腫瘍マーカーの役割って何だろう?

「腫瘍マーカー」という言葉を耳にしたことはありませんか? 血液検査の項目にあったなと思われた人もいらっしゃるでしょう。あるいは、検査結果の腫瘍マーカーの値が気になって……という人もいるかもしれません。その名前からして、体内におけるがんの存在の有無を即座に判定してくれそうなイメージがありますが、実際のところ、腫瘍マーカーとはどのようなものなのでしょうか。この機会に、腫瘍マーカーについての理解を深め、検査結果を正しくとらえるようにしましょう。

がんに特徴的な物質?

生命を脅かす存在になるがん。治療がすんだという人でも体内からがんがなくなったのか、再び現れていないかというのは大きな心配ごとです。そのようなとき、「パッと調べたら、がんを患っているかどうかすぐにわからないの?」と、思われたことはありませんか? がん細胞だけが作り出す物質を簡単に検出できるようなシステムがあれば便利ですよね。

1948年に、多発性骨髄腫の患者の尿中からベンス・ジョーンズ蛋白と呼ばれる物質が発見されたことから、がん細胞が産生する特徴的な物質についての研究がスタートしました。1960年代には、現在でも多く利用されているCEA(癌胎児性抗原)とAFP(αーフェトプロテイン)が発見され、ラジオイムノアッセイと呼ばれる方法で微量の物質を測定することが可能になると、臨床検査として腫瘍マーカー検査が普及していきました。1975年に「モノクローナル抗体」という技術が確立すると、さらにさまざまな腫瘍マーカーの開発が進みました。

もしも、正常な細胞や組織には存在せず、がんのみに見られる物質があれば、理想的な腫瘍マーカーになると考えられます。しかし、現在利用されている腫瘍マーカーは、正常な状態でも存在し、がんだけにあるというものではありません。したがって、腫瘍マーカーは一般的には「悪性腫瘍が産生し、非腫瘍組織との間に質的あるいは量的に差のある物質」と表現でき、「組織や血液などの体液で、その存在や濃度が腫瘍の診断や経過観察に利用できる物質である」(聖マリアンナ医科大学辻野大二郎先生)と定義できるようです。

腫瘍マーカーには、どんなものがある?

現在では腫瘍マーカーには、がん関連抗原、ホルモン、酵素アイソザイム、ウイルス抗原と抗体など、さまざまなものが知られています。それらの中から、がんの種類と腫瘍マーカーをいくつかご紹介しましょう。

  • 神経芽細胞腫:NSE
  • 甲状腺がん:NSE
  • 食道がん:SCC
  • 肺がん:CA-125、CEA、SLX
  • 乳がん:CEA、CA-125、CA15-3、NCC-ST-439
  • 肝細胞がん:AFP、PIVKA-II
  • 胆道がん:CA19-9、CEA
  • 胃がん:CEA、STN
  • 大腸がん:CEA、NCC-ST-439、STN
  • 子宮体がん:βHCG、SCC
  • 子宮頸部がん:βHCG、STN、SCC
  • 前立腺がん:PSA

腫瘍マーカー検査と検査結果について

現在では、血液中(あるいは体液中)に現れた腫瘍マーカーの濃度を測定する検査が、一般的です。

腫瘍マーカー検査の目的には、以下の3つが挙げられています。

  1. がんの早期発見
  2. がん治療後の経過観察(がんの再発の早期発見)
  3. 進行がんの治療効果の判定

ただし、腫瘍マーカーの多くは早期がんで上昇することはないと言われており、がんの早期発見を目的とした腫瘍マーカー検査の是非は議論の対象となっています。しかし、中には、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAなど、早期発見に利用できる可能性のある腫瘍マーカーもあります。

また、腫瘍マーカー検査で気をつけなければならないことは、がんがあるのに検査結果が陰性と出る場合や、正常なのに検査結果が陽性と出る場合が少なくない点です。つまり、がんの早期発見、再発の早期発見のどちらを目的とした場合でも、腫瘍マーカーの値が高いからといってがんであるとは限らず、値が正常値であってもがんではないと保証されたわけではないことを認識しておく必要があります。がんの診断は、その他の検査結果や問診などもあわせて総合的に勘案され、判断されます。

進行がんに対する治療効果判定のひとつとして、腫瘍マーカー検査はある程度確立されています。治療の効果については腫瘍マーカーの値の増減で推測しますが、検査値はあくまでも参考であると考え、過剰に振り回されないようにしましょう。

腫瘍マーカー検査を受ける際には目的を明確に

腫瘍マーカー検査は、残念ながら、がんの有無が即座に正確にわかるような検査ではありません。検査を受ける際には、担当医や看護師からあらかじめ説明を受けるなどして、検査の目的とともに検査の精度や検査結果の解釈の仕方などについてもよく理解しておくようにしましょう。


参考: