自分で意志決定ができなくなってからがんになったときの備えについて

日本は高齢化社会といわれるようになって久しく、今後もますます高齢化が進む見通しです。85歳以上では4人に1人が認知症とのデータがあり、高齢になると認知症になる可能性が高くなります。また、がんも高齢になるほど罹患リスクが高まります。そこで懸念されるのが、認知症を発症して状況判断が難しい状態でがんを患うケースです。そうなったときに困らないように、今からの備えについて考えてみましょう。

がんの罹患が増える年齢と認知症の発症年齢

がんをはじめ、病気になった際にどのような治療を受け、どのように生きていきたいのかを自分自身で決めるには、ものごとに対する認識力と判断力が必要です。しかし、認知症を発症すると、そのような認識や判断ができなくなる可能性が高くなってしまいます。

厚生労働省の発表では2012年の時点で65歳以上の高齢者のおよそ7人に1人が認知症と見られ、さらに2025年には65歳以上のおよそ5人に1人が認知症になると予想されています。また、年齢が5歳上がるごとに認知症の人の割合がおよそ2倍になるともいわれています。

一方、国立がん研究センターがん対策情報センターのデータによると、がんの罹患率は男女ともに50歳代ぐらいから上昇し、高齢になるほど数値が高くなっています。

つまり、がんの発症リスクが高い年齢層は、認知症を発症する可能性が高い年齢層でもあるのです。

認知症のがん患者さんの治療方針は誰が決める?

ひと口に認知症といってもその症状はさまざまで、「会話ができる」「ある程度の意思伝達はできる」「短期記憶なら維持できる」などの段階があります。そのため、治療方針の決定は本人の意志が優先されます。しかし、治療全体について理解をしたうえで判断できているかどうかが疑わしいケースが少なくありません。そのような場合は、家族が治療の方針やスケジュールなどの判断をすることになります。

しかし、ご家族にとってはこのような判断を下すのは非常に難しく、どのような答えを出したとしても、それが正しいのかどうかと思い悩むといいます。つまり、自分が決めておかない限り、家族に精神的な負担を背負わせることになりかねないのです。

「終活」という意思表示を考える

昨今、自分らしく人生を締めくくるための活動、「終活」が注目されています。

終活というと、お葬式のあげ方や財産の分け方など、自分の死後のことを事前に決めておくというイメージがあるかもしれませんが、それだけではありません。自分がどのように生きてきたかを振り返り、どのような価値観を持っているのかということや、家族や友人への思いや感謝など、自分の生き様を明確にするための活動だといえるのです。

そのなかで、「病気への向き合い方」「治療方針の決め方」「自分自身で判断できなくなったときに、どうしてほしいか」ということについても決めておくといいでしょう。そして、自分の気持ちを整理するうえでも、また、家族に理解してもらうためにも、文書にすることが大切です。

終活で自分の意思をはっきりと残しておくと、万一の場合に家族が治療方針などを判断するときの拠りどころとなるでしょう。

がん治療に関する最新情報を把握したうえで判断しよう

終活で自分の価値観や意思を伝え残すことは大切ですが、一時的な感情だけで万一のときの治療方針などを決めてしまうのはおすすめできません。

例えば、「副作用で苦しむなら抗がん剤などを使った延命治療はしたくない」と考える人は多いようですが、がん治療は日々進歩しており、より効果的で副作用の少ない治療薬を利用できる可能性があります。昨今では、がんは治せる病気になりつつあります。特定の治療法を頭から否定するのではなく、がん治療に関する最新の情報を把握したうえで、自分の価値観と合う選択肢を示しましょう。

 

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