増加傾向にある非浸潤性乳がんについて

乳がんは、非浸潤性乳がんと浸潤性乳がんに分けられます。なかでも非浸潤性乳がんは診断される患者数が年々増加しており、すべての乳がんの10%を占めるそうです。そこで今回は、今後さらなる増加が見込まれる非浸潤性乳がんについてご紹介します。

乳がんには「非浸潤性乳がん」と「浸潤性乳がん」がある

乳房の中には、母乳を分泌する役割をもつ乳腺組織があります。乳腺組織は15~20個の腺葉から成り、それぞれの腺葉は腺房の集まりである小葉で構成されています。そして、それぞれの腺葉からは乳管が1本ずつ出ており、小葉や腺房と連絡し合い主乳管となって、乳頭に達しているのです。

乳がんは、この乳腺組織の細胞ががん化することで発生し、以下の2種類に分類されます。

  • 非浸潤性乳がん
    がん細胞が乳管や小葉を包んでいる膜を破ることなく、内部にとどまっているごく早期の乳がん
  • 浸潤性乳がん
    がん細胞が乳管や小葉を包む膜を破って、周囲の組織へ広がっている乳がん

なお、乳腺の大きさは、乳がんのリスクとは無関係です。また、妊娠や出産、授乳が乳がんのリスクを低下させることは確実であるとされています。その理由は、乳腺の発達に関わるエストロゲンが出産や授乳によって低下するためであると考えられます。

ごく早期のがんである非浸潤性乳がん

検査の精度の向上により、近年ではしこりなどの自覚症状のない早期の乳がんの発見が可能になりました。また、検診を受ける人が増えている背景もあり、病期が0期にあたる非浸潤性乳がんの発見率が増加しています。

非浸潤性乳がんは、以下の2種類に分けられます。

  • 非浸潤性乳管がん
    がん細胞が乳管以外の組織に広がっていない状態です。浸潤性乳がんになる可能性がありますが、現在のところそれを予防する手立てはありません。
  • 非浸潤性小葉がん
    小葉内にのみがん細胞が存在する状態です。浸潤性乳がんになることはめったにないといわれていますが、一方の乳房に小葉がん腫がある場合は、いずれかの乳房が乳がんになるリスクが高くなります。

非浸潤性乳がんの症状

非浸潤性乳がんの症状には、以下のようなものがあります。しかし、多くのケースでは触知できるようなしこりがありません。

  • 小さなしこりがある
  • 乳頭から分泌液(血性のケースが多い)が出る
  • 乳頭や乳輪に、治りにくい湿疹やただれができる
  • 画像診断で微細石灰化が見られる

非浸潤性乳管がんの治療

非浸潤性乳管がんは、病変部を切除すれば完治の可能性が高いため、治療の第一選択肢は手術です。かつては乳房の全切除が標準でしたが、近年は病変の広がりを正確に把握することで温存手術が可能なケースがあります。ただし、石灰化病変が乳房の広範囲に認められる場合は、乳房の全切除が推奨されます。手術後は切除した組織を検査して再発のリスクを評価し、必要に応じて放射線治療や薬物療法が行われます。

手術の際に、腋窩リンパ節郭清(乳房の周囲のリンパ節を取り除く)の必要はないと考えられていますが、病状によってはセンチネルリンパ生検(センチネルリンパ節を摘出して転移の有無を調べる)をすることがあります。

なお、乳房温存術では10~20%に局所再発が見られ、そのうちの半数は浸潤がんとして再発します。再発時には、あらためて乳房を全切除し、腋窩リンパ節郭清、またはセンチネルリンパ生検を行います。

非浸潤性小葉がんの治療

非浸潤性小葉がんの場合は、手術などの治療をするのではなく、定期的に検査をしながら経過観察をするのが一般的です。いずれ浸潤がんとして発生する可能性が高いため、予防的に両側の全乳房を切除するという選択肢もありますが、それは適切な処置ではないとする専門医は少なくありません。

自分の病状を十分に把握して治療法を選択しよう

非浸潤性乳がんは、手術で完全に取り除けば理論上完治といえるため、乳房を全切除すれば再発予防の術後療法も原則不要です。しかし、せっかく早期発見できたのに、乳房を全摘出するのでは納得できない人もいるでしょう。

担当医の話をよく聞いて自分のがんの状態を十分に把握し、最良の治療法を検討・選択してください。

 

参考: