がんの療養生活中にできた傷の適切なケアについて

日常を過ごすうえで、何かのはずみでちょっとした切り傷や擦り傷をつくってしまうことがあります。ほんの小さな傷だとしても、がんの治療・療養中のことだと不安に感じるものです。そこで今回は、日ごろの生活でできた傷の適切な対処法と注意点をご紹介します。

生活のなかでできやすい傷の種類

日常生活を送るなかで、つくりやすい傷の種類と特徴を紹介します。

  • 切り傷(切創)
    刃物のような鋭利なものによってできる開放性の傷をいいます。きれいな直線状であることが特徴です。
  • 擦り傷(擦過傷)
    衝撃や摩擦など、皮膚を擦りつけた刺激でできる傷です。傷口に砂や土が入りやすいという特徴があります。
  • 打撲傷(挫創・挫傷)
    体を鈍体にぶつけたときにできる傷です。皮膚が切れて傷口が開いている場合は挫創、皮膚表面に傷口がなく内部組織が損傷している場合は挫傷といいます。
  • 動物による傷
    動物にかまれたり、ひっかかれたりした際にできる傷です。小さな傷でも深い場合が多くあります。

傷ができたときの対処法

切り傷や擦り傷を負って、出血している際の具体的な対処法と注意点をご紹介します。

まずは止血をして清潔を保つ

出血が少なく傷が汚れている場合は、流水で汚れをやさしく洗い流します。傷口やその周りに砂や土がついているときには、清潔な綿棒を用いると汚れを取り除きやすくなります。

出血が多い場合は、まず止血を優先してください。清潔なガーゼで傷口を閉じるように圧迫するのが最良ですが、身近にある清潔なキッチンペーパーでも代用できます。ただし、ティッシュペーパーは傷口に繊維が付着しやすいため、治癒の妨げとなることがあり、傷口のかさぶた(痂皮)がはがれる原因にもなるので、止血時にはなるべく使わないほうがいいでしょう。また、傷口を冷やすと周囲の血管が収縮するため、止血を促します。

傷口からの出血が止まったら、あるいは出血量が少なくなったら、落ち着いて傷の状態を確認して処置します。

処置方法

以前は、傷を消毒して清潔なガーゼを当てるといった処置が一般的に行われてきました。しかし、現在では、消毒をすると体を守ってくれる常在菌を殺してしまうことや、ガーゼを当てると傷が乾燥して治癒の妨げとなると考えられるようになりました。

また、傷口から分泌される透明な滲出液には、傷口の治癒を促す働きがあることもわかっています。そこで注目されているのが、傷の消毒をせず、適度に湿らせた状態を保つ「湿潤療法」です。浅く小さい切り傷や擦り傷などは、以下の手順で処置するといいでしょう。

  1. 消毒はせずに流水で傷とその周辺をきれいに洗い、創傷被覆材(ハイドロコロイド材など)を貼って傷を乾燥させないようにする
  2. 滲出液で創傷被覆材が汚れたら、新しいものに交換する
  3. 最低でも2~3日に一度は創傷被覆材をはがし、傷口を観察する

湿潤療法は、かさぶたをつくらないようにすることで新しい表皮細胞が増殖しやすい環境を整え、傷の治りを促進します。痛みを軽減し、傷あとが残りにくいというメリットもあります。

ただし、免疫抑制剤を使っている場合、傷が広い場合、傷が深い場合、野外で傷を負った場合、糖尿病のように傷の治りが遅くなる持病を持つ場合などは、自己判断で湿潤療法を用いてはいけません。

こんなときは受診しよう

時間を追うごとに傷の痛みや熱感などが強まる場合は感染の可能性が考えられるため、小さな傷でも受診することをおすすめします。特に注意したいポイントをご紹介します。

  • 5~15分ほど圧迫しても止血できないとき
    化学療法や放射線療法の影響で骨髄抑制の症状があると、止血しにくい場合があります。傷や副作用の程度にもよりますが、15分以上圧迫しても止血しない場合は、かかりつけの医療機関に連絡して指示をあおいでください。
  • 傷からの滲出液に変色や臭いがあるとき
    正常な滲出液は無色透明かやや黄色を帯びており、臭いはほとんど感じません。滲出液の色や臭いに変化がみられる場合は、感染の可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
  • 動物にかまれたりひっかかれたりしたとき
    動物にかまれた傷や、ひっかかれた傷には注意が必要です。動物の歯や爪は鋭利なため、小さな傷でも深くなる傾向があり、病原菌が傷の奥にまで届きやすくなってしまいます。特にがんの治療中は体の抵抗力が弱まっている可能性があるため、自分で判断せずに、できる限り早めに医療機関を受診することをおすすめします。

万が一の備えをしておこう

治療の副作用がある時期には、傷をつくらないように十分気をつけることが大切です。また、万が一の場合にも対処できるように、感染予防や止血の方法を確認し、必要な物品を備えておきましょう。

 

参考: