がん医療におけるAIの可能性とは

医療分野でAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用する研究が進んでいます。がん医療は予防や早期発見が大きな意味を持つため、AIの導入よる成果が期待されるところです。そこで今回は、画像診断を中心としたAIの活用についてご紹介します。

近年AIが脚光を浴びている理由

Artificial Intelligence(人工知能)という言葉が始めて使われたのは、1956 年。コンピューターが推論や探索を行い、問題や迷路が解けるようになり、1950年台後半から1960年代にかけてAIが大いに注目されました。その後、AIブームは沈静化しましたが、1980年代にはコンピューターに知識を与えるとその分野の専門家のようにふるまうプログラムが開発され、再びAIが脚光を浴びるようになりました。

2000年代に入ると、大量のデータを用いることによってAI自身が知識を獲得する機械学習が実用化されました。そして2012年、コンピューターの画像認識率を競う大会で、ディープラーニング(深層学習)という技術を用いたトロント大学のチームが圧勝したことから、第3次AIブームが巻き起こりました。

従来は、コンピューターが学習するために、コンピューターが認識できる形の知識を用意しなければならなかったのに対して、ディープラーニングでは何が知識であるかということをコンピューター自身が見つけ出せるのです。

ディープラーニング分野の研究スピードは非常に速く、機械学習は飛躍的な進歩を続けています。現在ではあらゆる分野においてAIの活用が期待されている状況です。それは、保健医療分野も例外ではありません。

AIの活用が期待される画像診断支援

診断系の医療機器には、ディープラーニングを取り入れやすいといわれています。例えば、画像診断支援に活用すると、画像診断の見落とし率の低減や診断の精度向上につながるそうです。

CTやMRIの撮影スライスの厚さは、技術の進歩とともに薄くなっています。例えばCTでは、1mmの厚さで撮影されていたのが、現在では0.25mm厚での撮影が可能になっています。しかし、撮影スライスが薄くなると、微細な異常も発見しやすくなると同時に、チェックが必要な画像の枚数が増加して医師の負担が大きくなります。医師の負担軽減と効率的な診断のためにも、AIの活用が求められているのです。

また、近年普及が進んでいるカプセル内視鏡への活用も期待されています。カプセル内視鏡は口から飲み込むタイプの内視鏡で、通常の内視鏡では届かない小腸も観察できるのが特徴です。しかし、一度の検査で数千枚から数万枚におよぶ画像のチェックが発生するのが大きなネックとなっています。AIによって注意すべき画像が自動的に抽出されるようになれば、医師の負担が大きく軽減されるでしょう。

AIが5年以内に死亡する患者さんを高確率で予測

オーストラリアのアデレード大学は、60歳未満の患者さん48人の胸部の医療画像をAIに分析させたところ、どの患者さんが5年以内に死亡するかを69%の確率で予測できたと発表しました。AIが画像のどの部分から余命を判定したのか不明なケースもあり、医師には確認できない病変や異常を見つけ出している可能性があるようです。

研究の次の段階としては数万人規模の画像の分析を計画しており、重篤な疾患の早期発見につながる可能性があると期待されています。

がん医療でもAIの活用に期待がかかる

ディープラーニングによる画像診断支援アルゴリズムを開発するには、正確な診断名と紐づけられた医療画像が大量に必要です。2016年の時点では、そのような医療画像がひとつのカテゴリーにつき1000万点以上あれば、人間と同等、あるいはそれ以上の性能を達成できると見込まれています。日本国内には、多くの医療画像があるため、AIによる高精度な診断や各種がんの早期発見が期待されます。

さらに、予後の情報が付加された画像をディープラーニングに学習させることで、予後の予測もできるようになると考えられています。そうなれば、患者さん一人ひとりに合わせたより適切な治療が可能になるかもしれません。

 

参考: