日本人の肝臓がん・胆道がんはほかの国と違う?

国立がん研究センターなどによる大規模な国際研究により、同じ肝臓がん・胆道がんという診断であっても、特定の地域や人種の症例にしかみられないタイプがあることが明らかになりました。なかには、日本人だけが発症するタイプもあるとのことです。そこで今回は、この新たな発見と今後の肝臓がん・胆道がん治療の可能性についてご紹介します。

日本における肝臓がんと胆道がんの動向

まず、日本における肝臓がんと胆道がんの動向や特徴、現在の治療方法を確認してみましょう。

  • 肝臓がん
    主に、肝炎ウイルスの持続感染が原因で発症します。日本では、肝臓がんの約60%がC型肝炎ウイルス(HCV)、約15%がB型肝炎ウイルス(HBV)によるものと試算されています。死亡率は、男女ともに減少傾向で推移しています。罹患率は、男性が減少傾向にある一方で女性は横ばいとのことです。
  • 胆道がん
    胆道がんは、発生場所によって「胆管がん」「胆のうがん」「乳頭部がん」の3つに分類されます。
    日本は他国に比べて胆管がん・胆のうがんの罹患率が高く、2010年の国内の罹患数は男性が約11,300人、女性が約11,300人でした。また、胆管がんは男性に多く、胆のうがんは女性に多いという特徴があります。胆管がん・胆のうがんの死亡率は、近年減少傾向にあるそうです。
    日本では乳頭部がんを胆道がんに分類して治療にあたっていますが、世界保健機関(WHO)は2010年に独立した疾患と位置づけています。発症率は10万人に1人未満とのデータがあり、希少ながんといえるでしょう。

日本人の肝臓がん・胆道がんに他国と異なるタイプを確認

これまで、肝臓がんと胆道がんは同じタイプのがんとして治療が進められてきました。しかし、近年の研究技術の発展に伴い、それぞれのがんに合わせたより効果的な治療法がある可能性が浮上してきたのです。

今回の研究結果から、肝臓がんはC1、C2、HCC-C3、HCC-UMの4タイプに、胆道がんはC1、C2、ICC-C3、ICC-C4、ICC-UMの5タイプに分類できることが明らかになりました。C1タイプとC2タイプが、肝臓がんと胆道がんの両方に共通してみられたほか、以下のような興味深い点がありました。

  • アジア地域の症例のみにみられるC2タイプ
    C2タイプは日本やタイといったアジア地域の症例だけにみられ、欧州の症例では明確に確認されませんでした。炎症や肥満の影響を大きく受け、胆汁酸代謝亢進という特徴があるそうです。
  • 日本人の胆道がん症例のみにみられるICC-UMタイプ
    ICC-UMタイプは日本人の胆道がんだけにみられ、他国の症例には認められませんでした。遺伝子変異の発現部位に特徴があり、ほかのタイプよりも予後が良好だとされています。

より最適な治療法の確立や新薬の開発に期待

前述の研究結果が今後の治療にどのように役立つのか、その可能性についてご紹介します。

  • 簡単な検査で患者さんごとに最適な治療の提供が可能に
    バイオマーカーを用いた簡単な検査で肝臓がんや胆道がんのタイプを判定し、患者さんごとに最適な治療を選択する個別化医療を実現できる可能性があります。
  • がんの発症の特性に沿った予防法や治療法の確立の可能性
    肝臓がんや胆道がんのタイプの違いは「人種」によるものなのか、それとも食生活をはじめとした「環境」によるものかを明らかにすることで、ゲノムデータやライフスタイルなどの要素を考慮した治療法・予防法の開発が期待されています。
  • 新薬開発の期待
    現在、治療に用いられている薬剤は、欧米の製薬会社が欧米人の症例サンプルをもとに臨床開発したものです。欧米人とアジア人のがんのタイプを解析した情報が蓄積されることで、日本人のがんの治療により適した薬剤の開発が可能になると考えられています。

がん治療の最新情報に注目しよう

研究技術の進展にともない、がんについてより詳しいことがわかってきました。今後の研究の展開や臨床試験の評価によっては、これまで最適と考えられていた検査や治療が別の方法に変わる可能性があります。自分に適した治療法を選ぶためにも、がん治療の最新情報に注目してみてください。そして、気になる情報がある場合は、その信憑性について担当医師や看護師などに確認するようにしましょう。

 

参考: