乳がん治療における乳房再建について

乳がんの治療というと、手術で乳房を全摘出するイメージが強いですが、近年では乳房を温存できるケースが増えています。しかし、再発の危険性を考慮すると、乳房を切除せざるを得ない場合があることも事実です。そうなると、乳房を失うことへの患者さんの不安は計り知れないでしょう。また、乳房を温存できたとしても、変形の心配が残ります。

そこで注目されているのが、乳房再建まで考えた乳がん治療です。今回は、その現状をご紹介します。

乳がん手術の選択肢

乳がん治療の基本は手術で、がん組織を周囲の正常な組織とともに切除します。しかし、以前は全摘出手術を勧められたケースでも、現在では乳房温存術が可能なケースが増えており、日本国内の乳がん手術は2000年以降、乳房温存術が40%以上を占めているそうです。その背景には、乳がん検査の精度向上に加え、検査の受診率がアップしたことで、早期発見ができるようになったことがあるでしょう。

とはいえ、手術の範囲はがんが乳房内にどの程度広がっているかによって決まるため、すべてのケースで乳房温存術を選択できるわけではありません。

注目を集める乳房再建術

乳房を温存できたとしても、手術前と変わらぬ形を維持できるとは限りません。術後に乳房のへこみや変形が生じるケースが多いようです。そうなると、乳房を全摘出した場合と同様に、患者さんは心理的苦痛を感じることもあるでしょう。そこで注目されるようになったのが、乳房の再建術です。

乳房の再建は、乳がんの手術後に形成外科医によって行われます。その方法は、手術のタイミングと術式によって以下のように分類され、病状や乳房の状態によって最適なものが選ばれます。

  • 乳房再建のタイミングによる違い
    一次再建/二次再建
  • 術式による違い
    自分の組織を移植する術式/人工乳房を使う術式

それぞれについて、以下で詳しくみてみましょう。

一次再建

乳がんの手術をする際に、同時に再建も行う方法です。

  • メリット
    二次再建より手術の回数が少ないため、身体的および経済的な負担が小さくなります。
  • デメリット
    乳腺外科医と形成外科医の連携が不可欠なので、それに対応できる医療機関を選ぶ必要があります。また、乳がん手術と同時に再建をする場合は、乳房の形の希望をゆっくりと考える時間的余裕がないことがあります。

二次再建

乳がんの手術を終え、一定期間が経過してから再建術を行う方法です。

  • メリット
    先に乳がん治療に専念し、再建する乳房の形は追ってじっくりと検討できます。また、乳がん手術と再建術は別々の医療機関で受けることができるため、それぞれで納得のいく選択が可能です。
  • デメリット
    一次再建より手術の回数が増えるので、身体的・経済的な負担が大きくなります。乳がん手術後しばらくは乳房が失われる期間が生じるため、患者さんが精神的な苦痛を感じるケースがあるようです。

自分の組織を移植する術式

大きく分けて、お腹の組織を移植する「腹直筋皮弁法」と背中の組織を移植する「広背筋皮弁法」があります。一次再建でも二次再建でも選択できる術式です。

  • メリット
    自分の体の組織を使うため、安心感があります。感染のリスクが低く、自然な膨らみが再現できることも大きな魅力です。
  • デメリット
    ほかの部位から組織を移植するため、手術時間や入院日数が長くなる傾向があり、組織を取った場所に跡が残ります。また、移植した組織への血流に問題が生じ、壊死してしまう可能性があります。そうなった場合は、壊死した組織の切除や再建のやり直しが必要になります。

人工乳房を使う術式

シリコン製の人工乳房を入れる方法です。最初にエクスパンダーという器具を再建部位に入れ、数カ月かけて皮膚と周辺組織を十分に伸ばします。その後、エクスパンダーと人工乳房を入れ替えます。

  • メリット
    簡単な手術なので、1時間程度で終了することがほとんどです。合併症のリスクが少ないとされ、胸以外の部位に傷痕が残りません。
  • デメリット
    術後しばらく経つと、挿入した人工乳房の周りに皮膜と呼ばれる薄いカプセルのようなものができます。皮膜は徐々に縮んで人工乳房の変形の原因となることがあるため、医師の指導のもとマッサージが必要です。また、加齢による変化が生じないため、再建した乳房と自然の乳房に見た目の違いが現れることがあるほか、感染症によって人工乳房を取り出さなければならない場合があります。

乳房再建を自分らしく生きるための選択肢に

乳房の再建は、乳がんの手術をする段階で医師と綿密に相談する必要があります。乳がんの完治が最優先事項ですが、同時に心身ともに健康的で自分らしく生きるためにも、乳房再建を積極的に選択していきましょう。

 

参考: