がんの治療・療養中に温泉を安全かつ快適に楽しむには

日本では、古くから温泉に健康の維持増進などに役立つさまざまな効能があるといわれ、深く親しまれています。しかし、ひと口に温泉といっても、その種類や性質は温泉ごとに異なります。そこで今回は、がんの治療・療養中に、温泉を安全かつ快適に楽しむために理解しておきたいことをご紹介します。

温泉の種類と効能

温泉は、源泉の水温が摂氏25度以上で、リチウムイオンや総鉄イオン、ラドンなどの化学成分のうち、いずれかひとつを含むものと温泉法によって定義され、各成分の含有量も詳細に規定されています。さらに、温泉のなかでも特に治療の目的に向いており、源泉の水温が摂氏25度以上、規定の化学成分を一定以上含むものを、療養泉と定義しています。

また、泉質(温泉に含まれている化学成分の種類と量)によって、「単純温泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「二酸化炭素泉」「含鉄泉」「酸性泉」「含よう素泉」「硫黄泉」「放射能泉」の10種類に分類されています。

なお、温泉にはさまざまな効能があるといわれています。いくつかピックアップしてご紹介しましょう。

  • 単純温泉
    浴用では「うつ状態、不眠症、自律神経不安定症」に効果があるといわれています。
  • 炭酸水素塩泉
    浴用では「末梢循環障害、切り傷、冷え性、皮膚乾燥症」に、飲用では「耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)、胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎」に効果があるといわれています。
  • 硫酸塩泉
    浴用では「末梢循環障害、切り傷、冷え性、皮膚乾燥症、うつ状態」に、飲用では「便秘、高コレステロール血症、胆道系機能障害」に効果があるといわれています。

温泉とがんの関係

「温泉はがんに効く」「温泉に通ったらがんが治った」などの情報を見聞きしたことがあるかもしれません。しかし、実際には温泉のがんに対する効能に関する詳細な研究は行われていないため、現状では「温泉はがんに効く」とはいえません。その点を理解したうえで温泉を利用するようにしましょう。

温泉を安全・快適に楽しむためのポイント

がんの治療・療養中に温泉を安全かつ快適に楽しむには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。以下にそのポイントをご紹介します。

まずは主治医に相談する

近年の研究から、熱刺激を受けたがん細胞が「ヒートショックプロテイン」という物質を増強し、自身の身を守ることが明らかとなっています。温熱刺激は、がん治療にも用いられていますが、誤った方法で利用するとがん細胞が破壊されにくくなり、治療効果が低下する危険性があります。そのため、がん治療・療養中の人や治療の予定がある人は、事前に主治医と温泉の利用について相談し、助言を得るようにしてください。

 

体調が悪いときの利用を避ける

心身のリラックスや気分転換のために、温泉を習慣的に利用する人もいることでしょう。しかし、温泉や湯気の熱刺激は、血圧変動や脱水を起こしやすく、めまい、立ちくらみなどが生じると転倒の危険性があります。また、肌にいい効果があるとされる温泉であっても、ドライスキンなどの皮膚トラブルのある状態で入浴すると、症状の悪化や治癒の遅れを招く可能性があります。体調がすぐれないときは、温泉の利用を避けるようにしましょう。

湯あたりをしないようにする

湯あたりとは、本来は温泉療法を開始した数日後に起こるめまい、だるさ、吐き気、食欲不振などの消化器症状のことを指します。

湯あたりを予防するには、入浴時に以下のような工夫をするといいでしょう。

  • 温度変化に体を慣らすため、湯につかる前に十分なかけ湯をする。
  • 足湯→半身浴→全身浴と、段階的にゆっくりと入浴する。
  • 湯に浸かる時間は、初めは3~5分を目安にする。体が慣れてきたら、体調に合わせて10分程度まで徐々に延ばしていく。
  • 入浴回数は1日1~2回から始め、体調の悪化がないことを確認しながら徐々に増やす。ただし、1回10分程度で4回を1日の上限とする。

体の負担を軽減するためには、湯からあがるときもゆっくりと時間をかけることが重要です。また、入浴後には十分な水分補給をし、体調に変化があったときには休息をとりましょう。そして、湯あたりの症状がひどい場合は、医療機関を受診してください。

がん治療・療養中の気分転換に温泉を活用しよう

がんの治療や療養を乗り越えるためには、ストレスと上手につき合う必要があります。家族や親しい人と一緒に温泉を楽しむことで、いい気分転換やストレス解消になるでしょう。もし、身近なところに温泉がある場合は、今回ご紹介した注意点を参考に温泉を活用してみてください。また、体調がよければがんの療養中でも温泉旅行が可能です。主治医と相談しながら、計画を立ててみてはいかがでしょうか。

 

参考: