がんはどのくらい遺伝する?

がんの定期検査の際に、問診で家族の病歴を聞かれることがよくあります。また、日常会話の中で「がん家系」という言葉を耳にすることもあるでしょう。特に乳がんは、家族や血縁者にかかった人がいると発生リスクが高いと言われています。では、乳がん以外ではどんながんが遺伝するのでしょうか? そして、実際に遺伝によるがんが発症するケースはどのぐらいあるものなのでしょうか? 今回は、遺伝性のがんについてご紹介します。

遺伝性のがんとは?

要因に遺伝が関与するがんは、家族性腫瘍や遺伝性腫瘍と呼ばれます。遺伝性腫瘍はよく見られるがんであるケースも、珍しいがんであるケースもあります。よく見られるがんの場合は、家族や血縁者ががんにかかったといっても、その家系にがんになりやすい遺伝子があるとは限りません。

遺伝性腫瘍の多くは正常な細胞ががんになるのを防いでいる遺伝子に異常があり、それが親から子へと伝わっているとされています。通常、がんを防ぐ遺伝子は母親と父親からそれぞれ1つずつ受け継ぎますが、変異した遺伝子を受け継いだ場合はがんを防ぐ働きが弱く、がんになりやすくなるといわれているのです。家族や血縁者に若くしてがんにかかった人や何回もがんにかかった人がいる場合、何人も同じがんにかかっている場合には、遺伝的にがんになりやすい家系である可能性があります。

ただし、実際の正常細胞からがん細胞への変化は遺伝子だけが関与しているのではなく、いくつもの要因が組み合わさった結果であると考えられています。

遺伝子検査とは?

がんになりやすい異常な遺伝子を持っているかどうかを調べる遺伝子検査は遺伝子診断とも呼ばれ、一般的には血液が用いられます。ヒトの遺伝子は約25,000種類といわれていますが、そのすべてを調べるわけではなく特定の遺伝子について解析が行われます。

がんを抑制する遺伝子BRCA1に異常があることがわかった女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、がんの発症を防ぐために健康な乳房や卵巣、卵管を切除したニュースは大きな話題になりました。

微小ながんの有無や前がん状態のリスク調査、分子標的治療薬の投与前に薬剤の効果を見積もる目的でも遺伝子検査が行われるようになってきています。

遺伝によるがんの割合は?

それでは、遺伝によるがんは全体の何%ほどを占めるのでしょうか? 2015年12月に報告されたワシントン大学医学部による研究では、遺伝ががんに寄与する割合を推察するべく4,000例以上のがんについて生殖細胞の変異を調査。その結果、12種のがんで遺伝が関与する割合が以下のように示されました。

  • 卵巣がん 19%
  • 胃がん 11%
  • 乳がん 9%
  • 前立腺がん 8%
  • 肺扁平上皮がん 8%
  • 神経膠腫 8%
  • 頭頸部がん 8%
  • 子宮体がん(子宮内膜がん) 7%
  • 肺腺がん 7%
  • 腎臓がん 5%
  • 神経膠芽細胞腫 4%
  • 急性骨髄性白血病 4%

この報告で特に注目されているのは、乳がんに関連する遺伝子として知られているBRCA1BRCA2の異常が、胃がんや前立腺がんの患者にも多く見出されたことでした。

研究がさらに進み、遺伝とがんの関係がさらに明確になっていくことが期待されます。

ぜひ専門家に相談を

遺伝性腫瘍についての心配ごとや遺伝子検査を受診すべきかどうかの判断、あるいは遺伝子検査の結果の捉え方、結婚など今後に関する悩みなどは、ぜひ専門家に相談しましょう。

相談窓口

「家族性腫瘍相談外来」「遺伝相談」「遺伝相談外来」「遺伝カウンセリング」など医療機関によって名称はさまざまですが、遺伝性のがんに関する相談窓口があります。お住まいの地域のがん相談支援センターに問い合わせてみるとよいでしょう。

患者や家族の会

がんの療養生活を乗り切る上で、同じような経験を持つ者同士ならではの情報交換や支え合いの場となる患者会はとても大きな存在となりえます。家族性大腸ポリポーシス、網膜芽細胞腫、多発性内分泌腫瘍症、フォン・ヒッペル・リンドウ症候群など、遺伝性のがんについても患者や家族の会があり、貴重な情報交換の場となっています。必要な場合には窓口相談やインターネット検索で情報を集め、連絡をとってみるとよいでしょう。


参考: