子宮肉腫の拡散メカニズムが判明か?

子宮に発生する悪性腫瘍には、子宮体がんや子宮頸がんのほか、難治性で極めて予後が悪い子宮肉腫があります。この子宮肉腫に関する最新の研究結果によると、がん細胞が遺伝子のスイッチを操作し、ほかの組織になじみやすくして拡散性を高めているとのことです。

まったくの別物である子宮体がんと子宮肉腫

婦人科のがんで最も多くみられるのが子宮がんです。子宮がんは、子宮の内側の子宮内膜から発生する子宮体がんと、子宮頸部や頸管の上皮から発生する子宮頸がんに大きく分けられます。

さらに、子宮の筋肉の層から子宮肉腫が発生するケースもあります。子宮肉腫は子宮体部にできるケースが多い悪性腫瘍ですが、子宮体がんとはまったく違う病気です。

子宮肉腫の特徴

子宮肉腫は、子宮体がんの2~5%と婦人科の悪性腫瘍のなかではまれな病気です。癌肉腫、平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫の順に発生頻度が高く、これら3つが子宮肉腫の90%以上を占めています。

子宮体部には、生命を脅かさない良性腫瘍の子宮筋腫ができることも多くあります。しかし、子宮筋腫と子宮肉腫の判別は難しく、組織診断時に苦慮する例が少なくないといわれています。

子宮肉腫のリスク要因

子宮体がんのリスクとしては、肥満や糖尿病、高血圧、高い女性ホルモンレベルなどが指摘されていますが、子宮肉腫のリスク要因についてはよくわかっていません。ただし、骨盤内に放射線照射を受けたことがある人に多く発生するといわれています。

子宮肉腫の症状

特有の症状はなく、子宮がんと同様に閉経後や生理期間以外に出血がみられることがあります。また、閉経しても子宮が大きくなってくる場合は、子宮肉腫の疑いがあるようです。出血、腹痛、下腹部の違和感などがある場合は、念のために婦人科を受診することをおすすめします。

子宮肉腫の治療法

外科療法を主流に、放射線療法や化学療法を併用することがあります。また、内分泌療法が有効な症例もあるようです。子宮体がんの場合は早期に治療を始めるほど治療成績がよいといわれていますが、子宮肉腫は極めて予後不良とされています。

子宮癌肉腫の侵攻性の高さを解明?

ワシントン大学医学部の研究チームの研究報告で、がん細胞が自らの出自を示す細胞タイプのスイッチをオン・オフに切り替えることでほかの臓器や組織との親和性を高め、急速に拡散していることが示唆されました。遺伝子そのものを変化させるのではなく、遺伝子の修飾を利用しているのだそうです。

この「DNAメチル化修飾」について詳しくみてみましょう。

DNAのメチル化修飾

高等真核生物では、DNAのメチル化修飾は、遺伝情報の発現抑制に利用していると考えられています。ひとつが動き回る遺伝子レトロトランスポゾンの制御、もうひとつが組織特異的な遺伝子の発現制御の補助機能としての役割です。

ヒトを含めた哺乳類は、それぞれの組織に特異的な遺伝子を発現させて、複雑な体制を実現させています。血清アルブミンは肝臓だけで発現し、インシュリンは脾臓でのみ発現しているのが、その一例です。そして、発現しない組織特異的な遺伝子は、DNAメチル化修飾によって発現できない状態になっているのが一般的です。つまり、遺伝子の発現する場所と時期を厳密に制御するために、DNAのメチル化が利用されていると考えられています。

がん抑制遺伝子のスイッチにも影響が?

ワシントン大学の研究チームは、子宮癌肉腫のサンプルからメチル化修飾がどこに起きているかを調べ、正常な子宮の細胞と比較しました。その結果、腫瘍の場所によってメチル化修飾が多いもの少ないものが存在することがわかり、これがこのがん細胞の拡散性を説明するものとされました。

また、腫瘍を抑えるいくつかの遺伝子のスイッチがオフになっていることもわかりました。これらの遺伝子のスイッチをオンに戻すことができれば、子宮癌肉腫の侵攻を食い止めることになると期待されるそうです。

より詳細な研究の進展に期待

ワシントン大学の研究者の話では、過去の技術ではDNAのメチル化などの変化をゲノムレベルで調べるのは難しかったとのこと。今後の科学技術の進歩によって、より詳細な研究の進展が期待されます。

 

参考: