耳に現れる抗がん剤の副作用の症状と対処法

治療に用いられた抗がん剤は全身をめぐるため、目や耳などの感覚器にも副作用の症状が生じる可能性があります。しかし、その症状が別の原因によるものだと勘違いしてしまうケースがあるようです。そこで今回は、抗がん剤治療によって耳に起こる副作用をピックアップしてご紹介します。

耳に副作用が生じやすい抗がん剤とそのメカニズム

がんの治療中に、難聴、めまい、耳鳴り、ふらつき(平衡感覚の異常)が起きたときに、「治療で疲れているから」「吐き気でよく眠れなかったせい」などと決めつけると、その症状が副作用であることを見過ごしてしまうかもしれません。耳に起こる副作用の症状は、早い段階で適切な治療を受けないと回復が困難になる場合があるので注意が必要です。

そのため、抗がん剤治療を受けている人や受ける予定のある人は、自分の治療に用いられる薬剤の種類と耳に起こる副作用の症状について、理解を深めておきましょう。

耳に副作用が生じやすいといわれている薬剤の種類や発症のメカニズム、症状の出現時期などについて、以下でみていきましょう。

  • 耳に副作用が生じやすい(聴覚的毒性がある)薬剤
    聴覚的毒性があるとされている抗がん剤はプラチナベースのもの、特にシスプラチンやカルボプラチンが挙げられます。これらの薬剤によって難聴の副作用症状が現れる頻度は、数%から30%ほどとのことです。また、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、ブロモクリプチン、ナイトロジェンマスタード、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブにも聴覚的毒性があるとの報告があります。
  • 発症のメカニズム
    耳に副作用の症状が出現するのは、音の振動を感じ、電気信号に変えて脳に伝える役割を担う蝸牛(かぎゅう)有毛細胞や、体のバランスを司る三半規管や前庭がある内耳が、薬剤によって損傷を受けるためだと考えられています。
  • 症状
    難聴をはじめ平衡感覚の変化(めまい、ふらつきなど)や耳鳴りがありますが、平衡感覚に関する症状の出現頻度は低いようです。
    難聴の症状は両耳に生じることが多く、はじめは電子音のような高音域が、そして徐々に低音域も聞こえにくくなります。また、耳鳴りは難聴の前触れの症状と考えられています。異変を自覚したときや、周囲の人から指摘されたときは、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。
  • 症状の出現時期
    副作用症状の出現時期は、初回治療の直後の場合もあれば、数回治療を受けたあとの場合もあります。一般的な傾向としては、薬剤の投与量と回数が増加するにつれて副作用の発症率が高まるようです。
    なお、難聴の症状は約半数が自然回復すると考えられています。ただし、薬剤の再投与によって症状が悪化すると、回復も難しくなるようです。
  • 副作用症状の治療法
    抗酸化剤やビタミン剤、ステロイド剤、ホスホマイシンなどが投与されますが、必ずしも効果があるわけではありません。また、抗がん剤治療を休止・中止する場合もあります。
    また、難聴の症状が改善するまでは、補聴器を使うことを検討するといいでしょう。

耳に起きる副作用の注意点

耳に起きる副作用に早めに気づいて医療機関を受診するためには、あらかじめ家族や知人に症状について説明し、協力をお願いすることが大切です。例えば、抗がん剤治療を受けたあとに「会話が少なくなる」「呼びかけてもなかなか気づかない」「テレビやラジオなどの音量が大きくなる」「ベル、ブザー、着信音などに気づかない」といった変化がみられたときは、すぐに教えてもらうようにしてください。

難聴がある場合は、他者とのコミュニケーションや、テレビやラジオからの情報収集が難しくなります。そうなると社会との関わりが減少し、孤立感や抑うつ、不安といった心理的影響がある可能性を認識しておきましょう。また、難聴は平衡感覚にも影響を及ぼし、特に高齢者は転倒の危険性が高まるので注意が必要です。

めまいが強いときは、事故やけがを防ぐために1人での外出は控えましょう。可能であれば、家族や知人に送迎を依頼し、それが難しい場合は介護タクシーなどの利用を検討してください。

早期受診で症状と原因の確認を

時間を追うごとに症状が顕著になる場合や悪化する場合は、がまんすることなくすぐに医療機関で受診してください。抗がん剤の副作用とは無関係の病気の可能性もあるので、症状やその原因をきちんと確認することは非常に重要です。

また、がんの治療を受けている医療施設が遠方の場合は、電話で相談して助言を受けましょう。状況に応じて最寄りの耳鼻咽喉科の紹介を受けたり、受診日の調整をしてもらったりできるはずです。

治療後、しばらく経ってから難聴などの副作用が起こり、耳鼻科を受診するという場合には、過去の抗がん剤治療の内容(使用薬剤、投与量、期間など)を忘れずに医師に伝えてください。

副作用に関する理解を深め万一の事態に備えよう

抗がん剤治療によって難聴の副作用が生じた場合は、適切な治療を受けないと回復が見込めなくなる可能性があります。耳に現れる副作用についてよく理解し、万一のときにすぐ適切な治療を受けられるような備えをしておきましょう。

 

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