自分らしい治療法を選択するために:がんってどんな組織?

がんは、突然、身に降りかかった出来事のように感じる人が多いでしょう。そして、がんと診断された人の多くが昨日までの生活が一変し、どん底の気分を味わったと表現しています。確かにがん治療は長期戦になることが多く、自分らしい生活を維持できないと絶望的な気持ちになりやすいでしょう。しかし、医療体制が整い、さまざまな治療の選択肢が増えている昨今、自分らしい治療法を担当医と相談しながら選択し、より長く安定した生活を維持することが可能です。そのためにも、向き合うべき「がん」がどのようなものなのか、改めて見ていきましょう。

がんは自分の体の細胞

私たち人間の体はおよそ60兆個の細胞でできています。細胞にも寿命があり、細胞が死ぬと、その減った分は分裂によって補われます。細胞の寿命は種類によって異なりますが、短いものは1日で入れ替わります。ちなみに赤血球の寿命は約120日、脳の神経細胞や心筋細胞などは人間の一生と同じ寿命です。

このように死んだ細胞を補うため、細胞分裂によって新しい細胞が作られるわけですが、細胞の遺伝子をコピーするときに遺伝子に傷がつくなどして変異が生じることがあります。変異が生じた細胞の大半は死滅しますが、中には無限に分裂を繰り返すものが出てきます。これが、がん細胞です。つまり、がん細胞は、外部から侵入してきたものではなく、自分の体の細胞が分裂するときに遺伝子に傷がつき、それによって生じた細胞なのです。

では、がん細胞はどれくらい発生しているのでしょうか。健康な人でも、ある学説によれば、1日に5000個もできると言われています。これだけ多くのがん細胞が発生するにもかかわらず、そう簡単にがんが発症しないのはなぜでしょうか?

がん細胞の出現がすぐに発病に結びつくわけではない

細胞が分裂していく中で、たとえ遺伝子の突然変異が起こり、がん細胞になったとしても、すぐにがんが発症するわけではありません。私たちの体には免疫機能があり、それががん細胞を攻撃し、死滅させ、発症を防いでいるのです。もともと自分の体にあった細胞の変異ですから、免疫細胞にとっても、がん細胞は見つけにくいものです。それでも、ほとんどのがん細胞は発生するとすぐに攻撃され、死滅します。

言い換えると、がんの発症は、がん化した細胞が免疫細胞によって死滅させられることなく増殖を繰り返した結果ということになります。そこには、免疫細胞ががん細胞を認識できなかった理由があります。加齢、喫煙、過度な飲酒、ストレス、栄養バランスの乱れなど、さまざまな要因が重なることによる免疫力の低下だと言われています。

そうした状況が蓄積し、しかも、長年に渡って続いたことにより、がんが発症すると考えられているのです。

がん細胞の特徴

がん細胞は「自己増殖」「浸潤」「転移」の三つの特徴を持っています。

  • 自己増殖:正常な細胞は一定に決まった法則に従って成長しますが、がん細胞は無秩序に増殖し広がっていきます。
  • 浸潤:正常な細胞は隣合う細胞同士がお互いの領域を侵すことはありません。ところが、がん細胞は自分の領域に留まらず、隣合った細胞へと広がり続けます。例えば多くの場合、初期の胃がんが粘膜表面に発症した場合でも、そこだけに留まっているのであれば完全に切除してしまえばよいということになります。しかし、がん細胞は粘膜表面から筋肉層へと深部まで広がり、増殖を続けます。筋肉層には血管やリンパ管があり、そこへの浸潤が起こると、がん細胞が拡散することになります。
  • 転移:血管やリンパ管にがん細胞が浸潤し、他の場所へと移動することを転移といいます。

このように発症した部分にだけ留まるのではなく、自己増殖、浸潤、転移を繰り返してがん細胞が体に広がることがもっとも重大な問題なのです。

自分らしい治療法を考える

がん治療は、がんの進行状態によっても異なりますが、手術、放射線治療、化学療法などをいくつか組み合わせる集学的治療が主流です。また、副作用が少なく効果は高い薬も開発されてきています。病状、体質に応じた個別の治療が選択され、より自分らしい生活を維持しながら治療を続けることも可能になりました。

さらに、がん細胞が増殖してがんを発症するまでには、ある程度の時間が必要だということもわかってきました。つまり、早期の発見に努めれば、それだけ治療の選択肢が増えるのです。

がん細胞の発生から発症までを見るとわかるように、自分自身の体調を維持し、免疫力を高めることはがん治療においても重要です。そのためには、食事の管理、体力維持に努めることも必要です。

治療環境を整えたうえで、自分の望む生き方を十分に考え、社会復帰や今後の可能性を求めながらの治療・療養の方法を、早い段階から担当医と相談するようにしましょう。

参考: