新開発されたC型肝炎ウイルス感染予防ワクチンの可能性

2016年10月に日本医療研究開発機構らの共同研究により、世界で初めて実用化の可能性が高いC型肝炎ウイルスワクチンの開発に成功したことが報告されました。今回はC型肝炎ウイルスへの感染予防の重要性とともに、新たなワクチンの特徴と可能性についてご紹介します。

C型肝炎ウイルスの感染予防が重要な理由

肝がんは世界で5番目に患者数の多いがんで、わが国でも毎年3万人を超える患者さんが亡くなっています。そして、肝がんの最大の原因とされるのが、肝炎ウイルスへの感染です。

肝炎ウイルスに感染した状態が続くと、肝細胞では長期に渡って炎症と再生が繰り返されます。すると、遺伝子の突然変異が蓄積し、肝がんに至ると考えられているのです。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなどさまざまな種類がありますが、肝がんの発症に関与するのはB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの2種類が知られています。

肝細胞がんの患者さんのうち、約15%がB型肝炎ウイルスに、約60%がC型肝炎ウイルスに持続感染していると見積もられています。また、国立がん研究センターが肝炎ウイルス感染者の肝がんのリスクを調査したところ、非感染者に比べて28.2倍高いという結果になりました。ケース別では、B型肝炎ウイルスだけの感染者は16.1倍、C型肝炎ウイルスだけの感染者は35.8倍となり、特にB 型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの両方に感染している場合のリスクは46.6倍にもなったそうです。

すなわち、肝炎の予防と確実な治療が、肝がんの予防に大きく寄与するのです。

有効性と安全性が示された新たなワクチン

これまでもさまざまな研究がなされてきましたが、有効性が高く安全性も確保されたC型肝炎ウイルスワクチンの開発には至っていません。そのようななか、2005年に世界で初めて報告された培養細胞によるC型肝炎ウイルスの増殖システムを応用する形で研究が続けられ、今回のC型肝炎ウイルスワクチンの開発に結びつきました。

この新たなワクチンは、人工的に増殖させたC型肝炎ウイルスの粒子に紫外線を照射し、感染能力を失わせた(不活化させた)ものを抗原にしています。ワクチンの評価実験では、免疫応答を高める作用を持つK3-SPGという補強剤(アジュバント)とともに、小型霊長類モデルであるコモンマーモセットに接種しました。その結果、C型肝炎の感染・発症予防に有効とされる中和抗体と細胞性免疫を、両方とも効率よく誘導できることが明らかになりました。臓器不全などの副作用(有害事象)も、検証の結果認められなかったそうです。

新たなワクチンの実用化に期待

今回の研究成果によってC型肝炎ウイルスワクチンの有効性と安全性が示され、実用化の可能性が期待されています。実際の実用化に向けた課題としては、ワクチンの抗原となる不活化C型肝炎ウイルス粒子の大量合成技術の開発が挙げられます。また、ワクチンの有効性と安全性を確保するために、接種対象者、使用方法、使用条件などの規則を適切に設定する必要があります。

近年では、C型肝炎ウイルスの増殖を阻害する直接作用型の抗ウイルス薬が開発され、C型慢性肝炎の治癒率が向上しています。しかし、この抗ウイルス薬を用いた治療は高額なため、今回開発された新たなC型肝炎ウイルスワクチンは医療費の軽減も期待されるところです。

無自覚な感染を早期発見するためにも検査を受けよう

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していても、自覚症状がないケースがあります。そうなると、感染に気づかないまま長期間過ごす可能性があり、知らず知らずのうちに肝がんのリスクを高めることにもなりかねません。感染を早期発見して治療をスムーズに受けるためにも、一度は肝炎ウイルス検査を受けることをおすすめします。

 

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