スムーズな社会復帰のために知っておきたいがんの後遺症

がん治療の進歩によって、治療後の生存率は飛躍的に高まっています。しかしその一方で、がん治療を終えて社会復帰を目指したものの、後遺症に悩まされてうまくいかない人が多くいらっしゃいます。そこで今回は、がん治療後のスムーズな社会復帰のために、早い段階から取り組める対策を考えてみましょう。

がん治療後の主な後遺症

どのようながんであっても、手術や抗がん剤などの治療を受けたあとに手足のしびれや痛みを感じたり、激しいむくみが出たりして、日常生活に支障をきたす可能性があります。このような後遺症といわれる症状は、治療後すぐに現れるとは限りません。しばらく経過してから、社会復帰と重なるようなタイミングで生じるケースもあるのです。

以下に、がん治療後の後遺症の一例をピックアップします。

  • 脳腫瘍
    治療後に視覚障害や聴覚障害、知覚障害、運動機能障害などが生じることがあります。
  • 直腸がん
    手術後に排便機能障害が現れることがあります。
  • 胃がん
    手術後に栄養障害や痩せ、ダンピング症候群、逆流性食道炎などが生じることがあります。
  • 乳がん
    手術後に肩関節の運動障害が生じることがあります。
  • 子宮がん
    手術後に更年期のような症状(のぼせ、ほてり、イライラ、めまい)や、激しいリンパ浮腫などが生じることがあります。

こうした症状は、たとえ軽くても不快感があります。重症の場合には、自分らしい暮らしを諦めなければならないケースもあるでしょう。

後遺症を予防し症状を抑えるリハビリテーション

がんの後遺症があるときは、それぞれの症状に適応した治療を受けることが大切です。さらに、回復力を高め、残された能力を維持・向上させるリハビリテーションが有効であることが、最近の調査研究でわかってきました。

リハビリテーションの対象となる症状と期待される効果

リハビリテーションを実施することで、次のような症状の予防や回復が期待されます。

  • 骨転移による痛みや骨折のリスクを軽減する動作の体得
  • 脳腫瘍による麻痺や言語障害の改善
  • 脊髄腫瘍や転移による麻痺、排尿障害の改善
  • 抗がん剤治療や放射線治療によって低下した体力・筋力の回復
  • 胸部および腹部を手術したあとの合併症予防
  • 乳がんの手術後に生じる肩関節の運動障害の改善
  • 舌がんや甲状腺がんなど頭頸部のがんの治療後に生じる嚥下障害・発声障害の改善
  • 抗がん剤によるしびれの予防・改善

段階的に考えるリハビリテーション

がんのリハビリテーションは、病期によって以下の4つの目的があります。

  • 予防的リハビリテーション
    がんと診断されてから、手術や抗がん剤治療、放射線治療を受ける前に行うリハビリテーションで、合併症や後遺症の予防を目的としています。
  • 回復的リハビリテーション
    筋力低下や体力低下を起こしやすい治療期に実施するリハビリテーションで、機能回復を目的としています。
  • 維持的リハビリテーション
    がんとともに機能障害が進行している場合に行うリハビリテーションで、運動能力の維持・改善を目的としています。
  • 緩和的リハビリテーション
    積極的な治療が受けられなくなったときに行うリハビリテーションで、患者さんのQOL(生活の質)の維持を目的としています。

欧米ではリハビリテーションをがん医療の重要な一分野として認識し、多くの医療機関が取り組んでいます。日本でも、近年になってがん治療中のリハビリテーションを行う医療機関が増えてきていますが、まだ十分とはいえません。

リハビリテーションを効果的に受けるために

がん治療終了後にできるだけ早く社会復帰をしたいと考えているのであれば、がんと診断されて治療方針が決まった段階でリハビリテーションを受けることを担当医に相談してみましょう。

また、退院後も体力の回復や運動機能回復のためにリハビリテーションの必要性を感じた場合は、担当医と相談しながら、無理のない範囲で継続的なリハビリテーションを受けることを検討してください。

まず、自分が治療を受けた病院で継続的なリハビリテーションが受けられるかどうかを確認します。もし、ほかの医療機関を探さなければならないようであれば、がん相談支援センターなどを活用して利用しやすい病院を紹介してもらうといいでしょう。

 

参考: