日光浴とがんの関係を探る

日焼けをしすぎると、皮膚がんのリスクが高まるといわれています。しかし、日光浴には体内時計の調整やビタミンDの生成といった、健康に必要な作用があるのも事実です。それでは、日光浴とがんにはどのような関係があるのでしょうか。日光を浴びないほうがいいのか、それとも浴びたほうがいいのかについて探ってみましょう。

太陽光が人の体に与える影響

太陽光を浴びることへの意識は、日本と北欧社会とではかなり異なります。日本では太陽光を浴びすぎて日焼けをすると皮膚にダメージが残り、がんの発症リスクが高まると考えられているため、積極的に日光浴をする人は少ないようです。特に女性は、美容の面から日光を避ける傾向があります。一方、年間を通して日照時間の少ない地域、特に北欧の人々は適度な日光浴を習慣としています。

太陽光が人間の体にどのような影響をもたらすのか、以下で確認してみましょう。

肌へのダメージ

太陽光に含まれる目に見えない光のひとつに、紫外線があります。波長によって3種類に分類され、長いものから順にUV-A、UV-B、UV-Cと呼んでいます。このうち地表まで届くのはUV-AとUV-Bで、UV-Cは空気中の酸素分子とオゾン層に遮断されます。

長時間、太陽光を浴びると肌が赤く焼けたり、水ぶくれができたりしますが、その主な原因となるのがUV-Bです。しかしUV-BはUV-Aに比べると波長が短いので、日傘や窓ガラスなどで防御できます。

UV-AはUV-Bに比べ、肌に急激な変化を与えません。しかし、肌の奥まで届くといわれ、シミやシワの原因になることがわかっています。

また、UV-Aには雲や窓ガラスを通り抜けやすい性質があるため、たとえ室内でも日当たりのいい場所では肌がダメージを受けることになります。

ビタミンDの生成

太陽の紫外線を浴びると、皮膚内でビタミンDが生成されます。ビタミンDは、骨の生育に欠かせないカルシウム代謝を正常に保つ働きをする栄養素です。また、免疫力の向上にも役立っています。

さらに最近では、ビタミンDが細胞核内の受容体と結びついて特定の遺伝子を活性化し、正常な細胞の分化や異常細胞の細胞死などを誘導することがわかってきました。つまり、ビタミンDが不足すると細胞の分化誘導が適切に行われないため、がんの発症リスクが高まったり、がん細胞の増殖が進んだりすると考えられるのです。

このように、ビタミンDは健康維持に大きな役割を果たしていますが、多くの日本人に不足しているそうです。その理由として、紫外線が有害であるとの認識が定着していることが挙げられます。特に若い女性は、美容面への影響を気にして紫外線を避ける傾向が強いといえるでしょう。

体内時計のリセット

朝、起きたあとに日光を浴びることで体内時計がリセットされ、日常生活を送るうちに乱れたリズムが修正されます。

体内時計が正しく機能していると、睡眠を促すメラトニンというホルモンが正常に分泌されます。メラトニンは免疫機能にも関わり、疲労回復や病気に対する抵抗力維持の効果があると考えられています。

また、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンも、太陽光を浴びることで分泌が高まります。セロトニンは精神の安定を保つ脳内ホルモンで、ストレス耐性の向上や自律神経を調整する作用があるといわれています。

毎朝15分~30分の日光浴が理想

国立環境研究所と東京家政大学の研究チームによって、成人が健康な生活を維持できるだけのビタミンDを生成するために必要な日光浴の時間が計算されました。この計算は、12月のよく晴れた日の正午に顔と両手の甲を露出させた状態を想定しています。

その結果、札幌は139分、つくばは41分、那覇は14分となりました。そして、皮膚に有害な影響が及び始めるのは、札幌が227分、つくばが98分、那覇が42分と、それぞれ約2~3倍の時間が見積もられています。

また、環境省の「紫外線環境マニュアル2008」によると、平均的な食事をとっていれば、両手の甲ぐらいの面積が15分ほど日光に当たる程度、または30分ほど日影で過ごす程度で、1日に必要な量のビタミンDが得られるとされています。

紫外線の量は、季節や時間帯によって変化します。1日のうちで紫外線の量が多くなるのは、太陽が頭上近くに昇る10~14時です。紫外線量の情報は天気予報やインターネットでチェックできるので、上手に日光浴をして健康維持を図りましょう。

 

参考:

かん患者さんは朝の日光浴を|e-クリニック