がんの作業療法とは?

がんを患うのと生活動作が不自由になることがあります。しかし、自分らしく生きるということを考えたとき、少なくとも身の回りのことは、自分一人で行いたいですよね。もし、袖に腕を通すといった日常の何気ない動作が難しく感じるならば、「作業療法」の出番です。作業療法は着替え、歯みがき、洗顔といった日常生活を送るうえ上での大切な動作を、一人でできるようにするための訓練をしてくれます。

今回は、リハビリテーションの中の作業療法に着目してご紹介します。

「作業」とは?

「作業」とは、生活をなす人間活動の総称のことですが、そう言われても、ピンとこないかもしれません。普段の生活の中で、当たり前のように行っている「顔を洗う」「髪をとかす」「歯をみがく」「着替える」「トイレで用を足す」「シャワーを浴びる」など、日常のすべての動作がこれにあたります。

ところが、がんの治療後には、体を動かすことが不自由になり、日常の動作がこなせなくなることがあります。例えば、乳がんの術後、腕が上がらなくなり、顔を洗うことや着替え、トイレでお尻を拭くことさえままならなくなることがあります。

そこで、当たり前の動作が難なくできるようになるために行われる訓練が、作業療法です。

「作業療法」とは?

理学療法は、座る、立つ、歩くなど、体の動きの回復を目指した訓練であるのに対し、作業療法は、着替え、食事、家事などの日常生活の動作ができるようにするための訓練なのです。

作業療法では、困難を感じる動作について、体の動きを細かく分け、それぞれに必要な動きの訓練を行い、動作ができるようもっていきます。

作業療法の具体例を、以下に見てみましょう。

  • 乳がんの術後、腕が上がらない

肩および肩から背中にかけての筋肉が張っている場合、マッサージやストレッチなどで緊張をほぐし、腕を上げる動作を繰り返して、腕を上げる練習を行います。これは、肩の痛みの軽減と予防にもつながります。

術後に回復を待って腕を動かさないでいると、肩の関節や周りの組織が固くなってしまい、動作に支障が残る可能性が高くなります。昭和大学保健医療学部の大澤彩先生の調査では、術後平均5年経過している人の約半数が、きつめの瓶のふたを開けることや、重いものを運ぶのにも困難を感じていることが明らかになっています。手術で乳房を温存しなかった人やリンパ節切除した人はもちろんのこと、リンパ節を切除していない人や放射線治療を受けた人も、早めにリハビリを受けることが望ましいとされています。

  • 脳へがんが転移し、手足に麻痺が出て、物を落としたり、つまずきやすかったりする

体の動きは、脳からの指令によって動かすことができます。しかし、半身麻痺が起きると、手足の指などの末端の部位は動かすことが困難になりがちです。そこで、手の場合には、指を折るような動作、物をつまむ、挿すといった動きを毎日繰り返します。足に対しては、足の運び方、またぎ方、しゃがみ方、立ち上がり方をそれぞれ練習します。訓練内容は日々異なることが多いでしょう。日常動作に必要な動きを繰り返すことによって、脳に体の動きを再学習させます。

作業療法士

作業療法を指導してくれるのが作業療法士です。作業療法士は、医療機関のリハビリテーション科、通所リハビリ施設などの介護・福祉施設、精神保健福祉センターなどの行政施設に所属しています。2011年の段階で全国に約5万7千人の作業療法士がいるとのことです。

日常生活上の動作(ADL)能力向上のほか、以下のようなサポートも作業療法士の支援に含まれます。

  • 早期離床の支援

長期間ベッドで安静にしていたことによって起こる心身の機能低下を予防。

  • 心身機能の向上

作業によって全身の機能を高めつつ、不安感を軽減。

  • リンパ浮腫の予防と改善

用手的リンパドレナージや圧迫療法など、種々のアプローチで対処。

  • 自己管理の指導

具体的な管理プログラムの提案。

  • 手段的日常動作(IADL)能力の向上

衣服管理や金銭管理、外出時の交通機関の利用などが可能になるよう支援。

  • 家庭復帰の支援

自宅へ帰るための環境の整備。玄関から始まって、トイレ、浴室、寝室などの段差の有無や手すりの取り付け位置、また、浴槽の高さなどもプロの目からチェック。福祉用具のレンタルについても相談。

  • 社会復帰の支援

復帰のための作業条件や作業環境の調整。現場での練習も支援。

  • 終末期支援

最後まで自分らしく生きることを支援。家族のケアも支援。

作業療法士について詳しくは、日本作業療法士協会(http://www.jaot.or.jp)に問い合わせるとよいでしょう。

作業療法のサポートは、どんな時期でも対象

作業療法の対象は、がん治療後の回復期だけではありません。ちょっとした日常の動作がこなせないと、ストレスもたまりがちになります。日常の動作がスムーズにいかない場合には、ぜひ作業療法を受けることを検討してみてください。


参考: