がん治療と仕事の両立に欠かせないものとは

がんになったとしても、自分の生き方を貫きたいと考える人が増えています。それは仕事に関しても同様で、経済的な自立という面だけでなく、精神的な自立や自分の夢を実現するために好きな仕事を続けたいと、多くの人が望んでいるのです。

しかし、患者さん本人の気持ちと企業の考えには少しズレがあるようです。2017年に発表された内閣府の調査結果によると、およそ32万人のがん患者さんが働きながら治療を受けています。しかしその一方で、がんと診断された人の3割以上が依願退職や解雇になっているそうです。

そこで今回は、がん治療と仕事の両立について考えてみましょう。

治療と職業生活の両立を目指したガイドライン

厚生労働省は2016年2月に「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を発表しました。これは、がんや脳卒中などの疾病を抱える従業員に事業場が適切な措置や配慮を行うことで、治療と職業生活を両立できるような環境の整備を目指したもので、以下の3つのポイントが掲げられています。

  • 治療と職業生活の両立支援を行うための環境整備
  • 治療と職業生活の両立支援の進め方
  • がんに関する留意事項

しかし、十分な環境が整っているとはいえないのが実情です。

働くがん患者さんを取り巻く状況

がんの患者さんが仕事を続けるうえで、どのような問題が生じるのでしょうか。検診で初期の胃がんが発見されたケースをもとに考えてみましょう。

まず、治療のために3週間の入院をして手術を受けることとなります。退院後に職場復帰をした患者さんは、職場に迷惑をかけてしまったぶんを取り戻すために、今まで以上に頑張ろうと考えるでしょう。

しかし、手術後には再発防止のために化学療法や放射線治療が必要です。入院の必要はないとはいえ、治療のスケジュールに沿って定期的に通院しなければなりません。そうなると、治療のたびに有給休暇を取ることになるでしょう。また、抗がん剤の副作用によっては、就業時間内でも小まめに休憩しなければなりません。

さらに、治療の続く間は感染症のリスクがあるため、人混みを避けるようにと指示を受けることがあります。その場合、外回り営業のような外出が中心となる仕事を続けるのは難しいでしょう。

このような状況が続くと、会社から「まだ治っていない」「いつ辞めるかわからない」「継続的な仕事は頼めない」といった判断を下されるケースが考えられます。患者さん自身も、「いつも周りに迷惑をかけている」「辞めたほうがいいのではないか」などと思い込んでしまうかもしれません。

周囲の理解・協力が働くがん患者さんの手助けに

2015年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した「がん治療と仕事の両立」調査によると、がんになったあとに転職した人はその理由として、働き続けるのが体力的に難しかったことや、治療と仕事を両立するために活用できる制度が会社に整っていなかったことを挙げています。

一方で、がんになったあとも同じ会社で働き続けている人は、上司や同僚の理解・協力があったことや、労働時間や勤務場所が柔軟だったことが、転職せずに済んだ理由としています。

患者さんと会社の双方に努力が必要

がんは早期発見ができれば、多くのケースで回復が見込めます。これは、たとえがんになっても自分らしく生き続け、夢を実現できることを意味しています。

しかし、会社はがんになった社員がどの程度働き続けられるのか、どのような内容の仕事に対応できるのかという部分が不明瞭だと、雇用の継続に不安を抱くこととなります。そこで必要になるのが、患者さんの希望を実現しつつ会社の不安を解消する努力です。

患者さんの立場としては、治療を始めるときから職場復帰の希望を医師に伝え、治療の方法やスケジュール、予想される体調の変化とその対応策などを確認しておきましょう。そして、早い段階から会社に相談することをおすすめします。

会社側には、がんの患者さんが働くための環境整備や経済的な支援が期待されています。また、がん患者さんが利用できる公的制度の把握も求められるところです。

 

参考: