がん治療中こそ良質な睡眠が大切

がんの発症リスクとして注目されているのが生活習慣です。そのなかでも特に気をつけたいのが睡眠だといわれています。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、体の機能を回復させたり、免疫力を向上させたりしています。ところが、がん治療で用いられる薬のなかには睡眠を妨げる作用を持つものがあり、服用中は上質な睡眠をとることが難しくなる場合があります。

今回は、がんの治療中に良質な睡眠をとるための工夫について考えてみましょう。

体は睡眠中に元気を取り戻す

脳下垂体という器官から分泌されるホルモンによって、人間の体は正常な状態に保たれています。そのホルモンは成長ホルモンと呼ばれ、主に成長を促し代謝をコントロールする役割を担っています。具体的には、以下のような働きです。

  • 身長や骨格の成長を促す
    骨細胞の分裂や増殖を促して、身長や骨格が成長させます。
  • 疲労やケガからの回復を促す
    体組織が疲労・破損したときに、その修復や再生を促します。
  • 抵抗力を高め、生活習慣病を予防する
    体力を回復させることで、病気への抵抗力を高めます。
  • その他
    脂肪の分解、髪の毛の発育などに関与しています。

このように、成長ホルモンは疲れたり傷ついたりした体の組織を回復・修復・再生することで、健康な状態を保つ役割を果たしているのです。

この成長ホルモンが脳下垂体から分泌されるのは、睡眠中です。特に眠り始めてから3時間ぐらいで現れる深い眠りのときに、もっとも多く分泌されることがわかっています。

また、睡眠中には骨髄で白血球、赤血球、リンパ液などが生産され、病気に対する抵抗力や免疫力を維持しています。

がん治療・療養中には、体力を維持して体の組織を修復・再生させる働きを高めることが重要になります。そして、それを果たすには継続3時間以上の良質な睡眠が必要なのです。

がん治療中の不眠の原因

がんの治療中に睡眠障害を発症する理由は、大きく分けて以下の4つが考えられます。

  1. 心因反応
    治療に対する不安や、生活が変化することへの不安などが原因となって、不眠を発症することがあります。
  2. 環境変化
    治療のために休職・退職したり、長期入院をしたりといった生活環境の変化がストレスとなり、不眠を発症することがあります。また、ベッドや部屋が変わったことが、不眠の原因になるケースもあります。
  3. がんの症状
    消化不良、痛み、発熱、呼吸困難、ほてり、かゆみなど、がんが引き起こす症状によって睡眠が阻害される場合があります。
  4. 治療用薬物による反応
    がん治療に用いられる薬が、不眠の原因となることがあります。例えば、中枢神経系の薬は眠気を阻害する可能性があります。代謝拮抗薬や抗痙攣薬、副腎皮質ホルモン薬などにも、睡眠を妨げる作用が確認されています。

良質な睡眠をとるための工夫

良質な睡眠をとるには、具体的にどうすればいいのでしょうか。まずは、自分が眠れない理由を明確にしましょう。次に、その理由を解消する工夫をします。

  1. 心因反応が原因の場合
    不安を解消するには、医師や家族とのコミュニケーションが不可欠です。病状や治療方針に不安がある場合は、遠慮をせずに納得のいくまで医師と対話しましょう。また、自分の理想とする治療法を選択できるように、相談や情報集めをすることも大切です。
  2. 環境の変化が原因の場合
    入院中は少しでも快適に過ごせるように、積極的に工夫をしましょう。例えば、枕に違和感があるときは、自分に合うものに替えてみるといいかもしれません。また、可能な範囲で生活のリズムを整えましょう。朝日を浴びたり、軽い運動をしたり、日中に散歩をしたりして、生活にメリハリをつけることも大切です。
  3. がんの症状が原因の場合
    痛みを感じる場合は疼痛治療を受けるなど、積極的に医師に相談することが大切です。眠れないほどの症状は、それだけで体力を消耗することにもなりますから、がまんしないようにしましょう。
  4. 治療用薬物による反応が原因の場合
    使用している薬によって睡眠障害が発症している場合はすぐに医師に相談しましょう。
  5. その他、日常的に取り入れたい工夫
    入浴が可能な場合は、ぬるめのお湯にゆったりとつかります。長すぎる入浴は体力を消耗し、かえって眠れなくなるので、体が温まった時点であがるようにするといいでしょう。また、みぞおちから下だけを湯につける半身浴も効果があるといわれています。
    お風呂に入れない場合は、足湯やシャワーにしましょう。蒸しタオルで顔や首筋などを拭くのも効果的です。
    また、音楽を聴いたり読書をしたりすることも効果があるようです。

自然治癒力を高めるためにも質の高い眠りが必要

がん治療・療養中は心身ともに不安定になる傾向があるので、「病気に立ち向かって、自分らしい生き方をしたい」と気力を充実させることがとても重要です。そのためにも、良質な睡眠ができているかどうかをチェックしてみましょう。質の高い睡眠はストレスに打ち勝つ力を養い、自然治癒力の維持・向上にもなるのです。

 

参考: