食事とがんの発症リスクにまつわるウソ・ホント

国立がん研究センターがん対策情報センターの2014年データによると、男性は4人に1人、女性は6人に1人がいずれかのがんで亡くなっているそうです。日常生活にあるがんのリスクへの関心が高まるなか、「焦げた食品を食べるとがんになる」「断食をするとがんが消える」といった食事内容や栄養摂取にまつわる話を耳にすることがあります。はたして、そのような話の真偽はいかほどなのでしょうか。

今回は食事とがんの発症リスクにまつわるウソ・ホントを探ります。

食事はがんの発症を左右する要因のひとつ

死亡数の多いがんをみると、男性は1位が肺がん、2位が胃がん、3位が大腸がん、女性は1位が大腸がん、2位が肺がん、3位が胃がんとなっており、男女ともに消化器系のがんが上位を占めています。

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「がんを防ぐための新12か条」では、12項目のうち以下の5項目が飲食に関する内容になっており、食事はがんの発症に大きく影響していると考えられます。

  • お酒はほどほどにする
  • バランスのとれた食生活を心がける
  • 塩辛い食品は控えめにする
  • 野菜や果物が不足しないようにする
  • 適切な体重を維持する(消費する以上のエネルギーを摂取しない)

「焦げた食品を食べるとがんになる」の根拠は?

食事には、がんにまつわるさまざまな噂があります。「焦げた食品を食べるとがんになる」という話もそのひとつです。はたして、これには科学的根拠があるのでしょうか。

ここでは、食材を高温で調理した際に生成される2つの物質についてみてみます。

ヘテロサイクリックアミン

「焦げた食品を食べるとがんになる」といわれる理由は、高温で調理されたタンパク質やアミノ酸が作り出す「ヘテロサイクリックアミン」という物質にあります。

ヘテロサイクリックアミンには多くの種類がありますが、その一部に発がん性が確認されています。米国国立がん研究所の報告によると、動物実験でヘテロサイクリックアミンを投与したところ、乳房、結腸、肝臓、皮膚、肺、前立腺などにがんの発症がみられたとのことです。

しかし、この研究における動物への投与量は、私たちが通常の食事から摂取すると考えられるヘテロサイクリックアミンの数千~数万倍にあたります。これは体重60kgの人が毎日1トン以上の焦げた食品を食べることに相当するので、現実的な話ではありません。

よって、焦げた食品の摂取に関しては、それほど心配する必要はなさそうです。しかし、わざわざ焦げたものを食べるようなことは避けたほうがいいでしょう。

アクリルアミド

「アクリルアミド」は野菜や穀類を高温調理した際に発生しやすい物質で、細胞内の遺伝子を傷つける可能性があることから発がん性が懸念されています。国際がん研究機関では、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質」に分類しています。

アクリルアミドが多く含まれる食品には、フライドポテト、炒めた野菜(たまねぎ、キャベツ、もやしなど)、緑茶、パン類などがあります。日常的に口にしているものばかりなので、まったく食べないようにすることは不可能ですし、そのような極端な対応は必要ないと考えられます。しかし、黒焦げのトーストを好んで食べるようなことは、避けたほうがいいでしょう。また、同じものばかりを食べるのではなく、さまざまな食品から栄養をとることをおすすめします。

「断食をするとがんが消える」の根拠は?

がんと食事に関連して、「断食をするとがんが消える」という話がありますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。

私たちが食べものを食べると、胃や腸はそれらを分解し、消化して栄養を吸収するために働きます。そして、およそ18時間かけて残ったカスを大便として排泄します。つまり、胃や腸は長時間働き続けているのです。

さらに、腸内には宿便と呼ばれる食べ物のカスや老廃物がたまります。それは、毎日規則正しく排便のある人も例外ではありません。

しかし、胃に食べものを入れず空腹の状態になると、十二指腸からモチソンというホルモンが分泌されます。モチソンには胃腸の収縮運動を促し、腸内に溜まっているカスや老廃物を外へと出しやすくする働きがあるのです。

このように、断食には胃や腸を休めるとともに、宿便を排泄して腸内を掃除する効果が期待されます。

大腸がんは腸への負担が原因となるため、断食で胃や腸を休めることでそのリスクを低減できると考えられます。また、腸内環境を整えることで免疫力が高まり、がん細胞を攻撃するNK細胞が活性化することがわかっています。

つまり、「断食をするとがんが消える」という表現は正しくありませんが、「断食で腸内環境を整えることで、がんへの抵抗力を維持することにつながる」とはいえそうです。

ただし、断食をするにあたっては、いきなり食事を抜くようなやり方をしてはいけません。まずは、おかゆのような消化吸収の負担が少ない食事に変え、徐々に絶食へと導く必要があります。断食は自己判断ではなく、専門家の指導のもとで実施するようにしましょう。

バランスの取れた食事を心がけよう

がんは生活習慣病であるともいわれ、食事と深い関連があると考えられます。毎日の食事への気配りは、がんの発症リスクを下げるためにも、健康を維持するためも重要です。過食や小食は免疫力の低下を招き、がん発症リスクを高めることになります。炭水化物、タンパク質、脂質、糖質のほか、ビタミン類やミネラル類などをバランスよく、多くの種類の食品から摂取するように心がけましょう。

 

参考: