がんになるとなぜ痩せる?その理由に挙げられる「悪液質」とは

がんになった人が痩せるという話を、よく耳にすると思います。しかし、ひとくちに痩せるといっても、さまざまな要因が複雑にからまりあっているのです。その要因のひとつに、「悪液質」という状態があります。今回は、がんになると痩せる理由を探りながら、悪液質について紹介します。

がんによって痩せる原因

体を維持するために必要なエネルギーを食事によって摂取していれば、体重が減少することはありません。つまり、痩せてしまうのは、必要なエネルギーをうまく摂取できていない状況が継続しているからです。

がんと痩せには関連があり、がんと診断を受けた人のうちのおよそ半数が、体重減少を自覚しているといわれます。そして、がんで亡くなる人の3分の2以上が痩せてしまっています。

がんの種類によって、痩せが起こる頻度は異なります。例えば、診断時に痩せを自覚している患者さんは、乳がんでは3分の1程度である一方で、大腸がんや前立腺がん、肺がんなどでは半数程度といわれています。特に膵がんでは、診断の時点で8割の患者さんに体重減少が起きているようです。

がん患者さんが痩せてしまう原因は、大きく分けるとふたつあります。ひとつは食事がとれなくなること、もうひとつは「悪液質」という状態に陥ることです。

食事をとれなくなることによる痩せ

食事をとれなくなるのは、どのようなケースがあるのか確認してみましょう。

  • 痛みや不快感などによる体調不良
    初期のがんであっても、なんとなく痛みが続いていたり、食道や胃のあたりに不快感があったりすると、食事がすすまないことがあります。また、本人は食べているつもりでも、きちんとした量をとれていない場合や、食べる量は十分でも消化吸収できていないというケースもあります。
  • 精神的ストレス
    がんと診断されたときの精神的ショックや、がんの強い痛みが続くことによって、うつ状態に陥ることは少なくありません。がんであることを受け止められずに、不安や精神的ストレスを抱えると、食欲不振や消化不良などを引き起こす可能性があります。
  • 治療の副作用
    抗がん剤治療や放射線治療を受けると、副作用を発症するケースが多くあります。食欲不振や吐き気をともなう副作用が生じると、食事がとるのが難しくなってしまいます。
  • がん細胞の増殖
    がん細胞が増殖して、食道や胃、大腸などの消化吸収器官が圧迫されると、食べたものが通りにくくなります。また、痛みをともなう場合には食事量が減ってしまうこともあるでしょう。

悪液質による痩せ

悪液質は、病変によって生じる複合的な栄養不良の症候群で、がんだけではなく心不全や結核、内分泌疾患などでも発生します。

がんの悪液質になると、栄養治療でも改善が困難な著しい筋肉量の減少がみられるほか、代謝異常によって炭水化物やたんぱく質が失われた状態となります。また、皮膚が乾燥し、髪の毛にハリや艶がなくなり、目がくぼんだガリガリに痩せた状態となるのです。見た目の変化だけでなく、脱力感や無力感、食欲不振といった症状も現れます。体力が急激に低下して衰弱状態になるため、病状が一気に進行するケースが少なくありません。

悪液質を引き起こす要因

悪液質は複数の要因が複雑に作用するため、原因の特定が難しいのが現状です。しかし、がん細胞が放出する炎症性サイトカインの関与が明らかになっています。

サイトカインは本来、免疫システムを強化して感染症やがん細胞に抵抗するための情報を伝達する働きをしています。ところが、がん細胞が過剰に炎症性サイトカインを放出すると、体全体に炎症が広がり、代謝機能が衰えて栄養の利用効率が悪化します。さらに、体内のたんぱく質を分解する酵素の働きを促進させるため、全身の筋肉が落ちてしまい、悪液質に陥るのです。

体重減少を防ぐために心がけたいこと

病状悪化の原因となる体重減少を防ぐためには、がん治療の初期段階から栄養管理をし、体重維持と体力維持に注意を払うことが大切だとされています。特に悪液質に陥ると、栄養管理では改善が難しい筋肉低下が起こりやすいので、そうなる前から体調を把握し、必要なエネルギーを摂取するよう心がけてください。

食事をおいしく食べるための工夫は、心を強く保つ工夫でもあります。食事環境の改善を治療のひとつとして考えてみましょう。

 

参考: