がん患者さんに対する就職支援の取り組み

がんの患者さんにとって、療養中、あるいは治療後の就労問題は気になるところでしょう。2015年の厚生労働省の調査結果によると、がんと診断を受けた人の約85%が仕事に関する不安を感じているそうです。そこで今回は、がん患者さんの就労問題の現況とともに、ハローワークと病院が連携して取り組んでいる、がん患者さんの就職支援についてご紹介します。

がんに罹患したことによる仕事への影響

2016年12月に厚生労働省が発表した「がん患者のおかれている状況と就労支援の現状について」によると、2012年にがんと診断された人のうち、65~74歳の高齢者の割合は約28.5%でした。一方、15~64歳の生産年齢の割合は29.8%で、20~69歳に範囲を広げると43%を占めています。近年は高齢者のがん罹患が増えていますが、就業可能な年齢の患者さんの割合のほうが大きいのです。つまり、がんと診断されたことで仕事に関する問題を抱える人が、それだけ多いのだといえます。

「がんの社会学」に関する研究グループによる「2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査」によると、がんと診断されたことで約30.5%の人が勤めていた会社を依願退職に、そして4.1%の人が解雇となっています。単独や家族従業者を含む自営業の人では、廃業した人が17.1%、代替わりした人が2.6%でした。この割合は、2003年のデータと大きな違いがありません。がん治療は進歩しているにもかかわらず、患者さんの仕事に関する状況はこの10年であまり変わっていないことがうかがえます。

厚生労働省が2015年にがん患者さんが離職したタイミングを調査したところ、40.2%の人が治療を始める前だったそうです。このうち、診断確定時の離職は32%を占めています。治療開始後に離職した人は48.3%で、内訳は最初の治療中が11.6%、治療終了後から復職までが11.1%、復職後が18.6%、再発後が7%でした。

がんが治る病気になりつつある昨今では、がんの治療中や治療後に就労を希望する割合は決して低くないといえるでしょう。

ハローワークとがん診療連携拠点病院が連携した就職支援がスタート

厚生労働省では、2013年から専門の相談員をハローワークに配置し、がん診療連携拠点病院と連携した就職支援モデル事業をスタートしています。

初年度は東京、神奈川、静岡、愛媛、兵庫の5都県にある5カ所のハローワークに限られ、実施拠点病院も5カ所だけでしたが、2016年度には支援を実施しているハローワークは全国47都道府県の48カ所、実施拠点病院は62カ所に拡大しました。また、2013年度には相談件数547、就職率40.0%だったのが、2015年度には相談件数が3,350と大幅に増加し、就職率も51.2%と上向いています。

さらに2017年度には、拠点病院数の拡充を図るとともに、治療と両立できる求人の確保の推進を目指しており、より手厚い就業支援が得られることが期待できます。

就職支援を受ける際に考えておくべきこと

就職に関する相談をしたり、支援を受けたりする際は、事前に以下のようなことについて考えておきましょう。

  • どの程度働くことができるか
    現在の体調や今後の回復具合を考慮し、労働時間や仕事内容などについて検討する必要があります。まずは今、どんなことをどの程度できるのか、前向きに考えてみましょう。
  • どのような職業・職種を希望するか
    通院治療を続けながら働きたいという希望がある場合は、治療のスケジュールに合わせて休暇を取りやすい、あるいは出勤の調整がしやすい職場であることが条件となるでしょう。また、精神的にも体力的にもあまり負担のかからないと思われる職業・職種を考える必要があります。そのうえで、生きがいややりがいが感じられる仕事に就けるのが理想です。
    これまでの経験やスキルを活かすことができれば、仕事を見つけやすくなるとともに働き始めてからのストレスが少ないと思われます。自分にはどのようなスキルがあるのか、どのようなアピールポイントがあるのか、洗い出しておきましょう。
  • 会社に病気のことを伝えるかどうか
    応募した会社に病気について伝えるかどうか、伝えるとしたらどのタイミングにするかは、迷うところかもしれません。仕事をするうえで制限がない場合は、特に伝える必要はありません。しかし、勤務時間や休暇、仕事内容などに配慮してもらう必要がある場合は、応募時や面接時、内定後など、どこかのタイミングで申告したほうがいいでしょう。いつ伝えるかについては、ハローワーク等の担当者と相談することをおすすめします。

就職支援を活用して自分らしい生き方を追求しよう

がんの患者さんが仕事に就くことを考えた場合、本当に治療を続けながら働けるのか、就職先が見つかるのかといった、多くの疑問や不安があることでしょう。

幸いなことに、がん患者さんをはじめとした長期療養者に対する厚生労働省の就職支援事業は、年々拡大しています。ひとりで悩まずに、お近くのハローワークやがん診療連携拠点病院に問い合わせてみてはいかがでしょうか。就職支援を活用し、ぜひ自分らしい生き方を追求してください。

 

参考:

がんの療養を続けながらの就業をハローワークが支援|BreCare Garden