がん治療中のインフルエンザ予防

毎年猛威を振るうインフルエンザ。万全の対策をしたいところではありますが、がんの投薬治療を受けているときに別のワクチン注射をしても大丈夫なのだろうかと不安に思う人は多いと思います。はたして、がんの治療中にインフルエンザの予防接種を受けることはできるのでしょうか?

今回は、がん治療中の予防接種について探ってみます。

がん治療中のインフルエンザは重症化のリスクあり

がん治療中は免疫機能が低下することがあり、そのようなときにインフルエンザにかかると重症化する危険性が高いと考えられます。

免疫機能の低下の原因には、体力の低下や、免疫作用を維持する働きに関わる脾臓(ひぞう)の摘出、放射線治療の影響などが挙げられます。また、骨髄移植を受けた人、急性白血病や慢性リンパ性白血病などの治療中あるいは治療終了後5年未満の人も、強い免疫抑制が働いている状態です。さらに、免疫抑制を伴う抗がん剤や副作用を抑制する薬の影響による場合もあります。以下のような場合には特に注意が必要です。

強い免疫抑制を伴う薬剤を使用中の場合

アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤などの抗がん剤による治療を受けている人や、スニチニブやイマチニブなどの分子標的薬を使用中の人は、強い免疫抑制が働いていると考えられます。

副作用対策が免疫機能を抑制している場合

がん治療薬だけでなく、副作用を抑えるための薬剤によって免疫抑制が働いている場合があります。例えば、高用量の吐き止めとしてステロイド剤を使用している人は、免疫機能を抑制していると考えられます。

LH-RHアゴニスト、抗エストロゲン剤、インターフェロン、インターロイキン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ベパシズマブなどの分子標的薬は強い免疫抑制を伴わないと考えられます。とはいえ、がん治療中は健常時より免疫機能が低下している可能性があります。上記のような治療薬を用いていても、インフルエンザに対して注意を払う必要があることは認識しておいてください。

また、薬や治療法が同じでも、免疫抑制の度合いは人によって異なります。まずは主治医に相談して、自分の状態を知ることが大切です。

インフルエンザの予防接種を受けるメリットとは

インフルエンザにはいくつもの型があるため、1種類のワクチンだけで完全な予防ができるわけではありません。それでも予防接種が奨励されるのは、摂取したワクチンが有効な型が流行した場合にインフルエンザにかかりにくくなる、あるいはかかったとしても重症化を防げるというメリットがあるからです。

インフルエンザの予防接種に使われるのは不活化ワクチン(ウイルスを死滅させ毒性をなくしたもの)なので、がんの治療中でも安心して接種できます。しかし、効果の現れ方や接種のタイミングには個人差があるため、自分の免疫機能の状態を確認する必要があります。

インフルエンザの予防接種を受けるタイミング

がんの治療によって免疫力が抑制されていると、予防接種の効果が十分に得られない可能性があります。

それでは、どのようなタイミングで予防接種を受ければいいのでしょうか? また、予防接種を受けたことで、がんの治療スケジュールへの影響はないのでしょうか?

インフルエンザのワクチンは、接種してから抗体ができるまでに約2週間かかるといわれています。そのため、インフルエンザの流行が予想される1カ月ほど前には接種しておくといいでしょう。しかし、がん治療で免疫機能が低下することを考慮すると、治療開始の2週間前には接種しておきたいところです。

がん治療との兼ね合いがありますので、主治医と相談のうえで予防接種のタイミングを決めるようにしてください。

日常的なインフルエンザ予防をお忘れなく

インフルエンザを防ぐには予防接種だけに頼るのではなく、日常的な心がけが重要です。下記のインフルエンザ予防のポイントを確認しておきましょう。

  • 手洗い
    石けんを使って手のひらや甲、指の間、爪の先、手首などをていねいに洗います。アルコール性の消毒液を併用すると、より効果的です。
  • うがい
    口の中に雑菌を溜めないように、定期的に洗い流しましょう。医師にうがい薬を処方してもらってもいいですが、水だけでも十分に効果はあります。
  • 人混みに出かけない
    インフルエンザをはじめとした感染症は、ほとんどが人からうつります。罹患のリスク低減のために、なるべく人混みを避けましょう。

万が一インフルエンザにかかってしまったときは

急な発熱、全身のだるさ、咳、鼻づまり、悪寒などを感じたら、インフルエンザだと確定していなくても、すぐに主治医に相談しましょう。インフルエンザを発症すると、がん治療を中断する必要があるかもしれません。重篤化を防ぐためにも、早期の診断が重要です。

参考: