治療後の胃がんの再発生リスクを予測する新たな診断法

早期胃がんの内視鏡治療後に、1年に2.0~2.5%という一定の確率で別の胃がんが発生することが明らかとなっています。そのリスクを把握することは、胃がんの予防や早期発見・早期治療につながり、より適切な治療の選択やライフスタイルの見直しに役立つでしょう。そして、2016年12月には、胃がん治療後に再度新たな胃がんを発症するリスクを診断する方法が開発されました。今回は、その詳細と今後の見通しについてご紹介します。

治療後に再度胃がんが発生する要因

これまでも、ピロリ菌(正式名:ヘリコバクター・ピロリ)の感染が胃がんのリスクとなることが指摘されてきました。今回の研究では、胃がん治療後に再度発生する新たな胃がんには、ピロリ菌の感染が確実に影響していること、そして、「遺伝子のメチル化異常」が強く関連していることが明らかになりました。

遺伝子のメチル化異常は正常組織に蓄積し、それがあるレベルに達することで胃がんが発症すると考えられています。さらに、遺伝子のメチル化異常を促進する要因のひとつに、ピロリ菌の作用があるとのことです。

  • ピロリ菌
    ピロリ菌は胃がんのリスク要因のひとつで、日本人の5割弱が感染しています。特に、衛生環境のインフラが整備されていない時代に幼少期を過ごした60歳以上の人の感染率が高く、60~70%ほどになるようです。ピロリ菌の除菌は、胃がん予防の一環として推奨されており、さまざまな取り組みが行なわれています。例えば、自治体の集団検診では、「胃がんリスク検診」の項目のひとつとして、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を任意で実施しています。また、感染している場には、2度目の除菌までは国民健康保険が適用されます。
  • 遺伝子メチル化異常
    遺伝子は、正常な細胞をつくりだすための設計図にあたります。遺伝子に何らかの異変が生じると、増殖抑制機能が壊れた細胞がつくりだされたり、細胞が正常に機能しなくなったりして、がんをはじめとした病変の原因となります。しかし、遺伝子メチル化異常では、遺伝子の設計図に異変がないにも関わらず、正常な増殖抑制機能をもつ細胞をつくりだせなくなってしまいます。そして、遺伝子の突然変異と同じようにがんの原因となるのです。

新たな発がんリスク診断のメリット

従来の胃がんのリスク診断では、ペプシノゲン検査とピロリ菌抗体検査が行われています。これらの検査では、ピロリ菌の感染状況や胃粘膜の萎縮の程度を把握するのみで、詳細な胃がんリスクの蓄積状況までは判定することができません。

遺伝子のメチル化異常は、ピロリ菌感染などで生じる慢性炎症が原因となって発生し、正常な胃粘膜の組織に蓄積していきます。この蓄積の程度を測定することで、胃がんの治療後に新たな胃がんが発生するリスクを予測するのが、今回新たに開発されたな診断方法です。

開発にあたっては、内視鏡治療後にピロリ菌除去を受けた早期胃がん患者を対象に、がんがない胃粘膜のメチル化異常の程度が毎年測定されました。5年間の経過観察を続けた結果、遺伝子のメチル化異常の程度が強いほど、新たな胃がんを発生するリスクが高いことがわかりました。遺伝子のメチル化異常の程度が最も高いグループと最も低いグループを比較すると、胃がんの再発生のリスクに3倍もの差があったそうです。

今回開発された診断方法によって患者さんごとに適正な検診が可能となり、胃がんの早期発見・早期治療に結びつくと期待されています。

胃がん以外への応用にも期待

遺伝子のメチル化異常を測定する発がんリスクの診断は、実用化に向けて全国の施設にて臨床研究が実施されています。また、メチル化異常は胃がんだけでなく、慢性炎症に起因するほかのがんの原因になると考えられ、肝炎ウイルスや脂肪肝に起因する肝臓がんや、潰瘍性大腸炎由来の大腸がんなどへの応用も期待されています。

継続的ながん検診の受診が重要

今回の開発研究から、遺伝子のメチル化異常の蓄積度合いとがんの発生率に関連があることが明らかとなりました。そのため、がん検診は継続的に受けることが重要です。早期発見の可能性を高めるだけでなく、がんの発症リスクを意識する機会となるでしょう。

 

参考: