肝がん:術後の食事の注意点

肝がんの治療では、代表的なものとして、がん病巣を含んだ肝臓の一部分を手術によって切除する治療法が挙げられます。

日本の肝がんの手術は世界的にみてもトップレベルにあるとのことですが、それでも術後に合併症が生じることがあります。合併症の予防には、術後できるだけ早くに運動を始めることが大切であると言われています。体を動かすことにより、腸管の動きを回復させ、飲食ができるようにして、最終的に体調の速やかな回復を促すためです。合併症の予防には体調の順調な回復も重要なのです。

今回は、肝がんの手術後に気をつけたいことの中から、体調の回復にも一役買う大切な「術後の食事」に焦点を当ててみましょう。

いつから食べられる?

肝臓の一部を切除した場合、切り取った範囲がそれほど大きくなければ、術後2~3日くらいで食べものを口にできるようになります。

切除した範囲が大きい場合や、胆道再建を含む手術を行った場合には、食事ができるようになるまでにもう少し時間がかかることが多いようです。

点滴で栄養補給していれば大丈夫?

無理に口から食事をとらなくても、点滴で栄養補給していれば大丈夫じゃないかと思っていませんか? 実は、肝臓の再生を助けるためにも、口から食事をとることはとても大切です。

点滴での栄養補給では、水分の摂取量がどうしても多くなり、体に水分が貯留しがちになります。肝硬変を合併していれば、代謝機能が下がっているので、点滴による栄養補給によって高血糖状態になってしまう恐れも出てきます。したがって、少しでも早く、食事をとれるようにすることが望まれます。

口から食事をとることは、消化管の活動の正常化を促すためにも重要ですので、少しずつでも食べものを口にするようにしましょう。

何を食べたらいいの?

肝硬変などの肝障害がなければ、特に食事に制限はないと考えられています。栄養のバランスがとれた食事を楽しみましょう。ビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜や海藻類の摂取を心がけるとよいでしょう。肝臓の再生のためには良質のたんぱく質を摂取することも大切です。脂肪の代謝が低下している場合もあるので、たんぱく源としては大豆などの植物性のたんぱく質をとることが一般的にはすすめられています。脂肪分をとりすぎると、脂肪肝を助長するので要注意です。

例えば、C型慢性肝炎では、鉄分が蓄積すると症状が悪化することが知られています。病状や肝臓の状態によっては、担当医から食事について何らかの指示がある場合があります。きちんと指示に従うようにしましょう。あるいは、担当医や栄養士に自ら積極的に食事内容について相談するのもよいでしょう。

肝硬変などを合併していたら?

肝がんの切除手術を受けた人は、肝硬変などの肝障害が大きい場合も少なくありません。そのようなときは、食事は何に気をつけたらよいのでしょうか。

アンモニアの蓄積を避ける

たんぱく質が体内で代謝されると、アンモニアができます。肝硬変があると、アンモニアの代謝が低下しやすくなっており、血液中のアンモニア濃度が上がる心配が出てきます。アンモニア濃度が高いと肝性脳症を引き起こして、重篤な場合では昏睡などの意識障害がみられることがあります。

したがって、アンモニアの蓄積を防ぐ観点から、以下の点に気をつけましょう。

  • たんぱく質の過剰摂取を避ける

ただし、過度の摂取制限もよくありませんのでご注意ください。栄養剤としてBCCA製剤などが処方された場合には、食事におけるたんぱく質はどのくらい制限すればよいのか、担当医や看護師に確認するようにしましょう。

  • 便秘を避ける

便秘もアンモニアの蓄積の原因になります。野菜や果物など、水溶性食物繊維を多く含むものを食べるようにしましょう。ヨーグルトや乳酸菌飲料も腸内環境を整えるうえでおすすめです。

鉄分のとりすぎにも注意

肝臓の働きのひとつに、鉄の貯蔵があります。C型肝炎ウイルスの感染が見られる場合には、肝臓に鉄が過剰に蓄積する傾向がありますので、鉄制限食が勧められています。C型慢性肝炎の人は、鉄の摂取量についてくわしく確認しておきましょう。代謝機能が低下している肝臓にも鉄分のとりすぎは負担になりますので、レバーなど鉄分の多い食材を過剰にとらないように気をつけたほうがよいでしょう。特に、鉄のサプリメントを服用したい場合には、担当医にご相談ください。

指導された食事方法を守る

肝機能が低下していると、肝臓からの糖質の供給が低下して体内の糖質が不足し、体が「飢餓状態」に陥ることがあります。早朝の「飢餓状態」を避けるべく、就寝前に夜食をとるなどの食事方法が指導された場合には、きちんと守るようにしましょう。

嗜好品は節度を保って楽しもう

がんに罹患する前は、お酒をたしなんでいた人も多いでしょう。アルコールは厳禁というわけではなく、残された肝臓の働きが正常であれば、ときおり適量を楽しむことは問題ないとされています。ただし、慢性肝炎を患っている人は、再発のリスクがあがるので、アルコールは避けることが推奨されています。

また、コーヒーをよく飲んでいる人において肝がんの発生率が低いという調査報告がいくつか出ています。しかし、発生率が低くなるその理由についてはまだよくわかっておらず、コーヒーを多く飲むようにすると本当に肝がんが予防できるのかについては、さらなる研究が必要であるとしている見解もあります。コーヒーは嗜好品です。「コーヒーがいいと聞いたから無理してでも飲む」のではなく、コーヒーを楽しみたいときに適量を飲むようにしましょう。


参考: