がん治療・療養中の感染症を予防するための習慣

季節とともに気温が下がると、流行性の感染症が心配されます。特に、冬場にがん治療の予定がある人にとっては、不安のひとつとなるでしょう。そこで今回は、寒い時期に流行しやすい感染症から身を守るための習慣についてご紹介します。

寒い季節に流行しやすい感染症

寒い季節に流行する代表的な感染症には、インフルエンザやノロウイルス、ロタウイルスによるものがあります。以下に、それらの性質と特徴をご紹介します。

  • インフルエンザ
    日本では毎年1~2月をピークに流行するインフルエンザは、38度以上の急激な発熱や全身の倦怠感、喉の痛みや咳といった症状が現れます。感染力が非常に強く、日本人のおよそ10人に1人が感染するといわれています。感染の経路は、飛沫(咳やくしゃみの飛沫に含まれたウイルスによる感染)や接触(手すりや電車の吊革に付着したウイルスに触れることによる感染)です。
    ワクチンを接種することで、感染時の症状の重症化を防げますが、がん治療・療養中の予防接種の可否については必ず担当医に確認してください。
  • ノロウイルス
    ノロウイルスによる食中毒の約7割が、冬季に発生しています。感染経路は飛沫や接触、ウイルスに汚染された食品の摂取で、感染すると24~48時間の潜伏期間ののちに嘔吐、下痢、吐き気、腹痛、微熱などの症状がみられます。健康的な人であればこれらの症状が1~2日間続いたあとに治癒し、後遺症もありません。しかし、子どもや高齢者、抵抗力が低下している人の場合は、重症化する危険性があります。
    また、感染者の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれているため、処理をする際は二次感染をしないように細心の注意が必要です。
    ノロウイルスによる食中毒を防ぐには、食品を十分に加熱することが大切です。中心部まで85度以上に、かつ90秒以上加熱してください。さらに、まな板や包丁、食器、布巾なども、85度以上のお湯で1分以上消毒しましょう。
  • ロタウイルス
    例年3~5月に流行する感染症のひとつで、0~6歳の乳幼児が感染すると胃腸炎を発症します。成人の場合は、何度も感染を繰り返しているため、通常は症状が現れません。しかし、がん治療などの影響で抵抗力が低下している場合には要注意です。症状が現れる場合は、2~4日の潜伏期間ののちに水様のゆるい下痢や嘔吐が繰り返されます。
    ロタウイルスの感染経路は経口です。感染者の便を処理する際などにウイルスが指先に付着し、その手で触れた食べ物を食べる、食器を使うといった行為で感染に至ります。十分に手洗いをした場合でも多数のウイルスが付着したままの場合があるため、注意が必要です。

手の洗い方については、ハンドソープで10秒間のもみ洗いしたあとに流水で15秒間すすぐことを2回繰り返すと、手に付着したウイルスのほとんどを除去できるという研究報告があります。

また、ノロウイルスやロタウイルスの感染者の便や嘔吐物を処理する際は、使い捨ての手袋やマスク、エプロンを着用し、できる限り手、鼻や口、衣類に直接ウイルスが付着することがないように対策することも大切です。そして、便や嘔吐物はもちろん、処理の際に使った手袋やエプロンはビニール袋に入れ、ウイルスが飛散しないように密封してから処分してください。

感染予防につながる習慣

感染症予防は、日常生活の心がけが大切です。その取り組み方を以下でご紹介しましょう。

十分な栄養と休養

バランスの取れた食事を心がけ、十分な栄養を摂取しましょう。1日3食をしっかりとることが理想ですが、治療などの影響で食欲低下がみられるときは、食べられるものを少しでも口にするようにします。1回の食事量が減ったぶんは、食べる回数を増やすことで補ってください。

そして、休養も欠かせません。十分な休養と栄養補給で体調を整えることは、抵抗力の向上につながります。

室内の温度と湿度を管理する

ウイルスは、低温で乾燥した環境を好みます。加湿器などで室内の湿度を50~60%に保ち、空気中にウイルスが漂いにくい環境をつくりましょう。

正しい手洗いとうがいの励行

接触感染を防ぐには、こまめな手洗いと手指消毒が重要です。特に、外出後は必ず実施しましょう。なお、正しい手洗いの方法は、厚生労働省の文書で確認できます。

手を洗ったあとは、水分が残らないように清潔なタオルやペーパータオルしっかりとふき取り、乾燥させることが重要です。水分が残っていると再びウイルスが付着する危険性があるだけでなく、消毒剤の濃度が薄くなって十分な効果を得られない可能性があります。なお、アルコール消毒は、ノロウイルスにはあまり効果がないといわれています。そのため、正しい手洗いが感染予防の要になるのです。

また、うがいによって口腔内の清潔を保ち、のどの粘膜を保湿しましょう。

マスクの着用

感染症が流行する時期は、外出の際にマスクを着用しましょう。口や鼻からウイルスを吸い込むのを防げるだけでなく、自分から他人への感染を防止することもできます。ただし、マスクは正しく着用しないと意味がありません。商品の説明書できちんと着用方法を確認してください。

人ごみを避ける

人ごみにはウイルスに感染した人がいる可能性があります。特にがん治療中で免疫が低下しているようなときは、人ごみが予想される場所への外出はできるだけ避けたほうがいいでしょう。どうしても外出の必要がある場合はマスクを着用し、帰宅後には手洗いとうがいをしましょう。

きちんと備えて不安をやわらげよう!

感染症予防のポイントは、日常生活での心がけにあります。冬場のがん治療における感染症の不安を和らげるためにも、一つひとつの対策を実施しましょう。また、感染予防について疑問や不安がある場合は、主治医や担当看護師に相談して適切な助言を受けてください。

 

参考:

手洗いの時間・回数による効果(PDF)|厚生労働省