がん治療・療養中の排尿障害について

がん治療による後遺症や副作用として、排尿障害が起こる可能性があります。これからがん治療を受ける予定の人にとっては大きな心配ごとのひとつであり、理解しておきたい症状です。そこで今回は、がん治療の影響による排尿障害のメカニズムと対処方法についてご紹介します。

排尿障害のメカニズム

がんの治療・療養中に生じる排尿障害の主な原因としては、がん自体の症状、手術の後遺症、薬物治療の副作用が挙げられます。

  • がん自体の症状
    尿道を囲む位置にある前立腺ががんになると、腫瘍が大きくなるにつれて尿道が圧迫されて排尿に問題が生じます。また、膀胱がんでは、腫瘍のために膀胱の弛緩や収縮ができなくなることで排尿障害が起こります。
  • 手術の後遺症
    直腸がんや女性生殖器がんの手術の際に、排尿機能を司る神経が損傷することで起こる排尿障害です。膀胱に尿が溜まっているにも関わらず尿意を感じない、十分な排尿ができず残尿がある、尿失禁(尿漏れ)といった症状がみられます。
  • 薬物治療の副作用
    抗がん剤はがん細胞のみならず全身の細胞に影響を与えるため、排尿を司る神経に影響を及ぼすことで排尿障害を引き起こすことがあります。膀胱に尿が溜まっていても尿意を感じないのが主な症状です。

排尿障害の治療法や対処方法

次に、排尿障害に有効といわれる治療やケアを見ていきましょう。

  • 骨盤底筋体操
    尿道や肛門、膣を締める運動を繰り返し行い、排尿に必要な筋力や尿道を閉める筋力を鍛える方法です。尿失禁に効果があるといわれています。
  • 排尿リハビリテーション
    手術による神経損傷が原因で起こる排尿障害の場合、膀胱に刺激を与えるリハビリテーションが行われます。導尿によって排尿を補助しながら、膀胱に弛緩と収縮の刺激を与えるのが、その具体的な内容です。
    手術後に自然排尿が不可能な人は4時間ごとに導尿を行い、定期的に膀胱を収縮させる必要があります。その際には、尿量が300~400mlになるような調節も必要です。
    手術後に自然排尿が可能な場合は、自然排尿後の残尿が50mlを超える人は導尿による膀胱訓練や、カテーテルを使った人工的な排尿が必要になります。
    また、自然排尿が可能で膀胱訓練を行っているケースでは、自然排尿後の残尿量に応じて導尿回数を決めます。自然排尿後の残尿が100mlを超えている場合には自然排尿ごとの導尿を、50~100mlの場合には1日2〜4回の導尿を行います。そして、残尿量が30~50mlの場合は1日1~2回の導尿を行うか、訓練を終了します。
    手術後から退院までの排尿状態が医師や看護師によって細かく評価され、在宅療養中の導尿回数が決められます。自己導尿が困難な場合では、家族による導尿が指導される場合もあります。
    また、尿路感染症を防ぐために、1日の尿量が1000ml以上になるように水分の補給が必要です。
  • 薬物療法
    軽い排尿機能障害の場合には、膀胱の収縮を促す副交感神経刺激薬や、尿道の抵抗を少なくするα遮断薬が処方されます。
  • 抗がん剤の量の調整
    排尿を促す効果がある利尿薬が処方されます。それでも改善がみられない場合は、抗がん剤の量を減らす調整がなされます。自宅療養で、水分を摂取しているにも関わらず10時間以上排尿がない場合は、できるだけ早く受診するようにしましょう。

排尿障害と付き合うために

排尿障害を放置すると、体内で不要になった老廃物を排泄できずに膀胱に溜めこむこととなるため、病原菌が繁殖しやすくなります。そして、病原菌が腎臓にまで広がると、全身に悪影響が及ぶ危険性があります。残念ながら、排尿障害は短期間での治療は難しいのが現状です。しかし、適切な治療やケアを受けることで、多くの患者さんが排尿障害を改善しています。排尿障害は羞恥心を伴う問題ですが、きちんと向き合うことが大切です。焦ることなく適切な治療を受け、毎日のセルフケアを欠かさないようにしましょう。

排尿障害の症状は精神的な苦痛に加え、失禁の場合は陰部のただれや臭い、衣服の漏れなどの不安を引き起こします。これらの不安の多くは、失禁装具を適切に使うことで解消できます。とはいえ、特に女性は尿取りパッドを使うことに抵抗を感じ、生理用品で代用する人がいるかもしれません。しかし、生理用品は粘丁度の高い経血を吸収する構造であるため、水様の尿の吸収には適していないのです。また、用途に合わない装具を使うと、陰部のただれをはじめとした肌トラブルや感染症の原因にもなりかねません。

尿取りパッドは、水分を吸収するポリマーが生理用品の2~30倍以上も配合されており、肌が触れる部分に尿が留まらない構造になっています。さらに、消臭ポリマーを配合するものでは、尿のアンモニア臭を消す効果があります。尿取りパッドを適切に利用していれば、他人に知られることはほとんどありません。インターネットで購入できる商品もあるので、自分に適した尿取りパッドの活用をおすすめします。

ひとりで悩まずに相談しよう

排尿障害は、患者さん自らが相談しないと医師が問題を認識できません。羞恥心から相談するのがためらわれるかもしれませんが、ひとりで悩んでいては心身ともにストレスを高めてしまいます。がんの治療・療養生活を少しでも快適に過ごすためにも、排尿障害による合併症や皮膚トラブルなどを予防するためにも、あなたが話しやすいと感じる専門家(医師、看護師、保健師など)に相談しましょう。

参考: