延命効果も期待できる?緩和ケアの早期導入

がんの緩和ケアは、終末期医療のイメージが強いようです。しかし、2002年に世界保健機構(WHO)が「治療の早期から開始するべき積極的な医療」と定義し、現在では治療の早い段階から受けることを推奨しています。今回は、QOLの向上だけでなく延命効果も期待できる緩和ケアについてご紹介します。

がん治療における緩和ケアの重要性

がんの生存率は上昇傾向にありますが、重い病気であることに変わりはありません。そして、がんは痛みをはじめとした肉体的苦痛だけでなく、不安やうつなどの精神的苦痛、経済的な問題に代表される社会的苦痛、生きる意味を思い悩むようなスピリチュアルペインと呼ばれる苦痛を引き起こすことがあるのです。

痛みや不安をがまんしていると徐々に心身が衰弱し、がんの治療に支障が出るケースがあります。どんなに小さな苦痛でも、がまんせずにケアをすることはとても大切なのです。

緩和ケアの疼痛治療は、がんが進行したときだけに受けるものではありません。治療前の痛みであっても、担当医との協力のもとに必要な治療が行われます。また、体の痛みだけでなく、病気や治療、医療費に対する不安も緩和ケアの対象です。さらには、患者さんだけではなく家族へのサポートも含みます。このように、緩和ケアはさまざまな心身の苦痛を軽減し、QOLや治療効果の向上をはかるものなのです。

早期からの緩和ケアによる延命効果の可能性

2010年にアメリカのマサチューセッツ総合病院の研究チームが『New England Journal of Medicine』に発表した試験結果の報告は、緩和ケアによる生存期間延長の可能性を期待させるものとして大いに注目されました。この試験について、詳しくみてみましょう。

試験の内容

試験の対象は転移をともなう非小細胞性肺がんの患者151人で、がんの標準治療のみを基本とするグループと、標準治療に加えて緩和ケアを受けるグループの2つに分けて経過を追いました。

標準治療+緩和ケアのグループは、がんの転移が診断されると早期から定期的な緩和ケアを受けました。一方、標準治療のみを基本とするグループは、必要なときだけ緩和ケアを受けています。

QOLの向上だけでなく抑うつの予防効果も

標準治療のみを基本とするグループより、早期緩和ケアを受けたグループのほうがQOLが高く、抑うつ症状を訴える患者が少ないという結果が示されました。

早期緩和ケアの有無で生存期間に約3カ月の差が生じる結果に

生存期間の中央値(データの真ん中の値)は、標準治療のみを基本とするグループが8.9カ月、早期緩和ケアも受けたグループが11.6カ月で、後者のほうが約3カ月長いという結果になりました。

早期緩和ケアを受けたグループの患者は終末期の化学療法が減少し、ホスピスサービスの利用が増加する傾向がありました。また、「コーピング(対処法)」「家族ケア」「意思決定支援」などの緩和ケアを受けたとのことです。

早期からの緩和ケアによって生存期間が延びた理由は明確にされていませんが、さまざまな要因が絡みあっているものと考えられています。

診断と同時に緩和ケアも考えよう

早期からの緩和ケアによる延命効果の可能性は、ほかの研究結果でも示されています。将来的に早期緩和ケアの有効性が明確になるとともに、ケアの内容についても吟味されることが期待されます。

がんと診断されることは衝撃が大きく、すぐには緩和ケアにまで考えが及ばないかもしれません。しかし、がんはさまざまな苦痛を強いられる可能性が高い病気です。緩和ケアには身体面・精神面双方の苦痛を和らげる効果があるので、できるだけ早い段階から受けてみてはいかがでしょうか。

 

参考: