がんと免疫の密接な関係

人間の体内では、1日に数千個のがん細胞が発生しているといわれます。しかし、体に備わる免疫系によって排除されるため、がんの発症に至ることはほとんどありません。今回は、がんと深い関わりのある免疫系についてご紹介します。

免疫系の概要

人間の体に備わっている免疫システムは、自然免疫と獲得免疫に分けられます。以下で詳しくみてみましょう。

自然免疫

自然免疫は、生まれたときから体に備わっている免疫システムです。常に防御態勢にあり、外敵に対して即座に反応します。自然免疫には以下のようなものが挙げられます。

  • 皮膚によるバリア
  • 腸や肺などの内側の粘膜によるバリア
  • 胃酸
  • 腸内細菌(悪影響を及ぼすバクテリアの増殖を抑える)
  • 勢いのある排尿(膀胱や尿道からバクテリアを洗い流す)
  • 白血球のなかの好中球(体内に侵入したバクテリアなどの異物を貪食殺菌する)
  • 白血球のなかのNK細胞(体内を巡回し、ウイルス感染細胞やがん細胞を攻撃する)

がん治療による自然免疫への影響

自然免疫は、がん治療による影響を受ける場合があります。化学療法によって腸粘膜がダメージを受けたり、白血球内の好中球数が一時的に減少したりするのが、その一例です。放射線治療では、気管支の粘液を分泌する杯細胞や、繊毛運動によってバクテリアや痰などの異物を排出する気管支上皮がダメージを受けることがあります。また、外科手術の切開や、点滴のカテーテルの挿入も、皮膚のバリアを壊しているといえるでしょう。

免疫系がダメージを受けると、感染症にかかりやすくなります。特に好中球数が減少しているときは、感染症の重篤化が心配されるところです。感染予防の薬が処方された場合には、忘れずに服用してください。

獲得免疫

獲得免疫は後天的に獲得する免疫システムです。外敵に遭遇するたびに最も効果的な攻撃方法を学び、その外敵を記憶することで次回の侵入に備えます。そのため、新たな外敵に対する獲得免疫を得るには時間がかかりますが、記憶されている外敵に対する反応は自然免疫より早く、防御効果も高まります。獲得免疫には血液中のT細胞やB細胞といったリンパ球、抗体などが関与しています。また、白血球の樹状細胞は、ウイルスやがん細胞などの外敵の情報をヘルパーT細胞に提示することで、獲得免疫を誘導します。

第4のがん治療として注目される免疫療法

NK細胞療法、樹状細胞療法などの免疫細胞療法は、活性化させた自分の免疫細胞を用いて免疫力を強化し、がんと闘う方法です。近年、外科療法、化学療法、放射線療法に続く第4のがん治療として注目されています。副作用がほとんどみられないために体への負担が少なく、ほかの治療法と併用できることから相乗効果が期待できます。

ストレスを軽減して免疫力を後押ししよう

自分でできる免疫力アップの方法があれば、ぜひ試したいと思っている人は多いと思います。そこで、免疫力と密接な関係にあるストレスを軽減させる方法を考えてみましょう。

人間の体の活動レベルを調節する自律神経には、体を活発な状態にする交感神経と、リラックスした状態にする副交感神経があります。両者の働きのバランスが崩れると、体調を崩してしまいます。

現代社会では、ストレスや不規則な生活から交感神経の働きが優位になる傾向があります。しかし、逆に副交感神経の働きが優位になれば、ストレスや不安、緊張状態は緩和されるのです。

それでは、副交感神経を活性化するには、どうすればいいのでしょうか。

副交感神経の働きを活性化する3つの方法

  • 起床時にコップ1杯の水を飲む
    朝、目覚めたときは、体の活動レベルを高めるために交感神経が最も活発になっています。しかし、自律神経が乱れていると、交感神経が過剰に活発になってしまうのです。そこで、胃に飲食物が入って腸が動きだすと、副交感神経にスイッチが入るメカニズムを利用し、自律神経のバランスを調整します。
    そのためには、コップ1杯の水を飲むのがおすすめです。しっかりとした刺激が必要なので、水は少しずつ飲むのではなく、一気に飲み干すようにしましょう。
  • ゆっくり息を吐く
    緊張をほぐしたいときに、深呼吸をすることがよくあると思います。これは、息を吐くときに副交感神経にスイッチが入ることを利用した方法なのです。実践方法としては、息を吸うよりも吐くことに時間をかけます。例えば、4秒で息を吸い、8秒で吐くようにしてみましょう。
    手軽にどこでも実践できる呼吸法なので、気がついたときにやってみてください。
  • 肌をなでる
    子どものころ、母親に頭や背中をなでてもらうと、リラックスできた経験があるのではないでしょうか。これは、肌をなでることで副交感神経のスイッチが入るためです。
    触るか触らないかぐらいにソフトになでると、神経が敏感になって効果的です。なでる場所は、顔のような神経の多い場所がよりよいようです。夜、なかなか寝つけないときに試してみましょう。

免疫力を高めてがんと闘おう

がんと闘うには、免疫力が非常に重要です。今回ご紹介した方法以外にも、バランスのとれた食事や十分な休息、軽いエクササイズなどを心がけ、免疫力を高めましょう。

 

参考: