「免疫老化」を防ごう!

加齢とともに忍び寄る老化。お肌にハリがなくなってきた、小じわが気になる、新聞を読むときに眼鏡が必要になったなど、老化の兆候を感じることがありますね。年とともに老いるのは、実は外見だけではありません。体の防御システムを担う免疫系も老化します。そう言われてみれば、若いころに比べて風邪を引きやすくなったなあと思う人もいらっしゃるでしょう。免疫系の老化は、感染症などにかかりやすくなるだけでなく、がんの増加につながるともいわれています。今回は、大切な免疫系の老化について焦点をあててみましょう。

免疫力は40代でピーク時の半分に

免疫力のピークは20代だと言われています。年をとるにつれ免疫力は低下していき、40代にはピーク時の半分になってしまうとか。免疫機能は大きく2つにわけられ、そのうちの獲得免疫と呼ばれるものが老化にともなって衰えることがわかっており、その現象が「免疫老化」と呼ばれています。

以下のような症状が多くあてはまるようでしたら、免疫機能の老化が進んでいるかもしれませんよ。

  • 疲れやすい
  • 手足が冷えやすい
  • 便秘や下痢をおこしやすい
  • 口内炎ができやすい
  • 1年に2回以上、インフルエンザにかかる
  • 風邪を引くとなかなか治らない

体を守る大切な免疫機能、その老化はどのようにしておこるのでしょうか。

免疫老化のメカニズム

獲得免疫に関連する細胞の中で、重要な役割を果たしているのがT細胞です。T細胞は、心臓の少し上にある胸腺という臓器でつくられます。胸腺は思春期以降は加齢するにしたがって小さくなることが知られています。

胸腺の退縮とT細胞の機能低下が相関しているデータはいくつも得られており、高齢者の免疫能の低下の原因として、加齢による胸腺の退縮が推察されています。

そこで、胸腺退縮のメカニズムについて研究が行われています。はっきりしたことはまだわかっていませんが、現段階では酸化ストレスが胸腺の退縮に一役買っているのではないかと考えられています。胸腺の抗酸化酵素の活性が加齢により低下することが報告されており、また、胸腺は他の臓器に比べて酸化ストレスに非常に弱いことも報告されているからです。加齢に伴って胸腺の抗酸化酵素の活性が低下すると、胸腺の退縮がいっそう加速化すると推察されます。

抗酸化食品の助けを借りよう

加齢とともに、生体内に存在する細胞内抗酸化酸素群のはたらきが弱くなるのならば、外から抗酸化物質を補えばよいのではないかと考えられますね。近年は種々の抗酸化物質が脚光を浴びていますが、免疫系の老化を防ぐためにも抗酸化食品に着目してみましょう。

細胞内でも抗酸化作用がある食品を摂ろう

試験管内で調べた実験では活性酸素を消去することができる抗酸化成分でも、細胞内の活性酸素の消去能に関しては、消去能を示すものとそうでないものがあることがわかってきました。したがって、抗酸化作用を期待して摂るのならば、細胞の外だけではなく、細胞の中でも抗酸化作用を示す抗酸化成分を摂ることが勧められます。

細胞内外を問わず抗酸化能力を示した成分と、それを多く含む食品を以下にご紹介しましょう。

  • エピガロカテキンガレート:緑茶
  • ルテオリン:ピーマン、セロリ、ししとう
  • フィセチン:ワイン、緑茶
  • アスコルビン酸:ブロッコリー、赤ピーマン、菜の花などの野菜や果物
  • イソハンネチン:赤玉ねぎ、パセリ
  • レスベラトロール:赤ワイン

身近な食品が多いので、気軽に食卓にのせられますね。

免疫系の若返りが可能に?

胸腺についてだけではなく、免疫老化のメカニズム解明の研究はさまざまな視点から熱心に取り組まれています。

一般的には、免疫老化は免疫系全体の劣化による非可逆的な現象であると考えられていますが、中には免疫機能の回復の可能性を示唆するような研究報告も出されていますので、以下に見てみましょう。

京都大学大学院医学研究科・医学部の湊長博教授の研究グループは、若いときには存在しないが、年をとるにつれて増加するという新しいTリンパ球集団を発見しました。PD-1陽性リンパ球と名付けられたこの新しいTリンパ球は、免疫記憶の維持に関わる「記憶T細胞」から派生し、加齢するにしたがって蓄積されることがわかってきました。PD-1陽性リンパ球には、通常の「記憶Tリンパ球」ならば持っているはずの獲得免疫応答能はなく、代わりに多量の炎症性サイトカインを産生することが判明しています。加齢とともにPD-1陽性リンパ球が増加すると、免疫抑制状態を引き起こし、さらに、PD-1陽性リンパ球が産生する炎症性サイトカインががんの進展に関与している可能性が考えられています。年をとってもPD-1陽性リンパ球以外の通常のTリンパ球は、若いころと同等の機能を保持していることから、PD-1陽性リンパ球のみを排除することができれば、低下した免疫機能を回復させることができるのではないかと期待が持たれています。

日進月歩の勢いで発展している科学により、免疫老化を効果的に防ぐことができるようになる日もそう遠くはないかもしれません。


参考: