がんの予防:やっぱりお酒の飲みすぎにはご用心

「酒は百薬の長」ということわざがあるように、適度な飲酒は血行促進や食欲増進の効果を期待できます。また、お酒を楽しむことでストレス解消にもなるでしょう。しかし、度が過ぎる飲酒は「酒は命を削る鉋(かんな)」となってしまいます。それでは、体に良い飲酒と体の負担となる飲酒の違いはどこにあるのでしょうか。今回は、飲酒による体内変化について確認し、その体内変化がもたらすがん発症リスクについて見ていきます。

お酒(アルコール)を飲んだとき、体内で何が起きている?

摂取したアルコールは消化器官で消化されることなく、胃で20%程度が、小腸で80%程度がそのままの形で吸収されます。そして吸収されたアルコールは肝臓に運ばれ、アルコール脱水素酵素(ADH)などによって分解されてアセトアルデヒドになります。このアセトアルデヒドは悪酔いや頭痛、動悸の原因ともなる物質です。

さらに、アセトアルデヒドは肝臓内の2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって酢酸に分解されます。

そして、血液によって全身に運ばれた酢酸は水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気の一部として体外へ排出されるのです。

お酒(アルコール)に弱い人と強い人の違いは?

同じような体格や年齢でも、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなったり、動悸が速くなったり、頭痛を訴えたりする人もいれば、ある程度は平気な人もいるのはなぜでしょう。

お酒に強いかどうかは、2型アルデヒド脱水素酵素を作り出せる量によります。これは遺伝的に決まっており、お酒を飲み慣れれば強くなるという性質のものではありません。2型アルデヒド脱水素酵素をたくさん作れる人は、すぐにアルコールを分解して体外へ排出できるので酔った状態になりにくいのです。反対に2型アルデヒド脱水素酵素を作り出せる量が少ない人はアセトアルデヒドが体内に長く留まるため、酔いの症状が強く現れます。

飲酒とがんの関連性は?

2007年にWHO(世界保健機関)が発表したアルコール摂取とがんの関連評価では、飲酒は口腔、咽頭、食道、肝臓、大腸および乳房に発症するがんの原因になり得るとされ、アルコールそのものに発がん性があるとしています。さらにアルコールに弱いとされる2型アルデヒド脱水素酵素をあまり作れない人は、アセトアルデヒドが長く体内に留まるために食道がんを発症する可能性が高まるとも指摘しています。

欧米で発表された疫学研究ではアルコールの摂取と乳がんの発症に因果関係があると主張され、例えばアルコール度5%のビールを250ml摂取するごとにリスクが7%程度増加するとされています。

また、50gのエタノールを摂取すると、大腸がんの発症リスクが摂取しない場合の1.4倍にもなるといわれています。一般的に飲み過ぎは肝臓に悪いといわれるように、肝臓がんの発症リスクも飲酒によって増加します。

日本の疫学研究におけるデータでも、46gから69g以上の飲酒をすることでさまざまながんの発症、死亡のリスクが高くなるとわかってきました。

飲酒と喫煙の相乗効果でがんのリスクはさらに高まる

喫煙ががんの発症に関わることは多くの人が認知するところです。予防研究グループの発表によると、喫煙者の大腸がん発症リスクは非喫煙者の1.4倍にもなるという結果が出ています。たとえ禁煙したとしても、そのリスクは1.3倍。いかに喫煙ががん発症のリスク要因となるのかを示しています。

ところが、お酒を飲みながらたばこを吸う人は意外と多いのが実情です。例えば1日平均360g(2合)程度のお酒を飲む人が喫煙をする場合、お酒もたばこも嗜まない人に比べ大腸がんの発症率が3倍になったというデータがあります。飲酒と喫煙によって発がんリスクを積み重ねているといえるでしょう。

健康的にお酒を楽しめる量とは?

では、なぜ過度の飲酒ががん発症のリスクとなるのでしょうか。

飲酒後のアルコールが分解されてアセトアルデヒドになり、それがさらに分解される際に活性酸素が発生します。この活性酸素は細胞内の核酸を作るのに必要な葉酸を壊してしまうため、核酸の合成や修復が順調に行われずにがんを発症する可能性が高くなるのです。

飲酒量とがんの発症に関する厚生労働省の指標によると、節度ある飲酒量は純アルコールにすると1日平均20g程度です。

この量は「ほろ酔い」程度とされ、気分が高揚して理性的な判断はやや遅くなるものの、自分の行動や言動に抑制がとれる範囲です。

体調などによっても適量は変化しますが、自分で楽しく飲酒できる範囲を超えないことが健康的な飲酒法といえそうです。

参考: