卵巣がんの治療を困難にする腹膜播種性転移のメカニズムが明らかに

国立がん研究センターと名古屋大学の共同研究が、卵巣がん治療の妨げとなる腹膜播種(ふくまくはしゅ)性転移のメカニズムを世界に先駆けて解明しました。そこで今回は、最新の研究成果とともに卵巣がん治療の今後の展望についてご紹介します。

卵巣がんによる腹膜播種性転移とは

卵巣がんは初期の自覚症状が乏しいため、発見された時点でかなり進行しているケースが40~50%もあるそうです。これは、卵巣がほかの臓器と密接しており、がん細胞が周囲に浸潤・転移しやすいことが一因となっています。

また、卵巣がんには、進行すると腹膜播種を起こすという特徴があります。腹膜播種とは、腫瘍の膜が破れてがん細胞がばらまかれるように、お腹の内側を覆う腹膜へと広がった状態です。腹膜播種によって腹膜に散らばったがん細胞を切除することは極めて困難で、治療の選択肢が限られてしまいます。腹膜播種の有無が、卵巣がんの予後に大きく関わるといわれるのはそのためです。

腹膜播種性転移のメカニズム

日本国内の卵巣がん患者は年々増加しており、その予後を左右する要素のひとつである腹膜播種のメカニズムの解明が急がれていました。そして、今回の共同研究では、卵巣がんの腹膜播種性転移にエクソソームが関与していることが明らかになっています。

エクソソームは細胞が分泌する膜小胞のひとつで、細胞間のコミュニケーションを担う役割があると考えられています。卵巣がんの細胞からはMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)1遺伝子を多く含む微小な小胞エクソソームが分泌されており、腹膜を構成する中皮細胞をアポトーシスという細胞死へと誘導します。その結果、卵巣がん細胞が腹膜播種を成立させるうえで妨げとなる腹膜を破壊しているのです。つまり、がん細胞自身が転移しやすい環境を構築しているといえるでしょう。

なお、MMP1遺伝子は、卵巣がん患者の腹水(お腹の中にがんが広がると腹部にたまる体液)に含まれるエクソソーム中にも存在することがわかっています。

今後の展望

今回の研究結果は、今後の卵巣がんの治療に大きく貢献するものと評価されています。

可能性が示唆されているのは、バイオマーカーとしての応用です。卵巣がんから分泌されるエクソソームと、卵巣がんの患者さんの腹水から検出されたエクソソームに含まれるMMP1遺伝子の量を計測することで、早期卵巣がんの患者さんの予後や治療効果を高精度に予測できるのではないかと期待されています。現時点では、腹水に含まれるMMP1遺伝子の量に注目し、手術前に化学療法を受けた患者さんと化学療法を受けずに手術のみを受けた患者さんを比較したところ、前者のほうがMMP1遺伝子の量が減少したことが明らかとなっています。

また、近年は、卵巣がんの治療効果の向上や新規治療開発を目的に、特定のエクソソームを除去する研究も進められています。

信頼できる最新情報をチェックしよう

がんに関するさまざまな研究結果が日々報告されています。治療法の選び方や快適な療養生活に関わることなので、信頼性の高い機関が発信する最新情報をチェックするといいでしょう。ただし、信憑性や自分の病状に合った情報なのかどうかについては、主治医や看護師などの専門家に相談、確認をするようにしてください。

 

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