切除不能な進行性大腸がんの治療に新たな可能性

国立がん研究センターの共同研究グループは、既存の標準治療後に抵抗性となった大腸がんの患者さんに対して、TAS-102とベバシズマブの併用療法が有効であることを確認しました。大腸がんの患者さんにとって、治療の新たな選択肢になる可能性があるとのことです。

進行性大腸がんとは

まず、進行性の大腸がんについて確認しましょう。

大腸壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の5層からなっています。がんが粘膜や粘膜下層にとどまっている場合は「早期がん」に、固有筋層まで浸潤すると「進行がん」に区分されます。

大腸がんの病期は、がんがどこまで浸潤しているかに加え、転移の有無によって決まります。例えば、直接臓器に浸潤している進行がんでも、遠隔転移とリンパ節転移がなければII期になります。また、粘膜下層にとどまる早期がんだとしても、遠隔転移とリンパ節転移がある場合はIV期に分類されます。

より有効な治療法の開発が求められるIV期大腸がん

全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2016年2月集計)によると、大腸がんの病期別5年相対生存率は、病気がI期の場合は98.8%、II期は91.3%、III期は82.1%となっており、早い段階で発見すれば高確率で完治が期待できることがわかります。しかし、IV期になると5年相対生存率は18.5%とかなり低くなるため、より効果の高い治療法の開発が求められています。

現在の大腸がんの治療法

0期および軽度浸潤のI期の大腸がんは、内視鏡治療が可能です。III期までの内視鏡治療が選択できないケースでは手術が治療の中心となり、リンパ節転移が認められる、あるいは疑われる場合は、リンパ節を切除するリンパ節郭清も行われます。

III期の場合は、手術後の再発を防止するために補助化学療法が行われます。II期の手術後には基本的に補助化学療法を行いませんが、再発リスクが高い場合には実施することがあります。

IV期でも予後の改善には手術が最も効果があるとされるため、可能な限り原発巣や転移巣の摘出が検討されます。転移が腹膜、肝臓、肺などのいずれか1臓器に限られており、手術で完全にがんを切除できた場合には、5年生存率はかなり上がるようです。しかし、手術ができないケースでは、主に化学療法が行われます。

IV期大腸がんの化学療法

患者さんの状態と腫瘍の状態によって、強力な治療ができるケースとできないケースがあります。ここでは、強力な治療の内容を見てみましょう。

  • 一次治療
    FOLFOX(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)やFOLFIRI(5-FU+ロイコボリン+イリノテカン)、CapeOX(カペシタビン+オキサリプラチン)と、分子標的薬であるベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブが併用されます。
  • 二次治療
    一次治療が効かなくなると、二次治療を行います。用いられる薬剤は一次治療と同様ですが、併用する際の組み合わせを変えて投与します。
  • 三次治療
    三次治療では、セツキシマブ、パニツムマブ、レゴラフェニブなどが考慮されます。セツキシマブとパニツムマブは、イリノテカンとの組み合わせて用いられることもあります。

治療の新たな選択肢となる?TAS-102とベバシズマブの併用療法

国立がん研究センターは2014年2~7月に、標準治療に対して抵抗性となった大腸がんの患者さん25名にTAS-102とベバシズマブの併用療法の医師主導治験を行いました。その結果、約70%もの患者さんに、がんの増大を抑える効果が認められました。さらに、その効果は約5.6カ月間(中央値)持続することも明らかになりました。現在、治療効果や安全性を検証すべく、さらに多くの患者さんを対象にした臨床試験が計画されているとのことです。

なお、TAS-102とベバシズマブは、以下のような薬剤です。

TAS-102

トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を配合した、経口の抗がん剤です。トリフルリジンはDNAに取り込まれることによって抗がん作用を発揮し、チピラシル塩酸塩は体内でトリフルリジンが分解されるのを防ぎます。

日本では2014年5月に承認され、切除不能な進行大腸がんの標準治療薬として世界中で用いられています。

ベバシズマブ

がん組織では、血管内皮増殖因子によって血管新生が促され、酸素や栄養の供給が高められていると考えられています。ベバシズマブは血管内皮増殖因子に対するモノクローナル抗体で、血管内皮増殖因子に特異的に結合し、その働きを阻害することで抗がん作用を示します。

単独で、あるいはほかの薬剤との併用で、大腸がん、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、悪性神経膠腫、非小細胞肺がん(扁平上皮がんを除く)に対する治療薬として、世界中で用いられています。

早い段階のがんに対する治療効果も検証予定

TAS-102とベバシズマブの併用療法は、IV期の標準治療に対して抵抗性となった大腸がんだけでなく、もっと早い段階のがんへの有効性をみる臨床試験も計画されているとのことです。効果の高い治療法の選択肢が増えることは、患者さんにとって朗報となるでしょう。

 

参考: