再生医療がキラーT細胞を若返らせる!がん治療に欠かせない免疫強化に期待

免疫担当細胞の一種である細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)は、がんを攻撃することで知られています。しかし、キラーT細胞は不死身ではなく、しだいに疲弊し老化していきます。もし、そのような状態になったキラーT細胞を復活させることができたら、あるいは、強力なキラーT細胞を作り体内に戻すことができたら、がん治療のみならずさまざまな感染症にとって、強力な治療方法となるでしょう。実は、そういった発想が再生医療によって実現されようとしているのです。今回は再生医療によるがん治療の可能性を紹介しましょう。

がん治療で注目されるT細胞

T細胞は、血液中の白血球の一種である、リンパ球と呼ばれる細胞のひとつです。T細胞には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞の3種類があります。

ヘルパーT細胞は、外部から侵入した異物や体内で発生した異常な細胞から体を守る免疫反応における、司令塔的な役割を担っています。

キラーT細胞は、細胞傷害性T細胞とも呼ばれる免疫細胞です。ヘルパーT細胞の司令によって増殖して体内を巡り、異物や異常な細胞などを攻撃します。

そして、制御性T細胞は、キラーT細胞などが正常な細胞に対して過剰な攻撃をしないように抑制したり、免疫反応を終了させたりする働きをします。

免疫反応の要でもあるキラーT細胞は、慢性的な感染や度重なる抗原刺激を受けているうちに、その機能がしだいに衰えていきます。そうなると、さまざまな感染症やがん細胞への抵抗力が弱くなってしまいます。

しかし、がん治療を効果的に進めるためにも、感染症から身を守るためにも、キラーT細胞が活性化している状態を維持することが必要です。そのために再生医療を応用する方法が考えられています。

組織や臓器の再生を試みる再生医療

自然には再生しない組織や臓器が機能を失った場合の治療は、現在は基本的に移植が行われています。しかし、提供される組織や臓器の数は限られています。また、移植したとしても患者さんの体に適合するかどうかという問題があります。そこで、機能を失った組織や臓器を再生させようとするのが再生医療です。

再生医療には2つの方法があります。ひとつは体内にある幹細胞群に働きかけて修復能力を引き出すもの、もうひとつは体外で増殖させた幹細胞を患者さんに移植するものです。

修復能力を引き出す再生医療

私たちの体は、切断した手や足が再び生えてくることはありません。しかし、皮膚に切り傷を負ったようなときは、多少の範囲であれば皮膚は自然と再生されます。また、肝臓は手術で7割程度を切除しても残った正常な細胞が新しい細胞を作り、半年もすれば元の大きさに再生して正常に機能することが知られています。このような再生は、幹細胞の「特定の細胞群に分化できる力」によるものです。

修復能力を引き出す再生医療は、成長因子や分化因子を使って幹細胞群を活性化させたり分化を促したりすることで治療を試みます。

幹細胞の移植による再生医療

幹細胞による再生医療は、再生能力を持つ幹細胞を体外で増やし、患者さんに移植することで治療を試みる方法です。

京都大学・山中教授のノーベル賞受賞で話題となったiPS細胞は、皮膚などの細胞から作ることができます。患者さん本人の細胞を使って拒絶反応のない幹細胞を作製し、必要な組織の幹細胞だけを大量に増やすといった、提供される組織や臓器を待たずに治療ができる環境が実現するだろうと考えられています。

再生キラーT細胞によるがんの免疫細胞療法の実現に期待

東京大学や京都大学では、iPS細胞を使ったキラーT細胞の再生が試みられています。

まず、患者さんの体内にある疲弊したキラーT細胞を取り出し、iPS細胞の状態に初期化します。その初期化した細胞(T-iPS細胞)から再びキラーT細胞に分化させて、大量に再生キラーT細胞を作り、患者さんの体内に戻すのが狙いです。

これまでも、がん細胞に反応するキラーT細胞を体外で増殖させ、再び患者さんの体内に投与する治療法が有効であると考えられていましたが、質の高いキラーT細胞を効率よく増やすことは非常に困難でした。この課題を解決したのが、iPS細胞だったのです。

まだ実験の段階ですが、再生キラーT細胞を用いたがんの免疫細胞療法の実現が期待されています。