がんの治療・療養中に提案されるイレオストミー(回腸ストーマ)について

がんの治療・療養中にイレオストミー(回腸ストーマ)の造設を提案されることがあります。しかし、患者さんにとっては大きな不安要素となることでしょう。そこで今回は、その不安を解消するために理解しておきたいイレオストミーの知識についてご紹介します。

イレオストミーとは

イレオストミーとは、回腸(小腸の一部)に設けられるストーマ(排泄口)のことです。下部直腸がん、肛門管がん、大腸がんなどの治療で病巣のある腸管を切り取ってしまい、肛門からの排便が難しくなった際に造設します。ストーマには永久的なものだけでなく、症状が改善するまで、あるいは手術部位が治癒するまでといった一時的なものもあります。

イレオストミーのストーマの位置は腹部右側が一般的で、腹部に対する盛り上がりは1.5~2cmです。手術直後には浮腫みを生じますが、6~8週間ほどで改善して大きさも落ち着きます。ストーマの色は腸管内部の赤色で見た目は痛々しいですが、神経がないため痛みを感じることはありません。しかし、腸管の粘膜は柔らかく傷つきやすいので、ケアの際は注意を払う必要があります。

イレオストミーからの排泄物は、水様性または泥状(水分が多く軟らかい)の便となります。その理由は、通常の便は大腸で水分やミネラルが吸収されるのに対し、大腸を経由しないイレオストミーからの排泄物は水分やミネラルが吸収されないためです。

イレオストミーのストーマには括約筋がないので、肛門のように排泄のタイミングや量を調整することができません。そのため、消化管の動きに応じて無意識に排泄される便を、ストーマ装具で受ける必要があります。ストーマ装具は、便を受けるパウチ(ストーマ袋)とパウチをストーマに接続するための土台(面板、皮膚保護剤ともいいます)で構成されています。

イレオストミーのセルフケアと注意点

イレオストミーのセルフケアや注意点について、以下にご紹介します。

食事

医師からの特別な指示がない場合は、食事内容の制限はありません。ただし、繊維の多い食べ物は便が詰まる可能性があるので、一度に多くの量をとるのを控えたほうがいいかもしれません。また、調理の際に細かく刻む、よく噛んで食べるといったことを心がけましょう。

イレオストミーを造設すると、消化管内で電解質が十分に吸収されず、電解質異常に陥りやすくなることがあります。嘔吐や下痢、多量の発汗をしたときは、スポーツ飲料、味噌汁の上澄み液などをこまめに摂取して電解質異常を予防しましょう。

スキンケア

排泄物が皮膚に付着すると皮膚トラブルの原因となるので、ストーマ部位の清潔を保ちましょう。ストーマ装具は自分のストーマの大きさとの差が1mm未満になるように準備し、皮膚保護剤をストーマ周囲の皮膚に密着させて便が皮膚に直接触れないようにしてください。また、ストーマベルトを活用するとパウチの重みを支えられるため、皮膚保護剤のはがれを防止できます。

排泄物処理とストーマ装具交換のタイミング

食事量、疾患、内服薬によって便の量は変わりますが、一般的に1日5~8回ほどはトイレでパウチにたまった便を処理する必要があります。便の漏れやパウチの膨張を防ぐには、パウチの容量の3分の1程度たまった時点で処理するといいでしょう。なお、ストーマ装具の交換は、便の排泄が少ない食事前や食後2時間以上過ぎたタイミングがやりやすいです。

医療機関の受診が必要なケース

下記のような症状がみられるときは早めに医療機関に連絡し、専門家の指示を受けてください。

  • 2~3時間、腹痛が続く場合
  • 吐き気や嘔吐が続く場合
  • 腹痛と吐き気をともない、排泄が4~6時間ない場合
  • 下痢(著しい水様便)の排泄が5~6時間続く場合
  • 便の臭いが強い場合
    • ストーマ周辺に皮膚のトラブル(潰瘍、ただれなど)がある場合
  • ストーマに深い傷や出血がある場合
  • ストーマと皮膚の境目からの出血が続く場合
  • ストーマの大きさや色などに極端な変化がみられる場合

事前に納得できるまで話し合おう

イレオストミーの造設は非常にデリケートな問題なので、さまざまな不安を抱く方が多いと思われます。事前に医師や看護師の説明を十分に受け、患者さん自身が納得することが大切です。不安や疑問を取り除いて治療・療養に前向きに取り組むために、どんな些細なことであってもきちんと理解できるまで専門家と話し合うことをおすすめします。

 

参考: