がんの治療・療養中に生じる歩行困難とは

がんの治療・療養中に足がもつれたり、スムーズに歩けなかったりすることはないでしょうか。それは、「歩行困難」の症状かもしれません。今回は、がんの治療・療養中に生じやすい歩行困難について、そのメカニズムや治療・ケアのポイントをご紹介します。

歩行困難の症状

歩行困難とは、文字どおり歩くことが難しい状態です。症状は人それぞれで、一時的なものから長期的なものまでさまざまあります。専門家から見ると歩行困難の症状が出現していても、患者さん自身は一時的な不調ととらえて、歩行困難の認識を持っていないことがあります。

特に高齢の患者さんや長期間の安静を保っていた患者さんの場合は、足腰の弱りと思われがちです。しかし、「何かにつかまらないと立ち上がれない」「足元のふんばりがきかない」「足を床に擦るように歩く」「転ぶことが増えた」「スムーズに足が出ない」「よろける」「ふらつく」というときは、歩行困難の症状、もしくはその前兆である可能性があります。

歩行困難の原因

歩行困難の原因は人によって異なり、一般的には先天的なもの、疾患、外傷によるものなど、さまざまなケースがあります。また、複数の要因が影響しあっている場合もあります。ここでは、がんの治療・療養中に起こりやすい歩行困難の原因についてみてみましょう。

悪性骨腫瘍

骨に生じる悪性腫瘍で、以下の2種類に分けられます。

  • 原発性悪性骨腫瘍
    骨から生じた悪性肉腫で、人口100万人に対して年間約4人が発症すると推定されます。腫瘍細胞自体が骨をつくる「骨肉腫」、良性骨腫瘍から二次的に発生する可能性がある「軟骨肉腫」、悪性度が高く急速に進行する「ユーイング肉腫」などの種類があります。
  • 続発性悪性骨腫瘍
    体の別の場所に生じた悪性腫瘍が骨に転移したものです。20~30%の頻度で生じるといわれ、乳がん、肺がん、前立腺がん、多発性骨髄腫などが転移するケースが多くみられます。20~30%の頻度で生じるといわれています。

歩行困難の原因としては、骨がもろくなることによる骨折や、歩行に関わる神経が通る脊椎が圧迫されて生じる、痺れや麻痺、痛みなどが挙げられます。骨転移がある場合は、体を少し動かすだけでも痛みがあるため、疼痛コントロールが不十分だと歩行に影響する可能性があります。

神経障害

がんを患うと、腫瘍による神経の圧迫、神経までの浸潤、副作用の影響による神経の損傷または異常が生じることがあります。症状は障害を受ける神経によって異なり、運動神経の場合は「立ち上がれない」「つまづきやすい」、感覚神経の場合は「痺れる」「手足が重たい」「ピリピリと痛む」、自律神経の場合は「汗が出ない」「手足が冷たい」といったものがみられます。そのため、思うように歩くのが難しい場合には、主症状や検査結果から、神経損傷が疑われることがあります。

注意すべき点は、患者さんが高齢でもともと足や腰に神経痛や関節痛などを抱えている場合に、それらの症状の悪化と勘違いされる可能性があることです。何か異変を感じたときには、自己判断で整骨院を受診するのではなく、できるだけ早い段階で主治医に相談しましょう。

歩行困難の治療とケア

歩行困難の一般的な治療とケアについてみてみましょう。

はじめに歩行困難の程度や原因を調べる検査が行われます。

腫瘍による神経の圧迫が原因のときには、腫瘍を小さくするための放射線治療がなされ、骨折による神経の圧迫の場合には手術が行われます。状況に応じ、骨破壊を防ぐ目的で薬物治療が併用されることもあります。

痛みや痺れになどによる苦痛が原因となっている場合には、対症療法として鎮痛薬が処方されます。また、筋力や運動機能の低下による場合には、リハビリテーションが行われます。

工夫次第で在宅療養を継続できる

歩行困難となった場合でも、在宅での療養を継続できます。ただし、生活空間に転倒予防の工夫を施す必要があるので、主治医や看護師、保健師、ケアマネージャーなどの専門家に相談し、アドバイスを受けましょう。なお、介護保険をはじめとした公的制度を活用することで、歩行器、杖、車いす、入浴用品などのレンタル・購入の負担を軽減できます。

おかしいと思ったら早めの受診を

痛みや痺れをがまんして無理に歩くと、転倒の可能性が高まり非常に危険です。普段より足を運びにくい、足が重たく感じるといった、異変に気づいたときには、早めに受診をして治療やケアを受けましょう。

 

参考: