放射線は怖い?-放射線療法の今

手術療法、抗がん剤化学療法と並ぶ、がんの三大治療法に「放射線療法」があります。「放射線=怖い」と連想されがちですが、正しい知識を身につけて対処して行くことが重要です。さっそく、詳しい内容をご紹介しましょう。

なぜ、放射線療法なのか?

日本のがん治療は、外科手術による「切除」を最優先とし、放射線療法は、手術が出来ない進行がんや、転移のあるケースに行うのが一般的でした。

しかし外科での大手術は、体への大きな負担がかかり、体の機能障害を残すこともあります。最近では医者も患者も「命さえ助かればよい」という考え方より、治療後の生活の質(Quality of life:略してQOL)の高い治療法を選択するようになってきました。治療後の生活の質を維持できる放射線療法は、時代にあったがんの治療法として注目されています。

放射線療法の実際を知る

放射線治療には、主にエックス線、電子線、ガンマ線などの放射線を用います。

放射線療法のうち一番多く行われる「体外からの照射治療」は、通常4週から7週間程度、週にほぼ5日間おこないます。毎日同じ場所に精密に照射するので、その精密な位置を保つため、特別な装具を使うこともあります。実際の照射は1~2分間で、放射線があたっても、痛みや熱は感じません。高エネルギーX線や電子線の体外照射を受けることにより、患者さん自身が放射能(放射線を放つこと)をもち、家族などに影響を与えることはありません。

また、治療費は、外科手術や抗がん剤治療に比べて低く設定されています。さらに外来での治療も可能なため入院費用がかからず、全体的に安価に押さえられます。内蔵の形や機能が損なわれるような手術療法とは異なり、体への負担が少ないのでご高齢の方や合併症があって手術が受けられない方でも治療を受ける事ができます。

放射線があたるとがんになるの?—放射線療法の副作用

放射線療法の内容はわかりましたが、どのような副作用があるのか?と心配な点もあります。

放射能治療の効果はがんの種類によって大きく異なります。副作用も同様です。放射線は、がん細胞を破壊するのと同時に正常な細胞も攻撃してしまいます。そのため副作用が発生するのです。疲れやすい、食欲がなくなるなどの症状が時にみられます。また、放射線があたった皮膚が赤くなって、日焼けのようにヒリヒリすることがあります。これらの症状は治療開始2−3週後に発生し、治療終了後もしばらく続きます。

治療中におこる副作用の他に、治療終了後、数ヶ月から数十年しておこってくる副作用もあります。治療の副作用によってできるがんの発生の可能性は、非常に小さい確率ですが否定できません。

必要な正しい理解—放射線治療を決心するまで

しかし、放射線治療は、機械などの進歩に伴い、良い方向に変化しています。治療精度も向上し、治療成績の改善や副作用の減少が可能になってきています。

米国ではがん患者の50%がその治療経過中に放射線治療法を受けているのに対し、日本ではがん患者の25%程度しか治療を受けていません。日本は世界唯一の被爆国であり、また震災後の原発事故の記憶もあるので、放射線に対して否定的に考える傾向があるように思います。

放射線には副作用があり、過剰に浴びると、がんが発生することは事実です。ただし、治療で放射線を使う際には、最新の注意を払っています。放射線の治療には、チームを統括する放射線治療医、放射線量の計算照射方法を決める医学物理士、実際の照射をおこなう診療放射線技師、患者のケアーをする看護士など、さまざまな専門家がチームとなって治療に当たります。

専門家の意見を聞いて、放射線のことを正しく理解することが大切です。がん治療の有効な治療法を上手に利用しましょう。

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