話題のがん治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」とは?

最新のがん治療として、「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」について見聞きしたことのある人は多いのではないでしょうか。新たながん治療法というと、効果や副作用、費用などが気になるところです。そこで今回は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)についてご紹介します。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のしくみ

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、放射線に含まれる「中性子」と、中性子と反応を起こしやすい性質を持つ「ホウ素-10」による治療法です。ホウ素-10を取り込んだがん細胞に中性子を照射し、がん細胞内で核分裂を起こすことで、がん細胞だけを集中的に破壊することができます。この核分裂は、がんの細胞の直径にも満たないごく狭い範囲での反応のため、がん細胞の周りの正常な細胞を傷つけることがありません。また、手術に比べて患者さんのQOLが保たれることも利点です。なお、この治療に用いる中性子は、研究用原子炉(KUR)、またはサイクロトロンと呼ばれる装置にて作られます。

ホウ素-10をがん細胞だけに行き渡らせるには

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を行う際は、がん細胞のみにホウ素-10を行き渡らせる必要があります。しかし、ホウ素-10単体ではがん細胞が取り込みません。そこで着目されたのが、がん細胞が細胞分裂を繰り返す際にアミノ酸を取り込む性質です。必須アミノ酸であるフェニルアラニンとホウ素-10の化合物「ボロノフェニルアラニン(BPA)」を使うことで、がん細胞だけにホウ素-10を行き渡らせることができます。したがって、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、この薬剤を点滴する前処置が必要になります。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の効果や副作用、費用は?

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療対象になると考えられるがんの種類、副作用や費用(2016年4月末時点)についてみてみましょう。

  • 治療対象
    現時点では、悪性脳腫瘍、悪性黒色腫(メラノーマ)、頭頚部腫瘍が治療対象として考えられていますが、肺がん、肝臓がん、中皮腫などについても治療実績があります。
    京都大学の原子炉実験所・粒子線腫瘍学研究センターによると、「アスベストによる悪性胸膜中皮腫の患者に対して世界初のBNCTを試行し、その数日後には胸部の激痛の消失、QOLの著しい改善、腫瘍の縮小といった効果が確認された」と報告されています。
  • 治療の副作用
    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は正常な細胞を傷つけないことが特徴ですが、影響が皆無というわけではありません。放射線による正常な細胞への障害は、治療後、急激に起きる場合と1~2年後に起きる場合があります。
  • 治療期間
    状況に応じ、30~60分間の照射1~2回行います。治療期間は2~3日です。
  • 治療にかかる費用
    現在は保険適用外のため300万円ほど、将来的に保険が適用されれば150万円ほどになるといわれていますが、明確な提示がなされていないのが現状です。臨床研究として行われる場合は、研究にかかる費用は研究費で補われます。しかし、施設によっても差があるため、詳細は治療を希望する施設に問い合わせることをおすすめします。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を希望する場合は

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に興味がある場合は、どうすればいいのでしょうか?

まずは、正確な情報を収集することをおすすめします。治療を行っている施設や自治体が開設している相談窓口に問い合わせるといいでしょう。また、治療施設や設備会社のホームページでも情報が得られます。

京都大学の原子炉実験所・粒子線腫瘍学研究センターがある大阪府泉南郡熊取町では、治療方法の紹介や治療相談を目的とした「BNCT相談室」が設けられており、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のしくみや、個別のがんへの適応に関する相談に応じています。詳細については、熊取町ホームページをご覧ください。

そして、実際にホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による治療を希望する場合には、がんの進行状況や患者さん自身の体の状態を把握している主治医に相談しましょう。

新たな治療法といえど万能ではない

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を受けたからといって、がんの再発がなくなったり、がんの治療がすべて終了したりするわけではありません。また、がんの部位や状態によっては、手術や別の放射線療法などを組み合わせた治療が行われます。そして、治療後には定期的な検診も必要です。

新たな治療法には希望を感じますが、実際に運用されたときの情報が不足していることが多くあります。不確かな情報に翻弄されることなく、治療に関する疑問は主治医をはじめ専門家に相談し、自分に適した方法を選ぶようにしましょう。

参考: