
2017.07.15
予防
食生活が健康寿命と死亡リスクに与える影響
食習慣と疾病・死亡リスクとの関連は、多くの研究によって示されています。そして、国立がん研究センターが実施した調査研究では、個人の食生活が健康寿命だけでなく、がん・脳血管疾患・心疾患による死亡リスクにも影響を与えることが明らかになりました。そこで今回は、がんの治療・療養中に理解しておきたい、食生活と健康寿命に関する最新の研究結果をご紹介します。
3種類の食事パターンと死亡リスクの関連を調査
今回の調査研究は、国内10カ所の保健所管内に居住する40~69歳の方を対象に行われました。1995年と1998年に食事調査票を配布し、それに回答した約8万人(男性36,737人、女性44,983人)の状況を2012年まで追跡調査を実施。食事調査票の回答結果から、食品・飲料134項目の摂取量によって3種類の食事パターンを抽出し、死亡リスクとの関連性を分析しました。なお、この食事パターンは今回の研究上の分類です。以下で3種類それぞれについてみてみましょう。
- 健康型
緑茶、野菜・果物、いも類、大豆製品、きのこ類、脂の多い魚、海そう類などの摂取量が多いパターン。 - 欧米型
コーヒー、果物ジュース、肉類・加工肉、パン、マヨネーズ、乳製品などの摂取量が多いパターン。 - 伝統型
みそ汁、ご飯、漬け物、魚介類、果物などの摂取量が多いパターン。
各食事パターンと死亡リスクの関係は?
調査対象者が摂取した食品・飲料によってスコアがつけられ、3種類の食事パターンをそれぞれ4つのグループに分類しました。そして、約14.8年間の追跡調査期間中に発生した死亡を「全死亡」および「がん死亡」「循環器疾患死亡」「心疾患死亡」「脳血管疾患死亡」に分け、各食事パターンとの関連性が詳しく分析したのです。その結果は、以下のようになりました。
- 健康型食事パターンは「全死亡」と「循環器疾患死亡」のリスクが低下
健康型食事パターンのスコアが高いグループは、低いグループに比べて全死亡のリスクが約2割、循環器疾患死亡のリスクが約3割低下しました。 - 欧米型食事パターンは「全死亡」「がん死亡」「循環器疾患死亡」のリスクが低下
欧米化型食事パターンでは、調査項目の食品摂取スコアが高いほど、全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡のリスクが低下しました。 - 伝統型食事パターンは死亡リスクに影響を与えない
今回の調査では、伝統型食事パターンと死亡リスクの関連はみられなかったそうです。
なお、これは134項目の食品・飲料について調査した結果なので、調査対象となった人や食品が変わると結果も変わってくる可能性があります。
食生活で心がけたいポイント
今回の食事パターンと死亡リスクに関する研究結果をふまえ、食生活において心がけたいポイントについてご紹介します。
- 多価不飽和脂肪酸とミネラルを多く摂取する
健康型食事パターンのスコアが高いグループの全死亡のリスクが低い理由は、多価不飽和脂肪酸とミネラル(カルシウム、カリウム、マグネシウムなど)の摂取が多いことにあると考えられています。これらの栄養素は、循環器疾患のリスクを低下させることが報告されています。 - 肉類・加工肉の過剰摂取を避ける
肉類・加工肉の過剰な摂取は、全死亡のリスク上昇との関連が報告されています。しかし、今回の調査結果では、肉類・加工肉を含む欧米型食事パターンにおいて全死亡や循環器疾患死亡のリスクが低下しています。その理由としては、日本人は欧米人に比べて肉類の摂取が少ないことや、欧米型食事パターンにおける肉類以外の食品(コーヒーや牛乳・乳製品など)の作用が影響していることが考えられます。 - 塩分摂取量を抑える
欧米型食事パターンのスコアが高いグループには、塩分の摂取が少ないという特徴がみられました。これが循環器疾患死亡のリスクを低下させた要因のひとつであると指摘されています。また、欧米型の食事パターンは、がんによる死亡リスク低下にも関連していましたが、がんは発症部位によって関連のある栄養や食事因子が異なるため、さらなる調査が必要とされています。
自分の食事パターンを振り返ってみよう
多くの研究から、食生活の改善ががんの予防につながると示唆されてきました。また、バランスのとれた食事は、がんだけでなくさまざまな疾患の予防や健康寿命の延長につながるといわれています。しかし、いざ食生活を見直そうとしても、何から手をつければいいのかわからない場合があるでしょう。そのようなときは、自分の食生活が今回ご紹介した研究のどの食事パターンに当てはまるのかを振り返ってみることで、改善のポイントが見えてくるかもしれません。さらに、主治医や担当看護師などの専門家に相談すれば、適切な助言が得られるはずです。
参考:
- 食事パターンと死亡リスクとの関連について|国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
- 食生活とがん|がん情報サービス
- 予防医学~病気にならないために~第十回「がんの原因になる。予防にもなる。食生活の選択が分かれ道です。」 |みつばち健康科学研究所
- Dietary patterns and all-cause, cancer, and cardiovascular disease mortality in Japanese men and women: The Japan public health center-based prospective study.|PubMed