増加傾向にある希少がん・神経内分泌腫瘍について

腫瘍のなかには、希少がんと呼ばれる珍しい種類のものがあります。そのひとつである神経内分泌腫瘍は、発生の頻度が10万人に5.25人と非常にまれな腫瘍ですが、罹患率が年々増加傾向にあるそうです。そこで今回は、神経内分泌腫瘍がどのような病気なのかみていきましょう。

全身に発生する神経内分泌腫瘍

神経内分泌腫瘍は、体全体に広く存在する神経内分泌細胞から発生します。内分泌臓器であるすい臓などだけでなく、さまざまな臓器に発生することが知られており、悪性腫瘍全体の1~2%を占めるといわれています。

アメリカの疫学データによると、神経内分泌腫瘍の発生部位は肺が27%、消化器が57.8%を占めています。さらに、消化器の内訳は以下のようになっています。

  • 直腸:17.2%
  • 空腸/回腸:13.4%
  • すい臓:6.4%
  • 胃:6.0%
  • 結腸:4.0%
  • 十二指腸:3.8%
  • 盲腸:3.2%
  • 虫垂:3.0%
  • 肝臓:0.8%

特に、すい臓に発生した場合には膵内分泌腫瘍、胃や腸の場合には消化管カルチノイドと呼ばれることがあります。また、甲状腺や副甲状腺、下垂体、副腎、胸腺などにも発生するケースがあります。

神経内分泌腫瘍の分類

神経内分泌腫瘍の種類は、病理組織像やホルモン症状の有無、遺伝性など、さまざまな側面から分類されます。ここでは病理組織学的分類と、ホルモン症状の有無による分類について確認してみましょう。

病理組織学的分類

神経内分泌細胞の腫瘍は、通常はWHO分類(2010年)に基づいた病理診断によってNET(Neuroendocrine tumor:神経内分泌腫瘍)とNEC(Neuroendocrine carcinoma:神経内分泌がん)に分類されます。さらに、NETはグレードによってNET G1とNET G2に分けられ、G3(グレード3)に相当するのがNECです。

NETの腫瘍細胞は正常細胞に似ており、増殖能が低く悪性度は低~中とされています。それに対し、NECの腫瘍細胞は悪性度が高く、正常細胞の機能をほとんど保持せず増殖能が高いとされています。NETはまれな疾患ですが、NECはそれ以上に発生頻度が低く全NETの2~13%といわれています。

診断マーカーとしては、ソマトスタチン受容体、クロモグラニンA、シナプトフィジン、CD56などがあり、病巣の検出などに用いられることがあります。

そのほか、病巣の部位を調べるためにCT、MRI、内視鏡的超音波断層検査などの画像診断も用いられています。病巣が1cm以下と小さい場合には、選択的動脈内刺激薬注入法(SASI Test)が有用といわれています。

ホルモン症状の有無による分類

ホルモン産生症状の有無によって機能性(症候性)NETと非機能性(非症候性)NETに分類されます。

機能性NETは、腫瘍が分泌するホルモンがさまざまな症状を引き起こします。症状は、以下のように産生されるホルモンによって異なります。

  • ガストリンが産生される場合
    消化性潰瘍、逆流性食道炎、脂肪便
  • ソマトスタチンが産生される場合
    糖尿病、胆石、脂肪便
  • インスリンが産生される場合
    低血糖
  • グルカゴンが産生される場合
    糖尿病、貧血、体重減少、融解性移動性紅斑

非機能性NETは症状がありませんが、腫瘍が大きくなってほかの臓器を圧迫したり出血したりするようになると症状が出現します。しかし、そのようなケースでは機能性NETにはなりません。

神経内分泌腫瘍の治療法

神経内分泌腫瘍の治療法は、グレードによって異なります。以下で簡単に確認しましょう。

NET G1およびNET G2

最も有効とされるのは外科手術で、現時点では根治を期待できる唯一の治療法です。

消化器が原発となる神経内分泌腫瘍の10~50%は肝転移を伴うといわれ、肝転移病巣への局所療法が行われることがあります。治療法は肝転移の場所や数によって異なり、肝切除のほか、ラジオ波焼灼術、放射線療法、肝動脈化学塞栓術などが用いられています。

また、近年では以下のような薬物療法も開発されています。

  • ソマトスタチンアナログ
  • スニチニブ
  • ストレプトゾシン
  • エベロリムス
  • 放射性核種標識ペプチド療法

NEC(G3)

神経内分泌腫瘍のなかでも増殖能や悪性度が高いNECの治療法は、NETとは異なる疾患として考えられています。しかし、NECは非常にまれな病態のため、有効性を検証する臨床試験が実施されたことがありません。そのため、疾患概念に類似性のある小細胞肺がんに準じた治療法が推奨されており、シスプラチンとエトポシドの併用療法、シスプラチンとイリノテカンの併用療法などが行われているようです。

治療後は定期的な検査を欠かさずに

神経内分泌腫瘍のうち、NETは転移がなければ外科手術で完全に切除することで治癒が期待できます。しかし、数年~10年後に再発が見つかるケースがあるので、長期間の経過観察が必要です。半年から1年に1回の定期検査を欠かさないようにしてください。

 

参考: