がんの治療・療養中に行われる在宅酸素療法(HOT)について

がんの自宅治療・療養の際に、酸素療法が必要になる場合があります。しかし、酸素吸引をしながらの療養生活を想像することができないという人は多いでしょう。今回は、がんの自宅療養において呼吸をサポートする在宅酸素療法(HOT)についてご紹介します。

在宅酸素療法とは

酸素療法は、低酸素状態となった組織の機能を酸素吸入によって改善し、呼吸困難の症状を軽減するために行われます。これを自宅で実施するのが在宅酸素療法で、Home Oxygen Therapyの頭文字からHOT(ホット)と呼ばれます。

簡単な酸素吸入の機械を自宅に設置し、鼻の下にカニューラ(酸素が出る管)やマスクを付けて酸素吸入をしながら日常生活を送るというのが、在宅酸素療法の具体的な内容です。患者さんにとって慣れ親しんだ自宅で過ごすことができるため、精神的な安定が期待できます。

在宅酸素療法は、規定の条件を満たす場合や医師が必要と判断した場合には健康保険が適用されます。費用は患者さんの年齢や利用する公的制度によって異なるので、かかりつけの医療施設にてご確認ください。また、在宅酸素療法に必要な機械の設置、定期点検などの作業は、主に医療機器メーカーが担当します。専門的な知識や技術が必要な作業を、患者さんやご家族が行う必要はありません。

在宅酸素療法が必要になる要因

在宅酸素療法が必要になるのは、呼吸によって体に必要な酸素を十分に取り込めず呼吸困難が起きたときです。

呼吸困難の自覚症状は、「息苦しい」「呼吸しづらい」など人それぞれです。軽度の場合は自覚症状がないこともあります。

患者さんの訴えから呼吸困難の状況や程度を判断することは難しいため、医師はPaO2(動脈血酸素分圧)や、パルスオキシメーター(経皮的動脈血酸素飽和度測定器)による酸素飽和度から推測されたPaO2の状況といった検査結果をもとに、酸素療法が必要かどうかを判断します。

呼吸困難が生じる要因としては、次の3点が挙げられます。

  • 肺および気管支などの呼吸器の影響
    腫瘍が大きくなることによる、肺の呼吸容積の減少や気管・気管支の圧迫。胸水。肺切除術による肺容積の減少。薬物、放射線治療による肺炎。がん性リンパ管炎。肺炎、気管支炎。持病による慢性気管支炎、肺気腫、気管支ぜん息の悪化など。
  • 呼吸器以外の影響
    心不全。心のう水。大量の腹水による横隔膜の圧迫。頸部原発のがんや転移によるがん、がんに伴う浮腫による上気道の狭窄。便や腸内ガス貯留による横隔膜の圧迫。強度の貧血など。
  • 心理的な影響
    がんの診断を受けたことや予後についての不安、精神的ストレス。

在宅酸素療法における注意点

在宅酸素療法で最も重要なポイントとなるのは禁煙です。喫煙は、肺や気管支などの呼吸器だけでなく全身にも、そして病状にも悪影響を及ぼします。それだけでなく、酸素には助燃性があるため、酸素療法中に喫煙すると酸素を送る管へ引火する危険性があるのです。火傷や火災の原因にもつながり、大変危険ですので喫煙は絶対にやめましょう。

酸素を説明書どおりに正しく使用し、火気の取り扱いに注意を払えば、過度の不安を感じる必要はありません。次に挙げたポイントを確認しておきましょう。

  • 酸素供給機器を正しく取り扱う
    酸素供給の方式は、酸素濃縮器、液体酸素、酸素ボンベなどの種類があります。それぞれ扱い方が異なるので、貸出を受ける際にきちんとチェックしましょう。トラブルが起きた場合の対処方法や24時間対応の連絡先なども併せて確認しておくと安心です。また、酸素の供給量は医師の指示を必ず守りましょう。
  • 環境を整える
    カニューラを装着しながら生活するため、酸素の管が家具に引っかかったり、折れ曲がったりしないようにしなければなりません。障害物となり得るものを片付けたり、動線を見直したりして、生活環境を整えましょう。
    また、引火防止ために、酸素供給の機材は火気から2m以内では絶対に使わないでください。厚生労働省がホームページにて注意喚起をしているので、一度ご覧になることをおすすめします。
  • 災害時の備えをする
    酸素濃縮器は、停電時に使うことができません。非常時に備えて、電源が不要なポータブル型・トランスポータブル型の酸素濃縮器や、携帯用酸素ボンベなどを用意しておきましょう。

医師の指示を守って安全・快適に取り組もう

在宅酸素療法は24時間体制で酸素を吸入するので、状況によっては機器の操作や管理が生じる可能性があります。これから在宅酸素療法を始める人にとっては、なじみのない作業が必要になることに不安を感じるかもしれません。しかし、これまで多くの患者さんが安全に在宅酸素療法に取り組んでいます。あまり難しく考えないようにしましょう。快適な療養生活を過ごすためは、医師の指示をきちんと守ることが大切です。また、疑問や不安がある場合は、どんなに小さなことでも専門職に相談してください。

参考: