肺がんの新しい治療薬として注目されるバンデタニブ

バンデタニブは、根治切除不能な甲状腺髄様がんの治療に有効とされる分子標的治療薬です。2016年11月に国立がん研究センターは、このバンデタニブがRET融合遺伝子陽性の肺がんの治療においても有効性が確認されたことを発表しました。今回は、肺がん治療の選択肢を増やす可能性が期待されているバンデタニブについてご紹介します。

RET融合遺伝子とは

1980年代に、がんを発症させる遺伝子を特定する方法が開発されたことに伴い、がん遺伝子やがん抑制遺伝子などが発見されました。RETは、1985年に発見されたがん遺伝子です。1993年には、変異したRET遺伝子が、甲状腺がんと副腎の遺伝性がんである多発性内分泌腫瘍症2型の原因となることが明らかになっています。

正常なRET遺伝子は、腸の神経細胞や腎臓、精子などを作る大変重要な役割を担っています。ところが、正常なRET遺伝子が別の遺伝子と結合することでRET融合遺伝子となり、細胞のがん化に影響を与えるようになるのです。

RET融合遺伝子から作られるたんぱく質は、チロシンというアミノ酸をリン酸化する酵素を活性化させ、細胞のがん化を促します。そのため、RET融合遺伝子の働きを抑えることが、がんの治療につながると考えられています。

バンデタニブが注目される理由

バンデタニブは口から服用する白色の錠剤で、日本では2015年に進行性の甲状腺髄様がんの治療薬として承認されました。主な薬のはたらきとしては、がんの増殖に関わる上皮増殖因子受容体(EGFR)やRET融合遺伝子、がん細胞が増殖するために新しい血管をつくるときに必要な血管内皮増殖因子(VEGF)などのたんぱく質の機能を抑え、がんの増殖を抑制するといわれています。

2012年に国立がん研究センターは、肺がんの遺伝子異常としてRET融合遺伝子を新たに同定。基礎研究で、RET融合遺伝子が陽性の肺がんの治療には、RETの働きを抑える分子標的治療薬が有効である可能性が示されました。そこで、バンデタニブが肺がんの治療薬としても候補に挙がったのです。

約半数の患者さんのがんが明らかに縮小

2013年2月から2015年3月にかけて、国立がん研究センターは進行非小細胞肺がんの患者さん1,536人の遺伝子検査を行い、34人のRET融合遺伝子陽性の肺がんを特定しました。そして、研究の参加規準を満たす19人がバンデタニブの投与を受けました。その結果、約半数の患者さんに、明らかながんの縮小が認められたそうです。

具体的な治療効果を示す例では、治療前には胸膜まで転移していた肺がんが、バンデタニブによる治療を始めた5カ月後には、肺のがんも転移したがんも明らかに縮小しています。副作用も忍容できるもので、比較的安全だと考えられています。今回の研究では具体的な副作用の症状は明らかにされていませんが、甲状腺髄様がんの治療では発疹、皮膚炎、皮膚乾燥、下痢、高血圧などが報告されているようです。

なお、2016年11月に今回の研究結果が公表された時点では、バンデタニブを用いた肺がん治療に健康保険が適用されるように協議がなされているとのことです。

新しい情報も確認しよう

がん治療に関する研究は日々進められており、今回のように薬が承認を受けた当初とは別の疾患にも有効であることが発見されるケースがあります。このような新しい情報に注目することで、治療の選択肢を広げられるかもしれません。しかし、情報の信憑性には注意が必要です。信頼のできる情報の入手先については、主治医や担当看護師をはじめとした専門家に確認してください。

 

参考: