発がん性が疑われる「アクリルアミド」の基礎知識

発がんの要因になると考えられる物質については、さまざまな研究が続けられています。そのなかでも、近ごろ最新の研究結果が公表され、農林水産省や厚生労働省が発がん性物質として情報提供をしている物質が「アクリルアミド」です。今回は、発がん性物質といわれるアクリルアミドについての基礎知識と、がんの療養中でも取り組める対策についてご紹介します。

アクリルアミドとは

アクリルアミドは食品をはじめ、塗料や接着剤、合成樹脂などに含まれる物質です。ここでは食品にしぼってご紹介します。

アクリルアミドの作用

ごく微量であっても遺伝子の損傷を起こし、長期間または反復的な暴露による神経系への影響、末梢神経の損傷、発がん性を示す作用の可能性が指摘されています。また、短期間の暴露であっても気道、目、皮膚、中枢神経系に影響を与えることがあります。なお、体内に取り込まれたアクリルアミドが蓄積されることはありません。農林水産省のwebサイトでは、「経口投与したアクリルアミドの34%が24時間以内に尿中に排泄されている」との研究報告が紹介されています。

食品中にアクリルアミドが生成される仕組み

アクリルアミドは、食品に含まれるアスパラギン(アミノ酸の一種)と果糖、ブドウ糖をはじめとする還元糖などの物質が、「焼く」「揚げる」「焙る」といった調理で120度以上に加熱される際に起きるアミノカルボニル反応(メイラード反応)の過程で生成されると考えられています。

また、これとは別の生成過程も指摘されており、食品中にアクリルアミドが生成される仕組みは完全に解明されていないのが現状です。

アクリルアミドを含む食品

アクリルアミドは、加熱調理していない生の食品には含まれません。また、加熱調理であっても茹でたり、蒸したりした食品には含まれない、もしくは含まれていてもごく微量であることが報告されています。

アクリルアミドが高濃度で含まれる食品は、炭水化物を多く含む原材料を120度以上の高温で調理したものです。これは市販の加工食品だけでなく、家庭で調理されたものも同様です。代表的な食品としては、ポテトチップス、フライドポテト、クッキー、ビスケットなどが挙げられます。

また、高温で焙煎したコーヒー豆、ほうじ茶、煎り麦などにも高濃度のアクリルアミドが含まれます。アクリルアミドには水に溶けやすい性質があるため、抽出したコーヒーやお茶にも含まれていることが確認されています。

さらに、タバコの副流煙にもアクリルアミドが含まれていることが知られています。

アクリルアミドの影響

人がアクリルアミドを経口摂取した際の影響については、まだ詳細が明らかになっていません。

国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)による発がん性の評価では、2A(人に対しておそらく発がん性がある)に分類されていますが、実際の発がん作用は現時点で確認されていません。

内閣府・食品安全委員会は、2016年4月5日に食品を加熱する際に生じるアクリルアミドに関する評価結果を公表。マウスやラットを用いた動物実験の結果と、日本人が食品から摂取すると推定されるアクリルアミドの量を比較し、健康への影響は「懸念がないとはいえない」と評価しています。つまり、アクリルアミドが健康に与える影響はないとはいえないので、摂取しすぎないように意識することが大切です。

アクリルアミドの摂取を防ぐには

アクリルアミドは、これまでの食生活や食文化でも摂取されてきた物質で、完全に避けることはできません。しかし、摂取量をコントロールできることが各研究から明らかになっています。そのポイントとなるのが、レシピや調理方法の工夫です。

  • レシピの工夫
    レシピを見直し、可能な範囲で材料をアクリルアミドの原因となる物質の含有量が少ない食品と置きかえます。例えば、小麦粉と米粉では、米粉のほうが原因物質のアスパラギンが少ないため、全量を小麦粉とするのではなく、米粉とのブレンドにして調理するとよいでしょう。
  • 食材の保存や下ごしらえの工夫
    炒めたり、揚げたりするじゃがいもは、常温(6度以上)で保存しましょう。低温で保存すると、高温調理の際にアクリルアミドが生じる原因となるブドウ糖と果糖が増えてしまいます。なお、低温保存したいも類は炒めものや揚げものに使うのではなく、茹でるか蒸して調理することをおすすめします。また、野菜類は加熱前に水にさらしたり、下茹でしたりすることも効果的です。食品中の水分量を増やすと、アクリルアミドが生じる原因となる水溶性の成分を減らすことができます。
  • 加熱方法の工夫
    炒めるときは火力を弱めにし、食材をよくかき混ぜて焦がさないようにします。また、蒸す、茹でるなどの調理方法を組み合わせ、炒める時間を短くしましょう。ただし、アクリルアミドのことばかりを気にして加熱が不十分だと、食中毒の危険性があるので注意してください。

バランスの取れた食事がアクリルアミド低減につながる

厚生労働省や農林水産省では、アクリルアミドを含む食品の摂取を避けようとするのではなく、偏りのないバランスのとれた食生活を送ることを推奨しています。また、野菜や果物を多く含む食品をバランスよく食べることは、アクリルアミドの低減にも有効だと伝えています。

がんの治療・療養中のアクリルアミドの摂取を低減するためにも、今回ご紹介した対策に加えてバランスの取れた食事を心がけましょう。

参考: