ご存知ですか? がんにともなう「倦怠感」

「なんだかだるいなあ」「なんか疲れたなあ」という疲労感や倦怠感がありませんか? じつは、がんの治療中や治療後に倦怠感を感じる人は少なくありません。評価が難しいため軽視されがちな倦怠感ですが、日常生活や社会生活に支障をきたすことも多くあり、QOLを考えるうえでも無視できないものです。そこで、がんにともなう倦怠感について、あらためて着目してみましょう。

多くの人が感じている「倦怠感」

がんにともなう倦怠感は、がんの患者さんの7~10割が経験するといわれています。治療中だけではなく、治療後、数年たっても生活に悪影響が出るほどの倦怠感を感じる人もいます。がんとその治療にともなう症状の中で、倦怠感がもっともつらい症状であると感じている人も多いようです。

一般的な疲労とは異なるもの

それでは、がんにともなう倦怠感とはどのようなものなのでしょうか? いわゆる疲労とは違うのでしょうか? NCCN(National Comprehensive Cancer Network)の臨床実践ガイドラインによると、がんにともなう倦怠感はガイドラインにおいて次のように定義されています(NCCNは世界で主要ながんセンターのNPO団体であり、そのガイドラインは世界的に広く利用されています)。

「癌に伴う倦怠感とは、最近の活動に合致しない、日常生活機能の防げとなるほどの、癌または癌治療に関連した、つらく持続する主観的な感覚で、身体的、感情的かつ/または認知的倦怠感または消耗感をいう。」(訳:NPO法人日本乳がん情報ネットワーク)

つまり、日常的な疲れは休息をとれば回復しますが、それに対してがんにともなう倦怠感は休息をとっても改善しにくく、継続しやすく、日常生活に影響を及ぼすほどつらいものであるということです。もちろん、気合いが入っていないから起こるというものではありません。ですが周りの人に理解してもらえないこともありますので、自分は怠けているのだろうか、と不安をつのらせる人も多く、そのことがさらに悪循環を招くことにもなりかねません。

「倦怠感」を引き起こす要因

そのようなやっかいな倦怠感はなぜ起こるのでしょうか? 正確なメカニズムはまだわかっていませんが、いくつかの要因が重なって倦怠感が起こるのではないかといわれています。以下のようなものが要因としてあげられています。ご自分の症状にあてはまるものはありませんか?

  • がん細胞にエネルギーがとられる
  • 感染症によって体力を消耗する
  • 痛みや吐き気などのつらい症状による疲労感が蓄積している
  • 睡眠の障害がある
  • 貧血や栄養障害がある
  • 体を動かさないことにより筋力が低下し、体力が低下している
  • 心理的なストレスがある

試してみたい対処法

こうした倦怠感に治療法がないわけではありません。対処法としては、上記にあげたような要因を解消するという観点から、次のようなことがすすめられています。

エネルギー管理

自分がもっているエネルギーは限られていると考えて、体力の使い方を工夫しましょう。たとえば、生活の中でしなければならないことについて優先順位をつけましょう。急がないものは後回しに、家族などにやってもらえることは助けを借りましょう。日課についてスケジュールをたてておくと、エネルギーの配分がしやすいようです。

睡眠

良質な睡眠は倦怠感の改善にも有効です。就寝と起床の時間は毎日規則正しくしましょう。よく眠れなかったからといって長く床の中にいるのはかえってよくありません。また、夜の睡眠に影響しないよう、昼寝は45分以内にとどめましょう。午後はコーヒーなどのカフェインの摂取を避けたり、寝室は暗く静かな環境に整えたりといった一般的な睡眠を促すアドバイスもためしてみましょう。また、寝ないといけない、眠れないのは良くない、と心配しすぎるのも逆効果です。ゆったりと心を静めることを心がけましょう。

運動

運動が倦怠感の改善に効果を示した報告はよくあるようです。無理のない範囲で定期的に自転車や散歩、体操などの運動をしてみてはいかがでしょうか。適度な運動は体力を維持するだけでなく、気分転換にもなり、よい睡眠にもつながります。ただし、感染のリスクが少ない環境が望ましいので、公衆用水泳プールでの水泳等は避けたほうがよいでしょう。また、運動することに対して少しでも不安がある場合には、医療機関を受診して助言を仰ぎましょう。

気分転換

気晴らしになるような活動も、倦怠感を和らげるのに役立つようです。音楽を聴いたり、本を読んだり、趣味の時間をつくってみてください。おしゃべりやゲームでも効果があるようです。

対処法は他にもいろいろ

倦怠感の対処法はその他にもいろいろありますので、つらいときにはひとりで悩まずに、医療機関を受診したり、経験者の交流会などに参加したり、情報を得ることをおすすめします。医療機関では、貧血の治療を受けたり、睡眠療法や注意力回復療法を受けたり、症状や体調にあわせて理学療法を受けたり運動プログラムを作成してもらったりすることができます。薬を服用中であれば、倦怠感を和らげる対策として、使用中の薬剤の見直しがあるかもしれません。

倦怠感は痛みと同様、検査等で簡単に評価できるものではありませんので、倦怠感がどのようなものであるのか、受診時にはなるべく正確に伝えるように心がけることが大切です。治療に関する日記等の記録をつけているのならば、倦怠感についても記しておくとよいでしょう。

以上のように、がんにともなう倦怠感にも有効な治療法はいろいろありますので、倦怠感はがまんするしかないと決め込まず、いろいろな手立てを試してみてください。


参考: