ROS1融合遺伝子陽性の肺がんに有効な治療薬と診断薬が保険適用として承認

2017年5月に、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺がんの治療薬として、分子標的薬「クリゾチニブ」の適応拡大が承認されました。今回はこの治療薬と、ROS1融合遺伝子を検出する検査キットについてご紹介します。

ROS1融合遺伝子陽性の肺がんとは

日本では、毎年約13万人が肺がんを発症し、7万人以上が肺がんで死亡しています。死亡数が多い理由は、肺がんの約85%を占める非小細胞肺がんは、発見された時点ですでに手術のできない進行がんであるケースがおよそ3分の2もあるためです。

そのような患者さんには、化学療法と放射線療法を中心に治療が行われますが、十分な効果が得られていませんでした。しかし、近年の遺伝子解析技術の進展によって、肺がん発症に影響を及ぼすさまざまなタイプの遺伝子変化が発見され、そのタイプに応じた分子標的薬による治療が非常に効果的だと明らかになっています。

2007年には、肺がんにROS1融合遺伝子が存在することがわかりました。このROS1融合遺伝子は、ROS1遺伝子とほかの遺伝子が何らかの原因で融合してできた特殊な遺伝子で、がん細胞の増殖を促すタンパク質を作り出すという性質があります。

全国の医療機関の情報を共有して円滑な臨床試験の評価が実現

ROS1融合遺伝子陽性の肺がんは、非小細胞肺がんのなかでも1~2%しかない非常に珍しいタイプであるため、治療開発の臨床試験に十分な人数の患者さんを集めるのは困難だと考えられてきました。しかし、2013年に「LC-SCRUM-Japan」が組織されたことで状況が変化します。全国の医療機関が一体となって遺伝子スクリーニングをすることで、患者さんの数が極めて少ないROS1融合遺伝子陽性の肺がんの検査、治療内容やその効果などの情報を共有できるようになったのです。それによって、希少なROS1融合遺伝子陽性の肺がんに対する円滑な臨床試験の評価が実現しました。

2013年より日本を含む東アジア4カ国にてスタートした、ROS1融合遺伝子陽性の肺がんに対するクリゾチニブの臨床試験には、LC-SCRUM-Japanで特定された患者さんが登録されています。そして、クリゾチニブはROS1融合遺伝子陽性肺がんの奏効割合(効果)が69%と良好な成果が得られました。この結果をもとに、クリゾチニブは臨床試験開始からわずか4年でROS1融合遺伝子陽性の肺がんの治療薬として保険適用が承認に至ったのです。

また、ROS1融合遺伝子を検出し、クリゾチニブによる治療の適応を判定するコンパニオン診断薬として、「OncoGuide® AmoyDx® ROS1融合遺伝子検出キット」が承認されています。その開発においても、LC-SCRUM-Japanの検査データが活用され、承認に大きく貢献しているとのことです。

肺がんの生存率とQOLの向上に期待

クリゾチニブ、およびOncoGuide® AmoyDx® ROS1融合遺伝子検出キットの保険適用が承認されたことで、より多くのROS1融合遺伝子陽性の肺がんの患者さんに最良の治療が行われる機会が増えるはずです。それにともない、これまで治療が困難といわれてきた進行性の肺がんの生存率も変化していくことでしょう。さらには、QOL(生活の質)の向上にもつながると期待されています。

 

参考: