の利益が出るような政策を打ち出しました。

病院で入院した際の診療報酬は、看護師1名に対して受け持つ入院患者数によって異なります。現在、入院患者7名に対して1名の看護師がつくものが、一番手厚い医療体制となっています。この場合を例にとると、入院して最初の2週間は高い診療報酬がつきますが、その後は段階的に引き下げられ30日を超えると診療報酬はつかなくなります。つまり、長期の入院患者が増えても、あまり利益にならないのです。

退院後のサポート体制こそ、整備を!

もともと入院日数が少なくて済む病状の患者と病院にとって、短期入院はメリットがあります。しかし、大病を患った方の場合、2週間で退院となると不安も残るでしょう。

医療体制として最も理想的なものは、大きな病院で手術をした後、地域にある中小規模の医療機関でサポートを受けるという形です。退院後のサポートが整っていれば、入院が短くても問題はないでしょう。しかし現状は、まだ地域の医療機関との連携が取れていなかったり、地域の医療機関で受け入れ態勢が整っていなかったりする状態です。

医療費など国の予算にも限界があります。限りある予算の中で、患者へのサポートをいかに充実させるかを考えていくことが求められます。また、患者側も、大病を患った場合の入院と退院後の計画をあらかじめ考えておくことが必要なのかもしれません。

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